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大中小を考えましょう
僕は愛犬家である。
犬の表情や仕草を見ているだけで癒されるし、お気に入りの犬YouTuberの動画もよく視聴している。
昔、実家でコーギーを飼っていた。
コーギーは小型犬で、足が短くて、表情豊かで可愛らしい。
我が家のコーギー、ここでは名前をコギオということにしておく。
コギオとの沢山の思い出の中で、最近ふと思い出したものがあって、しょうもない話なのだが、それを書き記しておこうと筆を取った次第である。
我が家がコギオを飼い始めた頃、僕は小学生で、よくコギオを散歩に連れて行っていた。
散歩では、公園でボール遊びをしたり、他の家の犬と遊んだり、犬好きのご近所さんと交流したり、コギオがいるからこそ生じるいろんなものを楽しんでいた。
コギオのウンチをいかにキャッチするかという一大イベントもあったが(拾うのではなくキャッチするところがポイント)、これは深過ぎて書き始めると400ページ超の論文になること必至なので、ここでは掘り下げずにおく。
それでは本題に入る。
コギオとの散歩で住宅街を歩き回るとき、僕が密かにやっていることがあった。
それは、家の表札を見ることである。
表札を見て何をするかというと、「その苗字の前半に“大・中・小”どれを当てはめても別の苗字として成立するか」を考えていたのだ。
たとえば、「栗林」さんという表札があったとする。
そうすると、この前半の「栗」の部分を大中小に置き換えて成立するか考える。
「大林」、いける。
「中林」、いける。
「小林」、いける。
よし、クリア。
そんな具合で、僕はコギオの散歩中、人様の家の表札を見ては、大中小の法則が成り立つ苗字を探していた。
大谷、中谷、小谷
大野、中野、小野
大山、中山、小山
大西、中西、小西
大森、中森、小森
大島、中島、小島
大沢、中沢、小沢
大泉、中泉、小泉
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・
・
見つける度に、小学生の僕はガッツポーズした。
隣にいたコギオはそれに気付くと、「ご主人、何やっとるんや?」とよく首を捻っていたものだ。
この大中小ゲームに一時期ハマっていたおかげで、大中小がつく苗字は、今でも沢山並べられる。
クイズで「大中小を頭につけて苗字として成り立つ漢字を何個書き出せるか」というお題が出たら、きっと僕は驚くべき数字を叩き出せるだろう。
こちとら、コギオとの散歩を通してその勘が培われているんでね。
見つからないようで、意外と見つかる。
トントン拍子で見つかるときもあれば、何軒回っても見つからないこともある。
この絶妙な難易度が、ゲーム性を引き立てていたように思う。
そういえば、「大貫」さんの表札を見たとき、大貫さんも小貫さんもいるけど、中貫さんはいないよな、と思ったことがある。
ニュースで、「中抜き」のことが話題になる度に、僕は、まだ見ぬ中貫さんに思いを馳せるのである。
おわり
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