しりしり
台所へ行ったら、テーブルの上にあの残っていたという葡萄が乗っかっていた。まだあったのか。
そして、なんとなく私の席の近くに置いてある。まだ諦めていないのだろうか。
もちろん私も全然それについては触れていない。早く食べるなら食べてしまってほしい。私は食べないのだから。
そんな台所で家庭菜園および料理統括長殿が人参シリシリを作っていた。私が好きなので作ってくれると前日に言っていたもの。嬉しい。
嬉しいなと思っていたら、すでに出来上がっているピーマンとじゃこの炒め物をさして「ピーマンには薄い味しかつけていないから、足りなかったら何か足して。人参シリシリも味が足りなかったら言って。太さとか。どのぐらいがいいかわからないからちょっと硬めに作ってあるけど、そういうのも。」と言う。
え、そうなの?
人参シリシリを作ってくれるようになって五ヶ月ほどたっている。
その間に結構な頻度で作ってくれているのだが、そんな風に言われたのは初めて。
うーん。でもなあ。せっかく作ってくれてるので、そのまま良しとして食べたい気持ちがあるのだ。実は好みの人参シリシリはもうちょっと細くて柔らかいものなのだ。が、別にそうじゃなくてはいけないわけではない。
それに。と思う。人参シリシリについては、あまりあれこれ言いたくない。
もちろん主な理由は大抵の料理は作ってくれたまま食べたいという所にあるのだが。
去年。姉が我が家に来た時、人参シリシリを作って持ってきてくれた。それを心の中で気に入っていて、「好きだな」と思っていたのだが、そのままにしていた。
その後、またしばらくして姉が来た時人参シリシリを持ってきてくれて、やっぱり「好きだな」と心の中だけで思っていたのを、今年になって、また食べたいなあと思い、我が家の統括長殿に、そっと「人参シリシリを食べたいのだけれど」と言ってみたのだ。
我が家では人参シリシリが食卓に登った記憶はない。なので、リクエストしてみたのだ。
しばらくして統括長殿が人参シリシリを作ってくれたのだが、その人参シリシリは姉のとは結構違うバージョンで、姉のにははいっていないマヨネーズがかなりの量入っていた。人参のかるい炒め物マヨネーズ和えみたいな感じ。
少々驚いたものの、せっかく作ってくれたし、これはこれでこういう料理なのだと思い、しばらくそれで食べていた。
別に嫌でもないので、これでいいかと思っていたのだけれど、少し、違うバージョンの人参シリシリも食べたいなあと思い、控えめに「マヨネーズを使わないバージョンを作ることができるだろうか」と打診してみた。すると「それって何味なの。どうやって作るの。」と言う。
そうきたか。マヨネーズを使わないシリシリは何味なのか。うーん。姉のあれは何味なのだろうか。調査不足である。作り方を聞いてから言えばよかった。
「よく知らない・・・」ともぞもぞ言う事になってしまい、しばらくの間もぞついていたのだが、ついに「姉が作ったみたいなの」みたいな感じのことを白状した。
その場では「ふーん」みたいな感じになったのだが、その後。LINEで私も含めたグループで姉に対して統括長殿が「人参シリシリはどうやって作っているの。××(私のことだ)は、あなたのが好きなんだって」と発言するという事があった。
とうような経緯でめでたく別バージョンを作ってくれるようになって3ヶ月経過。現在に至っている。
なので、せっかく別バージョンを作ってくれているのでこれ以上変更要請は不要かなと思うところがある。つまり慎重な姿勢を崩したくない。
それにしても別バージョンを作ってくれるようになったのが三ヶ月前(つまり、勇気の一言が三ヶ月前)。何故に今頃質感とか大きさとかそういう話に?