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竜とそばかすの姫を見たよ

竜とそばかすの姫を見てきました。久々に感想を。まず最初思ったのは。




とっちらかってるなぁ

これが最初見た一番の感想でした。この作品映像美、主人公の歌、ぬるぬる動くキャラクター達、どこをとっても名作の匂いがするのですがストーリーがいかんせん微妙。酷いと言っても差し支えありません。
正直細田監督はストーリー運びに非常に難がある方だなぁと感じます。ここからはネタバレ全開で批評するので見てない人はここでさよならです。

1.テーマ設定が薄い

この作品テーマが3つあると思います。
1つは鈴のUを通じた自己表現。今まで歌えなかった女の子が仮想世界でなら歌える...。という所。

2つ目は竜の正体と仮想現実世界の人の攻撃。謎の龍とそれを追い回す人々。

3つ目は親子の虐待と鈴のトラウマ。これに関しては4つ目も含まれているかもしれません。

この3つが絶妙に入り組んだ形で映画が進みます。皆さん映画を見るときにテーマ設定が3つあるとどうなると思いますか??
多くの映画はテーマ設定や同時進行する事柄は最大でも2つです。ほとんどの名作は2時間という限りある時間設定故に1つのテーマをじっくりと描きます。そうでないと説明不足になるからです。
この映画は3つ描いているのですがしっかり一枚一枚がうすーく、それで解決しているのか??という謎の結論になります。

1つ目については回収として竜を救うために姿をさらけ出して歌います。これによって鈴はありのままの姿で自己表現できるようになりました。しかし、自己表現する前に色々な人にバレているし、バレたことを驚く素振りもありません。強いていうならしのぶくんにバレたことだけは驚いていました。しかし他の人にバレたことについてはスルー。この時点で歌うまでもなく自己表現ができる子になっています。せっかく現実世界と仮想世界で鈴のキャラクターの対比がなされているのに姿をばらすことにカタルシスが生まれません。それなら誰も知らずにあれは鈴だったんだ。。。とみんなが驚くというほうが鈴が姿を出すのを躊躇う理由によほどなります。

2つ目についてもテーマに対してもはっきり言って薄い。そもそも竜について他の人が嫌う理由自体もベルが竜の正体をなぜ知りたくなったかもよくわかりません。どれも雰囲気ベースで語られるためネット社会の暴走を描こうとしてるとは思うのですが、それならベルの呼びかけでみんなで竜を救おうとする。というストーリーの方が個人的には納得できます。歌った後に正義のグループのスポンサーが降りていくのもはっきり言って謎。歌うことと、竜はあの場面では他の人にとっては全く関係のないことなのに、スポンサー達が正義の軍団から降りていくのが繋がりません。正義の味方というネット社会っぽい集団を出してネット警察を描きたかったようですが、彼らへの制裁も教訓もない。ただぽいものを出して邪魔だから雰囲気に任せて退場させたというとても薄い内容になっています。

3つ目。一番の問題シーン。虐待などの社会問題を扱う時は当事者もいるしそれを解決しようと取り組む人達もいる。そのため描く時は丁寧さが必要になります。しかし粗雑。虐待されているのに暴力も振るわれず外にも普通に出れる子供。虐待親のいる所に鈴を1人で向かわせる大人たち。なぜか鈴の毅然とした態度におののく虐待親。今まで抑圧されていたけど立ち向かうよ、と謎の少年のセリフ。
みなさん虐待とは子供が親に立ち向かってないから起こるのでしょうか?1人の少女が向かうだけで解決するような問題なのでしょうか??自分の子供を殴るような親は少女におののくのでしょうか??違いますよね??
これによって受け取れるメッセージ性ははっきり言って虐待をうける側が立ち向かえばなんとかなるという現実とは程遠い着地です。

このテーマ3つの薄さがこの映画の致命的な欠陥と言えます。そして気付きましたでしょうか。細田監督はテーマ設定をニュースで見た情報を自分的に解決してみたよー。というテレビの前でけしからん!!と怒っている親父のようなことをしているのです。その解決の仕方自体も実体験でもなければ取材したわけでもないため、現実とかなり乖離した解決法。テレビ番組の無責任なコメンテーターそのものです。唯一実体験として力が入っているとしたら1つ目の自己実現のテーマ。これ自体はとても丁寧に描かれようとはしていますがいかんせん他のテーマにがんじがらめにされたせいで結局適当に見えるというなんとも悲しい結末です。

2.オマージュが寒い。

美女と野獣オマージュがすごいです。しかも薄いです。オマージュはオマージュすることでその後の展開を暗示したりする効果がありますがこの作品については。。。
やっぱベルといえば美女と野獣!!怪物も出てくるしーオマージュさせてやれ〜。的な、先の展開を何も暗示していないただのマネ。正直恥ずかしい。まあ真実の愛を見つけることで怪物ではなくなる?とういう部分は同じなのか??でも他のテーマ設定のせいでそこの対応もすごく薄く感じるぞ...。というかオマージュで思うのですが、有名作品まんまパクるのは正直恥ずかしいです。厚顔無恥と言ってもいいです。ララランドのオマージュに溢れた作品ですが元の映画が古い分気付きにくい。そもそも丸パクリではないです。正直今回は美女と野獣すぎてそれはオマージュの域を超えてパクリでは??と思わずにはいれません。

3.伏線て回収の仕方やね

伏線って実は貼るのは誰でもできます。僕らのような素人でも含みや謎を書けば伏線になります。しかし回収が厄介です。この回収が名作か否かを決めていると言っていいです。今回の伏線回収は雑です。ひとりで鈴が竜を助けにいくシーンがお母さんが子供を助けに行って死んだことの伏線回収というか暗示になっていると思うのですが先ほども言ったように、止めないまわりの大人達のせいで回収に大きな疑問符がついてしまいます。全てにおいて前述した通り最初に設定されたテーマ設定に対して解決が疑問が残る物なので回収が雑と言わざるえません。


結論

個人的に点数をつけるなら40/100
あまりあるとても素晴らしい映像美と音楽が脚本のせいで台無しになっていくというなんとも苦しい映画でした。しかしこの映像美だけでも見るべきというのは同意します。なので行って後悔はない映画だなーと感じました。

長文読んでくれてありがとう!では

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