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来迎シミュレーション法然と極楽浄土展

上野で開催中の「法然と極楽浄土」展へ行きました。
冒頭にはいくつかの法然の坐像や立像、そして人物像。意外と色々なお顔でそれぞれ印象が違う。どんな人だったのかなあと思う。「南無阿弥陀仏」と唱えること、阿弥陀仏を頼みに浄土へ行けること。と、そんな教えだったというざっとしたことしか知らないので、本人像を前に、「知らないから来ましたよ」と報告。とても有名な人だけれど、私はほとんど知らないから。

前半早い段階でいくつかのバージョンの絵伝の展示がある。絵伝は言葉の通り、法然がどんな人生を送ったのか、何があったのかといった伝記を絵にして表した絵巻。色々と種類があるものの、最後は聖人に相応しく仏の来迎があり、そのあとは静かな自然が描かれていておしまい。というのもだ。この絵伝の来迎をいくつも見つつ、法然涅槃図、途中念仏などを経文を見つつ、ところどころ曼荼羅を見る。このコーナーでは法然の活動や法然自身のことについて考えるコーナー。次のコーナーは南無阿弥陀仏と頼みにした阿弥陀仏の世界。
ここでもたくさんの来迎図を見る。横から来迎している様を見るものを見たあとに、阿弥陀仏像を見るということが繰り返される。たくさんの来迎図。こんなふうに最後を迎える幸せを願う感じが伝わってくる。ここで、来迎阿弥陀如来を含む三尊像と無数の仏を収めた厨子を見た。美しいだけでなく、不思議な魅力にあふれた厨子で離れがたい。魅力ある厨子に、こういうものがあれば、拝みたくなるものと思う。なんというか、自然と「素敵だ、好きだ」と思うだろうと思う。どんな時、どんな人々が拝んでいたのかわからないけれど。
當麻寺からも展示がいくつか。当麻曼荼羅で有名なところで、この縁起絵巻に惹かれて奈良に行ったことがある。縁起については有名なので、詳しくは書かないけれど、登場から不思議な中将姫が最後は来迎を迎えて終わる話だ。女人救済のお話でもあるのだけれど、そちらより、中将姫の不思議さ、そして彼女の願いを叶える仏たちの不思議な登場の仕方、起こる奇跡も優美で美しいところが魅力のお話だ。その縁起絵巻も展示に来ていた。とても嬉しい。展示では最後の来迎も私が行ったときは展示中だった。
そのほか、織りで表現された大きな曼荼羅も展示。この曼荼羅はとても大きくて壮大な浄土の様子が表現されている。美しい水が流れていて、花と瑠璃で飾られた浄土。真ん中には三尊、 一番上を見上げると飛天が飛び交う美しい世界。隅々まで美しく表現された浄土。来迎を迎えてそんなところへ行きたい、という憧れの地でもあるのだなと思う。他にも曼荼羅図あり。
そこを通り過ぎて、コーナーの最後のほうにまた、正面を向いた阿弥陀仏像の展示があり、来迎印を結んだ姿で静かにこちらを向いて描かれている。
こんな風に来迎をいっぱい見せられたあとで来迎印を結んだ正面からの阿弥陀仏を見せられると、こんな風に来迎シミュレーションをずーっとして、きちんとした今生の終わりを迎えられるように、と願っていたのかなあと思う。像を拝む、曼荼羅や絵を飾るというのはそういう行為だったのかなあと思う。具体的な形を絵や像で示すと対象に向かって拝みやすい。色々深い意味はあるのだろうけれど、単純にそんなふうな拝み方もあるのだろうと思う。

江戸時代の浄土宗の資料も展示があり、最後に立体 仏涅槃群像の展示がありました仏の入滅を囲む図ですが、それが彫刻によって表されていて、私が行った時は周りの動物たちがたくさん展示されていました。タイトルの写真はその中の猫。へびや猿やうさぎ、鳥などとてもリアルで面白い彫刻です。ここは個人利用ならば写真を撮ってもいい展示で、みんないっぱい写真をとっていました。私ももちろん。

法然に関して理解が深まったとは言えないけれど、人々が来世を頼み、拝んだという気持ちは迫ってくるように感じられた展覧会でした。中でも素敵な厨子を見られたのは嬉しい限りでした。本当に素敵なので見てほしい。大好きな絵巻展示も結構場所を割かれていたので楽しかったです。曼荼羅も綺麗ですよ。

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