一流の二流、二流の一流

『地獄の警備員』という映画のワンシーン。
商社の美術部に就職した成島(久野真紀子)が、美術に見識がない同僚に次のように尋ねられる。
「一流画家の二級品と、二流画家の代表作とではどらちが価値があるの?」
この問いに、成島は「二流画家の代表作です」と言い切り、その理由を語る。

「その画家が一流か二流かは時代とともにいくらでも変わって行きますが、その画家のどの絵が代表作かは、まず変わることはありませんから」

成島の言うとおり、作品に対する評価とは、相対的な作者への評価と絶対的な作品への評価によって決定づけられる。
このうち相対的な評価について、20世紀構造主義の巨匠ミシェル=フーコーの「エピステーメー」という概念を用いれば容易に説明がつく。
エピステーメーは、その時代・その構造に生きる人々に共有される知の大枠、と説明されることが多い。かなり雑な言い方をすれば「時代の空気」。
思考は空気に先立たない。

一方で、絵の美しさは極めて普遍的なイデアに論拠するところが大きく、その意味で絶対的だ。
だからこそ、成島は「二流画家の代表作です」と言い切ったのだ。恐るべし。



ちなみにこの映画はというと、地獄の警備員役を松重豊が務め、脇役を諏訪太朗や大杉漣で固めている。しかも監督はあの黒沢清である。
成島に言わせれば「一流演者・一流監督の二級品」となるだろうか。笑


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