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どう書くか

 初めて小説を書いたのは小学四年生の頃だった。授業の一環で書いたと記憶しているが、なにぶん二十年も前のことなので自信がない。小学生の頃といえば、青い鳥文庫の『夢水清志郎』シリーズや『パスワード』シリーズ、『ハリー・ポッター』シリーズに夢中だった。ミステリーやファンタジーといった、非日常に夢見ていた時期だった。今思えばもっと幼い頃に見ていた『おジャ魔女どれみ』や『カードキャプターさくら』と、それらは一続きにあった。
 六畳二間の古いアパートに両親と姉と四人で暮らしていたから、当然のように貧しかった。だから好きなだけ本を読める図書室が大好きだった。そこで出会った江戸川乱歩の『少年探偵団』に影響を受け、『少女探偵団』という題の小説を書いた。それが始まりだった。プロットもないまま浮かぶ光景をただひたすらに原稿用紙に鉛筆で書き殴る、そんな原初的な行為がとても楽しかった。
 それからしばらくの間は書くことをやめていた。書こうとも書きたいとも思わないまま時が経ち、中学生になった。荒れに荒れていた時期だったけれど、アニメや漫画に開眼し、二次創作に出会ったことで救われた。ガラケーで二次創作小説を書き、絵を描き、ブログやサイトに投稿した。二次創作の合間にオリジナルも書いていたが、好きなキャラのことをずっと見つめていられる上に同志とときめきを共有できる二次創作の方が、ずっと面白かった。
 それから高校を卒業し、パソコンやポメラといったツールを手に入れた。相変わらず二次創作をゆるゆる続けるのみだったけれど、十分充実していた。
 新人賞への応募を始めたのは二十歳を過ぎてから。三十歳の現在に至るまで、一年に一作~三作ほどのペースで応募を続けている。戦績はボロボロで、一次予選通過と三次予選通過を一度ずつ経験した以外は箸にも棒にも掛からない状況。
 受賞作を読むと【何を書くか=どう書くか>>誰が書くか】くらいのバランスで重要な気がするけれど、傾向と対策を意識しすぎても良くないことは分かっているので、結局は書かされるままに書くしかないのだと思う。
 どう書くか。けれど私がこの記事で語りたかったのは、文体とか構造の話ではなく、どんな環境でどんな手法で書くべきか、ということ。自宅なのかカフェなのか、プロットを練るのか筆の赴くまま書くのか……。プロットを作るならアナログなのかデジタルなのか、アナログならノートなのかコピー用紙なのかどこまで書き込むのか……。
 小説めいたものを書き始めてそれなりの年数が経っているというのに、困ったことに、未だに自分に適した手法が分からずにいる(もっとも、それが確立できていたならとっくに受賞に漕ぎつけていたかもしれない)。

 私の小説の書き方は、今のところ以下の通り。そのときの気分や体調によっていくつかパターンがあるので、思いつく限り書き出してみる。

【場所】
①リビングの隅。一度も折り畳んだことのない小さな折り畳みテーブルと、ガタつく椅子。
②ベッド
③カフェ
④ファミレス
⑤電車

【ツール】
①ノートパソコン(Word)
②ポメラ
③スマホ
④ノート

【音】
①あり:ジャズ/歌詞つきの音楽/ラジオ/YouTube動画/アニメ
②なし:自宅なら無音、外ならその場の環境音

【飲み物・食べ物】
①飲み物:白湯/緑茶/紅茶etc
②食べ物:干し芋/ビスコetc

【時間】
①平日:朝4:30~6:30もしくは7:30まで(仕事のシフトによる)
②休日:不定

【書き方】
①プロットなし:思いつくままに頭から書く。
②プロットなし:思いつくシーンもしくは台詞から書き、その後隙間を埋めていく。
③プロットあり:起承転結をスマホかノートに書き、それを素に肉づけする形で書く。
④プロットあり:思いつくシーンもしくは台詞をスマホかノートに書き出し、それを素に順序を入れ替えたり肉づけしたりして書く。プロットとは言えないかもしれない。

【推敲】
 一度目は変化や破壊を恐れず書き直す……のが理想だけれど、そんな大胆さを持てたことは一度もない。せいぜい文章を前後に入れ替えたり台詞や単語を変更したりするだけで、大筋は変えられない。それを二度か三度繰り返した後は誤字をチェックするためにWordの読み上げ機能を使う。読み上げも二度か三度繰り返す。初稿と第二稿の間は一週間~一ヶ月ほど放置する。第二稿と第三稿の間は数日ほど放置し、それ以降は特に気にせず続けざまに確認する。

【書くために意識していること】
 これはごく最近始めたばかりなんだけど、登場人物を点ではなく線で考えるようにしている。例えば成人を書くにあたっては、大人になってからの人となりを切り取るのではなく、生後すぐの姿形や性格、子どもの頃に好きだった遊びや読んでいた本について考える。もっと言うと両親や祖父母の像についても考えておく。そうすることで、人間としての血肉がきちんと形成されるので、人物が身近に感じられるし、書いていて楽。でもこれの弊害なのか、このところ家族の話ばかり書いているような気がする。気をつけたい。多分無理。

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