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どこか遠くに連れていきたい

男と女が互いに想いを寄せ合っても、
いつも一緒にはいられない関係であるなら、
その逢瀬には常に終わりがあり、その都度、
このままどこかにさらっていってしまいたいと願う。

それは、たとえば、
二人のことを誰も知る人のいない異国の地か、
誰にも見つけられない隠れ家か、

そんな恋人たちの葛藤は、
駆け落ち、逃避行などのようなテーマで、
数多くの恋物語となって描かれているが、
そのほとんどが、不幸な結末となってしまう。

あなたをどこかにさらっていきたい。

いつもいつもそう想っても、
そう願っても、
そうなかなか思うように行かないのは、
お互いに良くわかっている事。

だから恋はさらにその葛藤に刺激され、
熱い想いが互いの心から吹き出していく。

あなたをどこか遠くにさらっていったとしても、
必ずまた元の場所に、
返してあげなければならないのが現実なら、

せめて、この熱い体と抱擁と愛撫で、
あなたをどこか遠くに連れて行ってあげよう。

すべての煩悩も、現実も、しがらみからも、
裸になって抜け出して自由になれる、
官能の極みの世界へと。

あなたは喜びのあまり大きな声を出し、
気を失うほどに意識が朦朧となり、
いつの間にか、
いつもどこかあっちの世界に漂ってしまっていて、
帰ってくるのにとっても長い時間がかかってしまう。

だけどその時の顔は、
あまりにも幸福に満ちていて美しい。

あなたをどこか遠くにさらってしまいたい。

私以外誰もあなたを連れて行った事が無い、
女としての喜びの極致の世界へと。

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