ボクのある日の出来事④

ボクのある日の出来事。
久々に私用で東京に。
今宵は後輩の結婚式の二次会。
とはいえ、面識があるのは新郎である後輩と取引先の方の二名。
早く会場に行っても仕方ないし、折角私用で来ているのだから少し寄り道して行くことに。
流石東京である。お洒落なお店が並んでいる。若いカップルがその一つに入っていく。
靴屋である。
何故か僕もついて入る。
買うつもりは勿論ない。
でも、かっこいい革靴に目がいく。
「おいくら万円なんだろう?」
その金額を見て、何故か「なるほど、なるほど」と声が出てしまった。
その声が聞こえたのか、綺麗なおねぇさんが近づいてくる。
「来てほしい、でも、来ないで」。
そんな僕の想いと関係なく、おねぇさんが横にやったきた。
「それかっこいいですよねぇ。きっとお兄さんによく似合うと思いますよ。宜しければ試着されませんか?」

「お兄さん?」「よく似合う?」
「わかってるじゃないか、このねぇさん」

でも、もっとわかっている。
セールストークであるということを。

無駄に半世紀近く生きている僕にも経験はある。
綺麗なおねぇさんの魔法に何度も夢見心地になり痛い目を見てきた。
イタリア製生地のオーダーメイドスーツ。
中年のおっさんが使うはずもないコラーゲン配合のクリーム。それも10本。

この土俵に上がってはいけない。
かといって、「いらない」とはいえない。
典型的なNoと言えない日本人の僕には・・・

「お店何時まで?後でまた来るよ!」
結婚式の二次会後に店が開いているわけもなく、お互い笑顔でサヨナラをした。
綺麗なおねぇさんの視線にうしろ髪引かれながら、僕の頭の中であの曲が流れた。


NAI-NAI-NAI 恋じゃNAI
NAI-NAI-NAI 愛じゃNAI
NAI-NAI-NAI でも止まらNAI
NAI-NAI-NAI たまらNAI
NAI-NAI-NAI 帰さNAI
NAI-NAI-NAI そこが危NAI

by シブがき隊「NAI-NAI 16」

引かれるほど髪もNAI🎵

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?