Florence /Walk again

ローマで目覚めた朝は素晴らしかった。昨夜はもう暗くなっていたので、朝が来て窓から見た景色が一年ぶりの再会となった。そこからは背中合わせの建物しか見えなかったが、美しかった。何もかも忘れて、5分ほど息を吸い続けた。

一晩だけお世話になった宿を出て、テルミニ駅へと向かう。「もうここへは戻ってこないのだ。ここは始まりだから」そう思う寂しさが原動力へもなり得る。

私をフィレンツェへ連れて行く特急列車が待っていると思うと、歩きながらも笑みがこぼれてしまった。石畳との相性を考えて、キャリーケースは使わなかった。背中のリュックはまだ軽かった。

1時間半ほどで、フィレンツェとも再会した。3泊5,800円のドミトリーに向かう。アルノ川のすぐ近くにあり、もともと修道院だったところをリノベーションしたという、よくできたホステルだった。隣には、”ミケランジェロに絵を教えた先生が天井画を描いた”という教会があり、鐘の音がよく聞こえてきた。私はイタリアに住んでいると必ず聞こえてくる、この鐘の音が好きだ。

通された部屋には韓国人の女性、そしてトルコ人男性、イタリアのボローニャから来た男性がいた。「For only Female room」を予約したのでこれではおかしい。女性に相談したところ、「彼らは安心できる人だと思う」と言われた。さらに宿は満室が続いているようだったため、このままステイすることを決めた。

フィレンツェの街を歩く。先ずはアルノ川を確かめる。ヴェッキオ橋はどこだろう?あの橋を眺めたい。隣の橋から、じっと見ていたかった。ヴェッキオ橋の姿を捉えると、足元も確認せずに歩き続けた。胸に糸が括り付けられていて、それをどこからか引っ張られているように感じた。そこに変わらずに居てくれることがとても嬉しかった。変わってしまった私が遠くへ行きすぎないように、ずっしりとそこに居てくれることが。

安心とともに、空腹を感じた。昼はフィレンツェ中央市場でとりたかった。二周ほど市場内を歩き、ニョッキを注文した。小麦粉の塊の味がした。後から韓国人女性に話したところ、「現地のニョッキは私たちの口に合わない気がした」と言っていた。


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