対岸からの眺め、宵の明星

ちょっぴりヒンヤリな空気感の中、青鳥(あおどり)はふよふよスタートするのです。歩いていると汗ばむようなスピードでずんずん行くのです。いつものルートで用事を済ませ、さて、どうしようか? なのです。

ふと、思い立ったのです。いつも見ているあの対岸へ行ってみようか、なんて。

ここから知らない道を歩くのです。「積極的迷子属性」オン、なのです。どこまでスマホに頼らずいけるのか、自分との勝負、なのです。

大きな川に架かる大きな橋をひたすら歩くのです。漸く対岸に着いたときの達成感、は無いのです。ごく普通の橋なのです、当然なのです。

なんとなーく歩いていると、カンが働くのです。「こっちに行くと、何かありそう」なのです。

今回もそれに従って角を曲がって行ってみると、駅と商業施設がありました。中に入ってぐるっと見て回ります。

そこで分かったのは「自分はここには住まないな」というものでした。キレイな駅舎だし商業施設なのです。でも、肌感覚、というのでしょうか、合わないな、という感覚が強くあったのです。それは橋を渡っている時からありました。その土地に降り立って、の感じるものがあるのです。占い師ですが青鳥は霊感ゼロなので、それではなくもっと違うのもなのです。初対面の方に対して「合うか合わないか」を瞬時に判断する、あの感覚です。こうしてタマに来るのはいいけれど、頻繁には来ないだろうなあ、と確信したのです。

さて、次はどうしようか、と考えたとき浮かんだのは「青鳥の住む岸辺から見える工場を見たい」というもの。

雨のお散歩の時に対岸に見えていた工場です。以前記事に書いたことのある工場、なのです。岸辺から見る度に気になっていたのです。なんとなくの見当で歩くのです。取り敢えずいつもの岸辺に出ればすぐに分かるのです。岸辺に出られて、すぐにその工場はありました。

近くで見ると思いの外大きくて驚き、なのです。コンクリートのくすんだ肌合の建物の壁が良い感じ、なのです。

結構古びていて、何年前に出来たのか気になるのです。ワクワクしながらその一帯をゆっくりと歩くのです。いつも向かいの対岸から見ていた気になる工場を間近で見られて、感激なのです。

なんとなく振り向いて、川岸の向こう側を見てみるのです。そこにあるのは青鳥がいつも歩いている岸辺の道、なのです、工場の前から生息地域の街を見たのです。スカイツリーがよく見えます。今日は地平線に雲が無くて、遠くの山が見えます。なんとなくキレイな稜線を描いているように見える・・お椀を伏せたよな均衡のとれたシルエット。本当に山、なのかな? でも、キレイだからいいのです。

不思議です、自分が生きている街が別の何かに見えます。いつもの場所からほんの少し、川岸の対面にいるだけなのに遠くに感じるのです。ちょっとは生息している街に馴染んだかな? という感じなのです。

暗くなって来たのでおうちへ帰るのです。帰りは違うルートで、なのです。今いるのは知らない街、これから向かうのは知っている街。違う橋を越えて帰るのです。途中おじさまに「この道、橋を渡れるのかい」なんて聞かれつつ、なのです。工事をしている所もあるのですが、その場所は青鳥は何度も通過済みなので自信を持って交通可能であることをお伝えしたのです。地元の人であろう方から状況を聞かれるとは、やはり「こちら側」にいる青鳥は「地元の人」に見えたのかな? 馴染んだなあ、なのでしょうか。

すっかり夜、なのです。

さっきまでうっすら青かった空が藍色になっていたのです。お星さまの明かりも強くなっているのです。

大きく輝く宵の明星を目印に、青鳥はおうちへ帰るのです。今日は行ったことはないけれどよく見ていた場所へいったので、スマホは使わずにすみました。

今日はおそらのお星さまを頼りに、歩くのです。


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