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「デザイン万能感」を冷めた目でみる

年明け第一弾のポドキャストは『デザインマネジメント研究の潮流 2010-2019』(八重樫文・後藤智・安藤拓生)について八重樫さんと話しました。

ぼく自身、アカデミック分野の研究者ではないので、まず論文や専門領域のコミュニティに関する基礎的事項について確認しました。それをおさえたうえで、デザインマネジメントというフィールドはどういう特徴をもっているかについて八重樫さんに聞いてみました。以下の文章を起点にしてみました。

ほとんどの論文における論調は、「イノベーションやビジネスモデル開発、起業にデザインは貢献し得る」というものであり、その役目を負うのがデザインでなければならない理由が明確ではない。ー デザインマネジメント研究の展望ー国際会議DMA2017における研究の分析より

詳細は、ポドキャストを聞いてください。

ぼくがつらつら思うのは、「筋の良い研究テーマの選び方」が勝負だなあ、ということです。デザインマネジメントはビジネス分野とダイレクトな関係をもっており、実践家の活躍する部分も多く、トレンドにのりやすい。とすると、長期的に生きるテーマの選択をしないと研究者としてはサバイバルできないでしょう。

2013年のCADMC(Cambridge Academic Design Management Conference)で発表された論文63本において、新製品開発を対象とすると「デザインシンキング」「プロトタイプ」「アーティスティックインターベンション」といった言葉が頻出し、サービスデザイン領域だと「PSS(Product Service System)」「Experience Design」「Co-Creation」、戦略的デザインであると「Strategic Design」「内部デザイナーと外部デザイナーの活用」「曖昧性のマネジメント」といったことがテーマになっていました。

一方、違った学会のため一貫性には欠けるのですが、2017年のDMA(Design Management Academy) の論文は96本あり、デザインエデュケーションを対象とすると「デザインシンキング」「デザインとアントレナーシップ」、サービスデザインでは「PSS」「サービタイゼーションとサービスデザイン」、戦略的デザイン領域になると「デザインマネジメント・ケイパビリティ」「デザインとイノベーション戦略」といったテーマになります。

デザインシンキングの適用範囲が新商品開発から広がっていることや、同様に戦略的デザインもより包括的な関心に広がっていることが分かります。「ああ、デザインの力の拡大だね!」と称賛してみるか、前述したように「デザインの万能感あり過ぎ!」と慎重にみるか、という二つの見方がありうるわけです。

単発で存在感を出したい人、特に実践家は賞賛派であっても何とか人生過ごせるわけですが’(!)、研究者は長期的な視点を維持しないといけないことになります。したがって、いわばそれで飯を食っている研究者の論文を選んで読み込んでいくことに意味があるはずなんですね。

もちろん、研究者だけのコミュニティの暗部をみるなら、その視点の閉鎖性、要は「何をそんな細かいどうでもいいことを延々と論じているの?」との疑問がでてくるでしょうから、そこは見極める必要があります。よって「筋の良いテーマ」に立ち向かっている人、そんなに多くはないでしょうから、その人たちを指標としていくのがビジネスパーソンにとっても有意義なあり方ということになるでしょう。

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