セラムン二次創作小説『パンデミック(クン美奈)』


「やっほー公斗元気~?」


ワイドショーを流しつつ勉強をしていたら美奈子からテレビ電話がかかってきた。


取るやいなや、はいも言わせて貰えず元気な声で挨拶してくる彼女に呆れつつも笑顔を見てホッとする。


「別に昨日と変わらずだが?」


毎日互いにテレビ電話をするのが最近の日課になっていた。


会えるなら会いたいが、そうはいかない世の中になったから苦肉の策だ。


そう、今世界は未知の新型コロナウイルスの脅威に晒され人と会う事もままならない。


毎日のニュースは世界でどれだけ感染し、どれだけの人が死んだ、どんな症状でどこでなったか、そればかりだった。


日々感染者が増える中、緊急事態宣言が出され不要不急の外出は禁止になり、美奈子とも全く会えなくなってしまった。


1つ助かったのが前世とは違い、文明の利器が発達していてスマホでテレビ電話ができる事だ。


遠く離れていても電話を通してでも顔が見られるのは有難いし、正直ホッとする。


「相変わらずぶっきらぼうねぇ~。私と会えなくて寂しくないの?」


「…あぁ寂しい」


と素直に答えると明らかに動揺している。


いつでも会えた頃には会わなくても全然平気だったが、会うな、会っても距離を取れと言われると逆に会いたくなるし、抱きしめたくなる。


前世の時もそうだが、マスターに月のプリンセスと会うな!心を通わすな!とキツく言いつつも、いつの間にか自分自身もヴィーナスを好きになってしまっていた。


ダメと分かっていても歯止めが利かない、人間の心理とは不思議なものだとつくづく思う。


こうなって後悔してる訳では無いが、会える時はもっと無理してでも会っていれば良かったと思う程には精神的に参りかけてる。


せっかく前世とは違い、堂々と恋愛して心と体を通わせ合え、いつでも会える環境になったと言うのに、不便な世の中になってしまったものだ。


「なぁによぉ~柄にもなく素直になっちゃって。結構参っちゃってる感じ?」


「まぁな。前世と違っていつでも会える環境になったのにな…」


「前世まで持ち出すくらいきちゃってんのね。まぁ私も似たようなもんよ?前世より会えてないな~って思ってた。会いたいね」


彼女も結構参っているようだ。


さっきとは打って変わってテンションが低くなる。…まぁ俺のせいだが。


「毎日何してんだ?勉強…はしてるわけないな?」


「んもう~公斗のいじわるー!勉強はしてないけどHome Stay頑張ってるわよ」


「それを言うならStay Homeだ。相変わらずケアレスミスが酷いぞ。」


「仕方ないじゃない、聞きなれない用語連発で付いてくの必死なんだから~」


「確かにお前の嫌いな新語が英語と日本語で次から次へ出てくるしな」


勉強嫌いでバカな美奈子もこの事態に必死について行こうとしているのか、色々コロナについて得た知識をひけらかしてくるが、尽くケアレスミスしていた事は彼女の名誉の為、割愛しておこう。


勉強以外何してるのか聞けば溜まってたゲームのクリアを目指してただの、緊急事態宣言前にもしもの時にとうさぎさんと買いに行った漫画を読んでただの、アニメを見てただの、サブカルチャーばかり出てきて頭を抱えた。


「勉強は仕方ないが、家事能力上げといてくれよ」


「何でよ?まだまだ嫁には行かないわよ?」


「こんな機会でもないとしないだろ。少しは俺を安心させてくれ」


壊滅的な家事力を見せつけられてから不安しか無かった。


直接は言っていないが結婚を考えているから完璧にとは言わないが、マシなレベル位にはしといてもらいたかった。


そんな事を思っていると画面に美奈子の相棒の白猫が割って入ってくる。


「2人とも毎日よく飽きないな?」


呆れながら白猫が話してくる。


会えないんだから多めに見てもらいたいもんだ。


「美奈子に勉強と家事やる様見張っててくれ。留年されると困る」


「言ってるけど全然だ」


男同志で話していると「余計な事喋らないでよ!」と美奈子に怒られ電話を切られてしまった。


全く、色々と突然で猪突猛進な奴だ。


前世も似たようなもんだったからこれは一生治らないな。





おわり



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