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金木犀の微かな香り


金木犀の香りがふわっと微かにした。
もうこんな季節かぁ。

金木犀の香りは毎年、小学生の頃の懐かしい思い出を私に思い出させてくれる。
あれは確か太陽の光が降り注ぐ、よく晴れた日の帰り道だった。みんなでワイワイ話しながら坂道を下っていた情景が昨日のことのように思い出される。
お母さんがスーパーで買ってきてくれたお菓子を持って、帰宅したら一目散に公園へ向かうのが日課だった。
男女関係なくみんなで鬼ごっこやサッカー、ドッチボールをして遊び、暗くなってきたらブランコ周辺に集まってみんなで他愛もない話で盛り上がった。
毎日のように夜の7時くらいまでみんなと遊んだ日々が懐かしい。

私たちのクラスは入学当時から人数がとても少なく、進級してもクラス編成がなくずっと1クラスだった。側からすればつまらなく見えるかもしれないけれど、私にとっては心地が良く、とても楽しかった。年を重ねるごとに絆が深まっていく感じ。ちょっかいの延長で嫌がらせを受けたこともあったけれど、それも含めて素敵な思い出だったなと今は思える。

最近嗅ぐ金木犀の香りは、そんな小学校の思い出を蘇らせるような香りとはちょっと違う。
現状に対する不安なのか。未来に対しての不安なのか。自分でも何に対して不安になっているのか、そもそも不安になっていることがあるのかよく分かっていない。けれど、心のどこかに隠れていたモヤモヤっとしたものに、金木犀の香りを嗅いだ途端に気付いたのは確かだった。

ひとり暮らしを始めてから、刻々と進む毎日を生きることに必死で、心配事を1つ1つ考えている暇も正直なかった気がする。そんな状況がかえって、良い感じに疲れや不安を私に感じさせなかったのかもしれない。

金木犀の香りを嗅いでふーっと一呼吸息をついて、少し緩んだ隙に、今まで姿を現さなかった不安たちがひょこっと顔を出してしまったのかもしれない。

金木犀の香りは毎年変わらないのに、嗅いだ時に抱く私の感情は年を経て変わってゆく。その時の環境だったり状況だったり。ちょっとしたことで感情は変わるものなのだと改めて実感した。

来年はどんな感情になるのかな。もうちょっとだけ明るい感情だといいな。


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