「あまやどり!」そう、彼は言った。
今日もぱっとしない東京の片隅にいる青鳥(あおどり)なのです。
買い出しにいかなければ! と使命感に燃えたので行くのです。
ご近所をぶーらりしていくのです。
途中から細かい、けれども少し濡れるか止むかの瀬戸際の雨が降り始めたのです。
エコバックを二つ肩にかけて、歩くのです。
途中、赤信号を突っ切って道路を住宅街に入っていくパトカー2台に遭遇したのです。
妙な緊迫感を覚えるのです。
向かった住宅街に何があったのか、気になるのです。
大事になるようなことがないといいのですが。
そんなプチハプニングもやり過ごし、止みかけの雨の中、傘をさしていくのです。
傘をさす人、閉じている人、はじめから持っていない人、様々なのです。
正面から、駆けてくる人がいるのです。
こちらに向かっているのです。
目は・・合っているような、いないような・・。
ぶつかるかの勢いで、鳥類の傘の中に入ってきたその人。
「あまやどり!」
そう、元気よく言ったのです。背の随分低い、小学生の男の子。
小学2年生くらい、でしょうか。
ランドセルに片手にはサメのパペットが。
「どこいくの」と、鳥類。
「おうち」と、少年。
「これ、かわいいね」と、鮫を指差す鳥類。
「へへっ」と、はにかむ少年。
「傘は?」
「ない」
どうしようか、瞬間考える鳥類。
肩にはエコバック二つ、正直重い。でも、この少年は傘がない。おうちまで送るのは無理としても、少しは入れて来た道を戻るべきなのか・・。
ふと、傘の向こうを見るのです。
雨、止みつつあったのです。
「そうか、それじゃあ、おうち帰ろうね」
少年は、鳥類の顔を見るために上げていた顔をぱっと逸らして、とん、と傘を出ていったのです。
それは、軽やかに。
鳥類は見送りはしないのです。
きっと、あの少年は駆けていったのです。
この細かい雨の中、傘を持たない少年は、サメのパペットを片手にランドセルを背負って走っていったのでしょう。
少年が出ていって、直ぐに鳥類は自分の進む道へ歩みを進めたのです。
そして、気がついたのです。
雨、止んでいる。
こんな警戒心がない男の子が、いるとはねえ・・そうか、こんなナンパもありなのかー。いや、漫画の世界でもこんな出会い、ないだろー。
なんて妙に笑いが込み上げてきた青鳥、なのです。
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