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瞳の星屑

冬至を迎え聖夜が迫り、
これより数ヶ月は一年で最も夜空の星が美しく見える季節。

まだ電気が無かったほんの少し前までの空は、
我々が今想像する以上に星の輝きが美しく見えたはずで、
そのさんざめくきらめきは月の無い夜でも、
私たちの姿を地表に影として映していたのだろう。

「星影」という言葉があり、
それをもたらす満天の星を「星屑」とも言うように。

一つ一つの星あかりは淡くて頼りないけれど、
夜空に粉をばらまいたように広がれば、
その光のまとまりは大きなうねりとなって地表に降り注ぎ、
私たちの心までも蕩かせる威力がある。

何百光年彼方からその諸星の重力が届きそれがまとまって、
月の引力のように私たちの心を操っていても不思議ではない。

そんな諸星を見つめ崇めてきた人間の目に、
その星あかりがその瞳にのり移り、
特に恋をした女の瞳が輝きさんざめく。

あなたを抱いている時のあなたの目の輝きは、
その星の瞬きに似て、
夜空を見上げると空に吸い込まれるように感じるように、
私はあなたの目から逃れられなくなる。

催眠術にかかったかのように
私の体は星屑に全身をまぶされ、
あなたの裸体に包まれて、
あなたの中で果てる時、
私の目の前に満点の星が煌めいている。

やがて私はあえなくひとつの流れ星となって、
あなたの星屑の中に溶けゆくばかり。

私を見つめるあなたの瞳の星屑。
私の心の中にはっきりとした星影を伸ばしてくれる。

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