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生まれた日が春だっただけで


拝啓 拉餃さん


 拉さん、こんにちは。お元気ですか。すっかり春ですね。3月が終わって4月に入りました。真昼は温かいを通り越して暑いくらいです。太陽の光を浴びて桜たちがピンクや白に発光していました。眩しかった。そこらじゅうが光っていたよ。拉さんところの桜も光ってますか。太陽光を溜めて、夜に光ってくれたらどれだけ素敵だろうと考えていました。眠れない真夜中に窓の向こうで光っていてくれたら、どれだけ安心できるだろう。いいと思いませんか。誰か発明してくれないかな。

 誕生日、祝ってくれてありがとう。すっごく嬉しかった。今年の誕生日はとても穏やかに過ごしました。珍しく日曜日だったのですが、特に外出するわけでもなく、ずっと家で過ごしました。好きな本を読み、猫と遊び、音楽を聴いて、そして夕方から日没までをぼーっと眺めていました。いつもわたしの味方でいてくれているすべてを、いつもよりたくさん愛でた1日でした。

 わたしも3月28日は、学生時代は春休み期間だったので、クラスメイトに会わなかったです。その分家族が祝ってくれていた気がします。一番思い出に残っているのは高校に入学する前に、父が買ってくれたYAMAHAのエレアコでした。今でも時々弾いています。これからもずっと宝物ですね。いつの間にかついてしまった傷も、買ってもらってから1、2年までは本当にショックで、申し訳ない気持ちが強かったのですが、傷もまた味であると思えるようになってからは、傷も癖もひっくるめてわたしのギターだと受け止められるようになりました。

 何度も述べてしまうけど、祝ってくれる人がいることって、とても嬉しいね。わたしも今年の夏は拉さんの誕生日をお祝いするからね。待っていてください。笑


 そうそう、今日は久しぶりに本屋に行ってきました。1ヶ月ぶりかな。調子に乗って2軒も本屋はしごしちゃった。久しぶりに嗅いだ本屋の匂いに思わず胸がクッとなりました。

 清潔な匂い。静かに整列している本の匂い。背表紙や表紙の色鮮やかさ。騒がしくない店内、手書きのPOP。コーヒーの匂い。

 本屋に存在しているすべてがわたしの五感を刺激していました。本だって、あれも気になる、これも気になる。うわあ全部気になる…と、マスクの下で鼻息が荒くなってしまった。だけど、気になるのは本当だけど読みたい小説が売られていなかったので、ある程度棚を回ってパワーを得たら2軒目へ移動しました。

 2軒目では無事ゲットできました。ジュリア・フィリップス著、井上里訳の『消失の惑星(ほし)』。 

 「これは(わたしにとって)良い小節に違いない!」と直感で、発売してすぐから欲しいと思っていながらもなかなか手に入れる機会に恵まれず、やっと今日、お迎えすることができました。

 欲しい本が手に入る喜びと勢いで、他にも何か読みたい本があった気がするなと、じっくり棚を見たし、いくつか目星をつけていた本は確かにあったのですが、手元にある本よりも読みたいと思う本はないと悟り、素直にレジに向かいました。(きっと未来のわたしが読みたくなるだろうということにして。)

 たった一冊だけをもってレジに並ぶ時間、手の熱がずっと本に伝わっているので、書店員さんが手に取った時に、その熱が伝わっているのか気になってしまいました。すごくこの本を楽しみにしていたんだという気持ちごと、そこから伝わっていくんじゃないか、むしろ伝わってくれないだろうかと思っていました。もちろんそんなことはなく、書店員さんはいつも通りに、丁寧に本を扱ってくれて、明るい声で会計を済ましてくれました。基本的にカバーをつけてもらわないタイプなので、会計中机に置かれて冷え切った本が返ってきました。そしてまたわたしの手によって温められる本。書店員さんに伝わらなくても本自身に伝わってくれればいいです。とても良い本屋さん巡りでした。

 拉さんは最近、何か本を買いましたか?また教えて欲しいな。


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春うららかな今日、黄砂が去って青空が見えた今日、菜の花ばたけを見てナウシカを連想した今日、春を過ごしたという自覚がすごいある。


 拉さんの自由律俳句、〔空の植木鉢が目立つ〕は、これから春の植物を植えようと思っていて、新しい植物が植木鉢に埋まるまでを待っている時間を詠んでいるのでしょうか、それとも冬を越せなかった植物がいた、ちょっと寂しい時間を詠んでいるのでしょうか。どちらにせよ、別れと出会いを想像します。だけど、春の陽気がそれを優しく照らしてくれているような、寂しいようで寂しくないような。そして何より、過ぎ去った時間、もしくはこれから過ぎていくだろう時間、といった、『時間』を意識させられます。すっごくいいね。


 では、わたしも春の自由律俳句をいくつか贈って、終わりにしたいと思います。


桜を知らない野良猫

おしぼりと箸の数が合わない

外来種だろうが幸運に違いない

ちょうど良い白湯みたいな朝

生まれた日が春だっただけで


明日も穏やかに過ごされますよう。それではまたね。


青野佑季



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