Pink Floyd Meddle(おせっかい)

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収録曲
①吹けよ風、呼べよ嵐 - One Of These Days
②ピロウ・オブ・ウインズ - A Pillow Of Winds
③フィアレス - Fearless
④サン・トロペ - SAN Tropez
⑤シーマスのブルース - Seamus
⑥エコーズ - Echoes

☆勝手に点数コーナー

モダンさ☆☆★★★

幻想性☆☆☆☆☆

ポップさ☆☆☆★★

サイケ度☆☆☆☆★

催眠度☆☆☆☆☆

構築美☆☆☆☆☆

☆ジャンル プログレッシブロック、スペースロック、サイケフォーク、サイケデリックロック、アンビエント(要素的にはジャズロック、シンフォニックロック、ハードロック、トリップホップ、ファンクなんかも感じる) ←個人的にジャンル分けのむなしさを感じてます、なう。

オススメ度90点(エレクトロ好き、サイケフォーク好き、夢想家、トリップしたい人、交響曲が好きな人にオススメ)

記念すべきレビュー一回目。中期Pink Floydの名盤。シドバレット時のガレージロック的なサイケロック期のあとの現代音楽的な手法を用いてある意味錯綜しつつも独自の幻想音楽の方法論を模索してた時期の方向性が確立されたアルバムだと個人的に思っています。前後のアルバム「原子心母」や「狂気」が派手なのでちょっと陰が薄いイメージもありますが、「吹けよ風、呼べよ嵐」のパンチ力、「エコーズ」の完成度の高さは本当に素晴らしいのです。

音楽的な特徴として、音響系プログレとサイケフォークの要素が強い曲が混ざってるのが面白いです。

①吹けよ風、呼べよ嵐 - One Of These Days

自分は詳しくはないのですが、一部のプロレスラーがこの曲を入場テーマに使ったらしいですね。エレクトロ的なエフェクトがかかったベースのイントロから、この曲の主題である硬質なリズムのパートに続く。プレシジョンベース?のピック弾きによる堅い音のベースラインがかっこいい!基本的にはBm、Aの繰り返しのエオリアモード的な2コードの世界、ハードなリズムだけどトランス感がある、ツェッペリン的なロックのかっこよさとタンジェリンドリーム的な音響的実験性が両立してて面白い。ラストトラックの「エコーズ」のコードがかなり複雑であることとの対比が面白い。プログレってなんだかコードが複雑って印象があるけど、この曲なんてほぼ2コードだし、なかなか奥が深い。

②ピロウ・オブ・ウインズ - A Pillow Of Winds

非常に憂鬱で英国的なサイケフォーク。けっこう変わったコード進行。マイナーブルースから黒人要素を抜いたような、中心軸が曖昧なコード進行(EmとBmを交互に)。そのあと同主調に転調するのだが、これがまるで移り変わりの激しいイギリスの天気のようで…綺麗です(ちゅらいさん、これ書くまで地味な曲ってイメージが強かったです)。

③フィアレス - Fearless

明るいのか暗いのかよくわからないサイケフォーク。なぜかリバプールのサポーターの応援がサンプリングされている(メンバーにファンがいるのかな?)。基本的にGのブルースのコード進行、ただメインリフにM7(F♯)の音が使われてるように、黒人的要素はあんまり感じない。

④サン・トロペ - SAN Tropez

ムーディーでジャズ要素の強い小品。なんだか地獄の中のオアシスって感じがして好きです(^_^;)G→Em(♭5)の進行がメランコリックだけどお洒落。気取ってない、軽快なピアノソロも素敵。ジャズの要素の入れ方のバランスの良さが素敵です。

⑤シーマスのブルース - Seamus

なんかワンワンが吠えてるブルースの小品。歌詞も極めて日常的なんですが、このアルバムの流れで聴くと、なんかシュールでちょっと危ない音楽に聞こえてくるのは何故なんだろう笑

⑥エコーズ - Echoes

単体の曲としては原子心母、炎に並ぶPink Floydの中でもとても複雑で高度に構築された曲。Bの音(このブログではイギリス音名使います)から、C♯エオリアの悲しい雰囲気のイントロ、2分35秒あたりのC♯m→C♯→B♭m→A7→A♭→C♯mの流れはとても美しくてかつ英国オルタナのバイブルとなったってイメージ(Radioheadとか)序章の中で小さなソナタ形式があるような、そんな美を感じる(音楽的にはだいぶ異なるが、ベートーヴェン第9の第四楽章の冒頭とか)。

最初のボーカルパートのメロディー、コードは意外と歌謡曲的。3分30秒あたりの半音階を多用したギターリフの切なさ。ドタバタしたニック・メイスンのドラムがいい味、とても歌心を感じる。ファズフェイスのギターの音色が気持ちいい。

そのあとに突如ハンマービート的リズムでC♯ドリアンの即興演奏が数分間続き幻想の世界への扉が開く。CAN的とも言えるかも。次のパートはギター、ハモンドオルガン等の創意工夫に満ちた、アンビエントパートとなる。メロディーもコードもないに等しいのだが、なんとなく切なくて寂しい気持ちになる音響が非常に魅力的。23分ほどの曲だが、ある意味でもっと長い時間のスパンの芸術にも聞こえる。16分30秒からのパートのあたりは、まるで宇宙規模の時間の経過を感じさせる、凄まじいダイナミズム。18分20秒あたりのディレイのかかったギターのパートなんかはまるで「幼年期の終わり」の最後のような凄まじさを感じる。

そのあとの再現部、基本的に最初と同じのだが、なんか喪失感がより強調されたような、わびさびを感じる。決して全体を通して演奏技術的な見せ場ってのはそんなに感じないのだが、この23分の曲の構築美は本当に素晴らしい。真にシンフォニック(交響曲的な)ロックって、これのことなんじゃないのかな、とか思ってしまう(構造的にソナタ形式に近いものを感じる)。

コード進行、音色などで「エコーズ」の要素をモノにしたバンドはたくさんいると思うが、この構築美をモノに出来たバンド、ちゅらいさんは知らないかも、です。このレビューで多くのバンドやジャンルを例に出しましたが、時代背景的にこのアルバムがほぼ元ネタのほうだってこと言っときます。音の質感的にまだガレージロックな部分が残ってた点が「狂気」ほどのメガヒットにならなかった要因なのかなとか思うけど、「狂気」「炎」にドハマりした人は是非ともこのアルバムも聴いて欲しいです(^o^)



参考 https://ja.wikipedia.org/wiki/おせっかい_(アルバム) ←トラック名などコピペするために


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