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緩やかに向かいながら

放っておいても人間いつかは死ぬ。
少なくとも今まで死ななかった人間はいない。

私は今日も緩やかな自殺をしている。
この自殺が成されるのが先か、それとも全く関係ない病気や事故で死ぬのが先か。

緩やかに、少しだけ、いや、そこそこ積極的に死に向かっている私にも、たぶんまだ幾らかの時間がある。
残された人生の余白を埋めてみようかと思ったりするのだが、これがどうにも上手くいかない。
一言で言えば、何をしても満たされないのだ。

私は多趣味な方だと思う。
それでも、何をしても満ち足りない。
よく「心がひびの入ったコップのようで、注いでも注いでもどんどんこぼれ落ちてしまう」みたいな比喩があるが、
私の場合はひびが入っているというより、コップに注がれたものを認識する能力が欠如しているのだと思う。

客観的に見れば、私は恵まれているし満たされているはずだ。
やりたいことができる環境があって、夫や家族や友人に愛されている、のだと思う。

しかし主観ではわからないのだ。私には何もわからない。
正しく認識ができない。

何もわからないまま空虚に生きることと、死との差は何だろう。

今更何かをわかるようになれる気もしないけれど、憧れは少しだけある。

普通に生きてみたかった。
何が「普通」なのかさえ、私にはわからないのだけれど。

そうは言いつつ、たぶんもう暫くはこの濃霧の中をうろつくのだと思う。

オワリ

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