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「貧乏親から生まれた家計簿の天才」短編小説①

中小企業の息子の三男で、子供の頃から勉強出来ない、歌は音痴で先生に怒られてばかりの某小売業の平社員の父親。道端に落ちてるものを拾ってくる。捨てられていた自転車を持って帰って使っていたら警察に捕まったこともある。

金持ちと結婚したと思ってたのに!と愚痴を子供にこぼすヒステリックで貧乏性の母親。口癖はお金がないだ。

常に自分が親の愛情を一心に受けていたい、引きこもりの姉。いい歳をして貯金を使い果たしブラジャーすら着たことがない。
そんな、貧乏家族の元に生まれた妹は、唯一この家族に疑問を抱いていた。風呂は毎日入らないし追い焚きした汚いお湯を再利用。毎日信じられないこと、理不尽なことに悩ませていた。

ケチな親の元で育った妹は、お金のことについては厳しく育てられた。遊びに行ったら必ずレシートを残しておいて、紙に収支を付けて無駄遣いはしてはいけない。するとグチグチ嫌味を言われる。だから、しない。お小遣いは高校生で二千円。それを使わずに貯金していた。小さなメモ帳に十万円ノートを付けていた。毎日、増えた額や減った額を細かくつけていた。お財布は、小学生が使いそうな折りたたみ財布。大事に使っていたが中には千円しか入っていなかった。しかし、妹には貴重なお金で学校で盗難事件があったときすぐに鞄を開いて真っ先に財布の中身を確認するほどだった。大人になるとたかが千円がまるで一万円持っているような気分だった。大人になると、一万円でさえも少ない気がするのには悲しさを感じる。

話は戻して高校生活だが、、、。月に二千円で何が出来ようか?何もできない。更にそれを貯金してしまえばなんにも使えない。これでは高校生活楽しめない。それもそのとおり。学校が終わればすぐに帰宅していた。特に部活もしていない。授業の復習、予習をちょこっとしていたものだ。その後は何十回と読んだ漫画を布団の上でゴロゴロ読みふける。それが唯一の楽しみだった。
貧乏家族なため、漫画をねだるという感覚が分からなかった。自分の読みたい漫画さえ分からなかった。姉が母親にねだっていた漫画を隠れて借りていたほどだ。特にねだらないと買ってももらえないので漫画は殆どなかった。楽しみは寝ることだったかもしれない。
毎日のようにお金がないと言われ続けて来た結果、お金を貯金して将来安定な暮らしがしたいと思うようになった妹は、物心ついた頃から貰ったお金を使わずに貯金していた。誕生日のお祝いやお年玉。成人祝いのお金など、一度も使ったことはない。全部貯金していた。欲しい物がよく分からなかったのもあるが、それ以上にお金が増えていくことが楽しみになっていた。夏休み短期バイトで稼いだお金の大半は貯金していた。残りはプチプラなお店でお買い物。ささやかな楽しみだった。そんな高校生活を終え、大学でも勉強と、長期休みの時にだけバイトをしていた。元々体が弱いのとそれに拍車をかけて体力がないせいで勉強とバイトの両立はさすがにできなかった。貧乏人は痩せている人が多いとは言うがまさにそうだった。

そして、2年間新卒で働いて、お金をひたすら貯金して引っ越し代や新しい家電や家具代を稼ぐため実家暮らしを我慢した。2年で職を辞めたのは上司が毎日のように怒鳴り散らしてきて3か月ごとに「もう辞める」と大泣きしては慰めてもらってを繰り返し続けた結果のことだ。

引っ越し先は不動産屋に決めてもらうと自分の見積もりよりやや高めの家賃の物件を勧めてくるので自分でネットを活用して決める。
南向き、2階以上の部屋、ベランダあり、室内洗濯機置き場あり、エアコンあり、トイレとバス別、ロフトあり、24平米以上の広さ。これで安い物件で立地を探していくとどんどん部屋が絞られてくる。そうそう、クローゼットも広めがいいに越したことはない。

希望通りの部屋を見つけたら、そのサイトの一つの不動産屋に行って内件できる物件は全部同じ不動産屋で見させてもらえばいい。その不動産屋で扱ってないのは別の不動産屋に行くか止めるかは内件次第である。

部屋が決まったら、その物件のオーナーさんと交渉をするのも忘れずに。1か月フリーレントできるかどうか聞くのも必ず試した方がいい。結構な確率で承諾してくれるからだ。

そして、条件の良い物件を契約したら、引っ越し。業者は値段が高いけど有名なところが丁寧で親切で家具などのものを壊して黙ってるなんてことはない。それに単発の派遣バイトが不慣れな引っ越し業務をするような業者でもないのは確かだ。

妹は自らのバイト経験とネット情報とできうる限りのことをして一人暮らしの第一歩を歩みだしたのである。新しい職場は都内に決めた。実家が千葉県なので引っ越す理由が欲しかったのだ。でも、東京は家賃も高いから東京よりの千葉県内にした。終電が一時までは大丈夫なので残業も万が一あっても大丈夫にしてある。

体力はないが座りっぱなしの事務が大の苦手なので接客業を雑貨と家具のあるとある店舗で正社員で働くことになった。ここに決めたのは売り場づくりがしたかったからだ。広い店内はお洒落で、ディスプレイも凝っている。まさに憧れだった。私服でいいのだけれど、ジャケットを羽織るような清潔感のある服装を求められたので、安いものを見繕って数着分購入しといた。

20万の給料から3万ほど社会保険などで引かれて手取りは17万。部屋は安いところに決めたので、自炊をすれば月13万で過ごせる。どうせ、仕事していてお金を使うこともほとんどないし、、、。そうすると、4万は貯金ができる。月に4万で、12か月で48万になる。まあ、そこそこ貯金できそうだ。食費は2万5千円でやりくり。お昼ご飯はお弁当を作るか、手作りおにぎりを3つ。水分は、水道水とパック麦茶で作り置き。それから、1番安い水1ケース6本入りを買う。一人暮らし初めは家計簿を付けて、自分がどう無駄遣いをしているかの把握。服はプチプラで流行ものを買って、シンプルなもので長く使いたいものにお金をかける。電気代節約には、使う頻度を減らすよりも電気のブレーカーに書かれているアンペア数を確認して、大体30アンペアのところが多いがそこを変えられるならば20アンペアや15アンペアに引っ越しの時に変更して基本料金を安く済ませる。寒いのに暖房を付けないで過ごすよりかなり電力を抑えられるし、使い過ぎれば途端にブレーカーが落ちるのでエアコンやドライヤーなどの電力のかかるものを同時に使わなくすることで上手く節約。まあ、単身の場合だが。

お金を使わないなりに貧乏性ではなくそれなりに遊ぶ方法は、ネット社会やポイントをうまく活用すれば存外楽しく過ごせる。お金も現物も手に入らないのに、いいねだけ欲しさにSNSをずっと見てるよりお金やポイント、現物が貰える方法などを活用した方がどれだけいいことか。必死に他者のSNSを閲覧していいね返しして終わる無駄を止めた方が自分のために生きられる。私は、ブロガーで企業のイベントに行ったりブログで商品紹介をして数銭から数万するような商品を手に入れてお金を切り詰めている割には遊べていた。

それが節約というよりも、貯金しながら贅沢する私なりの生き方だった。

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