捨て台詞が降りてきたのはその日の夜中でした。

食後の後片付けをしていてお皿を洗う手が止まった。
あれ?ぷくぷくになってる!

これは4年前の夏に台湾を旅行したときに買った思い出のお皿だった。
バンブーファイバーという人体に優しい天然素材で作られたもので、八角形の形がテーブルの上でも落ち着きが良い感じがして、4色の色違いを気に入った買ったのだった。台北の誠品書店の中の雑貨屋だったと思う。
そのうちの1枚が、お皿の立ち上がった部分にぷくぷくと水泡のようなものをこしらえている。

……電子レンジかぁ!


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今日の私は夏バテ気味で食欲がなくて、お昼ご飯を作るのをさぼり、夫と子供には冷蔵庫の中の好きなものを自分たちで作って食べてもらったのだった。
息子は冷たいのが良いというので素麺。夫が茹でるのを手伝っている。
夫は自分の為に冷凍庫をガサガサやってパスタを取り出した。ワクチン副反応で動けなくなった時のために買っておいた臨時食。こういう時にありがたいなぁ。
私はソファに横たわりながら彼らの会話を何となく聞きながらうつらうつらしていた。その後に続いた「チーン!」でお皿がこの有様になっている事にも知らずに。

***

使っている食器の中には、食洗器も電子レンジもNGなのがあるのだけれど、夫はそれをよく忘れがち。
旅先の古道具屋で3枚500円で買った、縁に金箔があるお皿も電子レンジへGO。(→火花が散る)
薄い吹きガラスで作られたぐい飲みも食洗器へGO。(→割れる)
漆塗りのお椀も電子レンジに食洗器に、ためらわずGOGOである。
(→・・・・)

いや、合ってることもあるんですよ。ちゃんとできてる時もあるんです。
平日は夫は大抵帰宅が遅いので、私が片付けたあと食洗器のボタンは押さずにおいて置き、夫は後で自分の食器だけを入れてボタンを押すのが暗黙の了解になっている。
翌朝、朝ご飯のために台所に行くと、デリケートな食器はちゃんと洗って伏せてあり、その他は食洗器の中で綺麗になっている。
ちゃんと気を付けてくれていて、食器も綺麗になっていてすごくありがたい。連係プレーがばっちりはまって朝を迎えられて気持ちもすがすがしい。

でもそれが何回か続いて当たり前だと思って油断していると、こういう顛末は突然やってくる。今日みたいに。

さて、ここでそれをどれぐらいの頻度でたしなめるかは難しい判断を迫られる。その都度注意をしてしまうと、おへそがものすごーく曲がってその後がめんどくさい。
10回あったら7回は目をつぶっていると思う。(つもりだけど、どうだろう)
夫が家事を手伝うのを口出しせずに見守るには時に忍耐がいる。
人にはいろんな得意分野があるのだ。夫は食器の電子レンジと食洗器の使用の可否の判断が苦手で、私がたまたま得意なだけなんだから。
この忍耐を乗り越えないと、我が家に助け合いの家事精神はやって来ない。

だがしかし、今日はぷっくりと夫の判断ミスの結果が表れているではないか。
ここは落ち着いて(気持ちを)抑え気味でこのぷっくりを見せ、「この皿はチンするとこうなるんだよ。」と示して視覚的に覚えてもらおう。
これを見せられたらいくら夫でも身に染みるはずだ。
私はあとに残されたピンクとグリーンとイエローの3色を守らねば。カレーやパスタやで大活躍のお皿なんだよこれは。
夫に同じ過ちを繰り返させてはならない。

***

私は息子とゲームをしている夫の元へしずしずと向かって、おもむろに水が滴るお皿を突き出した。
「ねぇねぇ、このお皿チンするとこうなるんだよ。前も言ったけど。」
「あれ!そうだったっけ。ありゃりゃ。もう捨てれば?

もう捨てれば?という夫の破壊力ある言葉に面食らってすぐ言葉がでてこない~。
「す.捨てないよっ。まだ使えるわ!」
それだけをやっと言い返してスゴスゴと流しにもどってくる私。洗い物を再開しながら、なんか段々と腹が立ってくる。ごめんとかなんとか ないのん!
でもここで怒りを見せたら私が負けな気もする。なぜだろう。
夫と息子はなにも無かったかのようにまたゲームに興じている。
もっと私にナイスなセリフが浮かんでいれば、ぎゃふんと言わせたのに!
…もはや問題の観点はすり替わっている。

***

そんな憤まんやるかたない気持ちは寝際にまで持ちこされてモンモンとしていたけれど、突如”捨て台詞”降りてきました。

「確かに、このお皿はどっちも(電子レンジ&食洗器)行けそうだもんね。
判断難しいけど、でももう何回も結構な確率で負けてるからね。
もう1割打者だからねっ!

※元野球部の夫に突き刺さる一言だと思った素人の発想

ふん!
随分前から寝息を立てている夫の足元にむかって言ってやった。
1割打者、いい気味だ。(何がだ)
でもちょっと、すっきりした。

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