初めての卒業生
気温がまちまちで今年2度目の体調不良に陥りそうな感じです。
以前、自分自身の最終決戦についてnoteに綴ってみましたが、今回は僕が教えている道場の6年生の最終決戦について書いていこうと思います。
かなり個人的なものですが、自分にとって初めての卒団生に対する思いはとても大きなものがあります。
試合前夜にSNSに投稿した文章です。
自分自身も気持ちを試合モードに切り替えるために投稿しました。
練習は裏切らない
試合に出るというのはとてつもない緊張感と戦うことでもあると思います。
試合直前の、その場から逃げたくなるくらいの緊張感は本人にしかわからないことなんだと思います。
その緊張に打ち勝つことは不可能ですが、緊張していても自分に自信をもって畳に上がる方法があるとすればたくさん練習することなんだと思います。
たくさん練習をして技術的にも精神的にも強くなることで結果的に試合で勝つことができるのでしょう。
指導者に求められていることは技術論を語ることだけではなく、いかに選手に練習させることができるかだと思っています。
僕は文才がないのでなかなかうまく表現できませんが、例えるなら「一流のシェフ」に似たところがあるでしょうか。シェフはお客さんの嫌いな食べ物を上手にアレンジして料理を作り食べてもらう、指導者は誰もがキツく辛いと思う練習を選手にやらせる。
指導者の技量ってそういうところに出ると思うんですよね。
2022年の秋ごろに小学校5年生で柔道を始めて、小学生生活最後の試合で3位になった選手がいました。
彼は去年の5月に初めて試合に出たときに30秒であっさりと負けたということがあり、試合後に涙ながらに「悔しい…」と言ってきました。
そんな彼の涙を目の前で見た僕は、彼と彼の母親に「絶対勝たせてやる」と約束をしましたが、次の試合も勝つことはできず、その次の試合は風邪をひいて欠場という結果に終わってしまいました。
どうにかして最後の試合では勝たせてやりたいと思い、僕ともう1人の先生で全体練習の後に居残り稽古をすることにしました。特に今年に入ってから僕はかなり厳しく相手をしていたと思います。小学生にどこまでやらせていいのか、正直言って分かりませんでしたが、本人が勝ちたいと言う以上はとことんやってやろうと思ってのことです。
彼は確実に、うちの道場で一番の練習量を積んでいました。
予選リーグの1・2位の選手が決勝トーナメントに進出するという方式の試合で、強豪選手相手に1敗もすることなく決勝トーナメントに進出、決勝トーナメントでは準決勝で敗れたものの彼の柔道は進化していました。理由は明白で「誰よりも練習をしたから」これに尽きます。
時代の流行というのか、世間の風潮というのかで「短時間集中」というような練習方法がすごく注目されている最近ですが、古臭いと馬鹿にされるかもしれませんが僕はたくさんやったやつが勝つと信じています。今回の結果はまさに、それを証明してくれたのだと思っています。
君たちの可能性
先ほどは3位に入賞した6年生の話をしたのですが、もちろん試合で勝てた選手ばかりではありません。一番真面目に練習しており、誰よりも柔道が上手なキャプテン的存在の選手は予選リーグで敗退してしまいました。
言うまでもなく、究極的には私を含めた指導者の指導力不足が原因なのですがそれだけで片付けてよいことでもないのでもう少し考えようと思います。
自慢ではありませんが僕は小学校1年生の時に柔道を始めて、4年生までは6回しか負けたことがありませんでした(母数が100以上なので我ながらすごいと思っています)。
勢いそのまま4年生の秋に県大会で優勝し、翌年の春に行われる全国大会の予選で勝つことを目標に練習しましたが、試合1か月前に柔道が嫌になり辞めることを考えました。試合は決勝で負けたので全国大会には行けず終わってしまいました。
小学校6年生になってからは誰かに自慢できる成績が何一つありません。
一方で、小・中学生時代は無名だった選手が高校や大学に行って大きく開花するケースも少なくありません。
選手の将来性を考えるとジュニア世代に基礎を作って、高校や大学で開花するタイプの方が良い、自分自身がいわば早熟タイプだったことでその後の競技生活では随分苦労したので、僕が育てる選手は今ではなく将来的に見て強くなってほしいと思っています。
「今はどんなに負けていても、君たちには可能性がある。」
無念にも負けてしまった選手に対して、この点をうまく伝えていくことが僕の使命なんだろうと思います。
いままで、そしてこれからも
僕がこの道場で教えることになってからこの4月で2年が経ちますが、子供たちにはこれまで本当にたくさんの経験をさせてもらいました。
あまり裏事情を言うべきではないのでしょうが、当初は2年で指導を終えるはずだったのですがもう2年お世話になることになりました。言うまでもなく子供たちの可能性に惹かれてのことです。今教えている子供たちがこれからも柔道を続けてくれたら、いつか彼らが僕を投げられる日が来るでしょう。僕だって練習し続けているので、まだまだ投げられる気はしませんが、自分の教え子が自分よりも強くなってくれればこれほどまでに嬉しいことはないと思うんです。これは僕のひそかな夢でもあります。
残念ながら既に、中学生になってからは柔道をやらないと言っている子もいますがそれはそれで良いと思っています。これからは人間同士の付き合いをしようということで。
俺たちはファミリーだ。
この言葉一つで、この先どこまでも繋がっていけると信じています。
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