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舞台「豊饒の海」観劇

三島由紀夫の命日(11/25)にほど近い11/27に、「豊饒の海」の舞台を観てきました。
http://www.parco-play.com/s/program/houjou/

親しくしてくださっている鵺さんが、以前に私が豊饒の海を愛好していると話したことを覚えていてくださり、お誘いいただきました。実はその前からこの舞台の存在は知っていたのですが、どうせまた第一部の「春の雪」しかやらないのだろうと思っていたので、見に行くつもりはありませんでした。
ところが、お誘いいただいたので詳しく調べてみると、何と一回の公演で全四部が演じられると分かり、俄然興味が湧いてきてすぐに二人分のチケットを手配しました。鵺さんに感謝です!

劇場は、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA。チケットを取ったのが遅かったので後方の席しか残っていなかったのですが、程よく高くなっていたので想像より舞台はよく見えました。

舞台は四部それぞれの主人公が共演するシーンからスタート。第一部から順に第四部まで駆け足の展開が続く・・・と思いきや、第一部の流れをベースに時代を超えて、第二〜四部のシーンが挿入されていくという構成。全四部の長編を普通に詰め込むのは無理があると思っていましたが、この方法は大胆なシーンの取捨選択を可能にしていて、全編通して不自然さを感じることなく鑑賞することができました。更に、各世代の本多が同時に登場してそれぞれの思いを吐露するなど、複数の時代を融合させた舞台ならではのシーンも随所にあり、新鮮さと原作にはなかった感慨を同時に感じさせられました。

普段なかなか舞台に足を運んだりしていなかったので、役者さんは清顕役の東出昌大さん以外は存じ上げませんでしたが、どなたも本当にうまく役を演じられていて、原作からそのまま飛び出してきたのでは?と錯覚する躍動感でした。部をまたぐと同じ役者さんが違う役を演じていたりして、あとでパンフレットを見て、そうだったのか!と驚かされたりもしました。

三島由紀夫の遺作であり、こだわりを持ったファンも多いであろうこの作品の舞台化は期待が高く、またハードルの高いものだったと思いますが、それをとてもチャレンジングな手法で実現していることに感服しました。私の読書経験の中でも一二を争う強い印象を抱いた作品で思い入れがあり、鑑賞後に落胆している可能性も高いと予想していましたが、結果は大満足でした。
お気に入り作品の別メディアへの展開は期待を裏切られることへの恐怖感を伴いますが、次の機会も是非前向きに捉えよう、この舞台はそう思わせてくれました。
お誘い&ご一緒してくださった鵺さん、お陰様で稀有な感動を体験することができました。この場を借りて、御礼申し上げます。

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