謎の出前 後編
数日後…例の携帯がやっと繋がり声の主は中年の女性…
★週末の夜、さら子の住む市内のどこかで携帯を落とした。
もしかしたら、さら子の最寄り駅付近で落としたのかもしれない。
★自分は当然そんなイタズラはしてないし、さら子の事も知らない。
突然のさら子からの電話に何が何だか分からずに戸惑う女性…
けど、さら子も何が何だか分からんのや…
とにかく、こういう事があったのは事実で110番通報もしてるから警察に
確認してもらってもいいと伝え電話を終えました。
これはもう…落ちていた携帯を拾ったバカ者がやったに違いない！
ならばっ！？一体、どこのどいつの仕業だっ！？何の恨みだっ！？
「はぁい(*ﾟ▽ﾟ*)集合～(*ﾟ▽ﾟ*)」と親子捜査会議開始。
お子曰く…「おかんの知ってる人は万が一バレた時に自分が味わう恐怖を
知ってるからやらへんと思う…犯人はおかんの知り合いじゃないな…」
いや、何か…褒められてるのか貶されてるのか分からないわ…(´･_･`)
お子…？あなた、一体…母親の事をなんだと思ってるの…(´･_･`)
そしてお子…お子も学校の友達に恨みを買うような子ではない…
さら子と違ってグレもせず、猫たちに赤ちゃん言葉で語りかけたり
「この子(｡-_-｡)今日から仲間入りやから(｡-_-｡)」と、妙に可愛い
ぬいぐるみのマスコットを紹介してくる子だけれど、表ではクール
ぶる事を怠らない…抜け目のない男だ。
そして、何と言っても一番の手がかりである苗字の読み方。
さら子やお子と親しい人たちは、当然間違わずに読める。
そして、いくら親しいと言えど時代は既にインターネットの時代…
メアドは知ってても家の住所、部屋番号まで知ってる人間は限られている。
そして、もう一つ…有力な手がかりがある…
それが住所だ。実は町名も苗字と同じで色んな読み方があるんだなー♡
「愛知」を大多数の人は「あいち」と読むけど、滋賀県愛知郡の人は
「えち」と読む事も当然の様に知っている的なそういうの！そういうの！
デリヘルに予約した犯人…さら子達の苗字の読み方は間違ってたのに
町名は間違わずに伝えている…ﾌｯﾌｯﾌ…ﾌｯﾌｯﾌ…なるほど…😏ﾆﾀｧ
親子会議が佳境に入った時、警察から電話がっっっ！
「こちら捜索本部のさら子っ(｡･ˇ_ˇ･｡)何か分かったか！？」とは
言うてないけど。さすがに言わん。
警察曰く、携帯の持ち主の女性は同じ市内在住だけど、さら子達とは使う
沿線も異なり、何の接点も無いから無関係だと。
恐らく、携帯を拾った第三者が面白半分にやったイタズラであろう…
そして、名前の読み間違えからして若い子のイタズラであろう…
刑事さぁん(´･_･`)もう、それは既に親子会議で推理出来てんのよー(´･_･`)
もうちょい…もうちょい頑張って一歩踏み込んだプロの見解ぃぃ(´･_･`)
特に被害らしい被害も無いので、警察の役割はこれにて終了となりました。
さぁ…落ち着いて犯人像を推理しよう…
今…判明している2つの手がかり…
「名前の漢字を正しく読めない」
「正確な住所を知っている、そして地名の読みも合っている」
これはもう単純に、名前を正しく読めない知的レベル。
地名を間違わなかったのは…さら子の様に地図マニア…
しかし、地図マニアであれば漢字には強い。滅法強い。
だが名前が読めてないので、地図マニアではないっ！
単に犯人にとって身近な場所であり地名なので読めてるだけの事。
そして、とある理由で正確に部屋番号まで住所だけは知っている。
そして犯行の動機…
犯人はとにかくさら子やお子の事が気に入らないんだろう…
困らせたり、怖がらせたり…ギャフンと言わせたくて仕方が無かった。
しかし…一番手っ取り早い嫌がらせの代表格ともいえる「無言電話」。
ﾋﾟｯﾋﾟｯﾋﾟﾂと「184」を付ければ非通知でかけ放題なのに、今まで一回も
固定電話、親子の携帯にそんな無言電話やいたずら電話が無い。
それはなぜか？犯人はそもそも、こちらの電話番号を知らないからだ！
デリヘルと同じ様にピザやお寿司でイタズラの注文をする事も可能っちゃ
可能なのに、それも今までに一度も無い。
それは…そこまでやると通報される恐れがあるからだ。
犯人はとにかくビビりなわけだ。身バレも絶対にしたくないし、お咎めを
受けるのももっとイヤなのだ。ｺｿｺｿｺｿｺｿ…陰湿でデリヘルのあの運転手の
若者以上に筋金入りの陰キャなわけだ。
偶然拾った携帯となれば、こりゃ完璧にバレっこないと思ってやったはず。
そして最も重要なポイント…
人間という生き物が、何かイタズラ、嫌がらせをする時に何を楽しみに
しているかというと、その行為が行われるのを見届けたり相手の反応を
見た時の高揚感…この高揚感を味わう為にやるのだ。
以上の事から、犯人は同じマンションに住む1階のクソガキである。
さら子はそう推理いたしました。
犯人像にパーフェクトに該当しているのです。
うちのお子より2つ、3つぐらい年上の年子らしき兄弟。
ﾊﾞｯﾁﾊﾞﾁのヤンキーとかでは無いんだけど…
分かりやすく言うと、そういうﾊﾞｯﾁﾊﾞﾁにﾊﾟｼﾘにされがち的な？
自分もいつかﾊﾞｯﾁﾊﾞﾁに…な高みを目指す程の根性も無い的な？
かと言って、うちのお子の様なﾎﾟﾍｰっとしたグループにも属せないし
属したくねーわ的な…そういう中途半端な立ち位置ね。
さら子達がここに越して来た時、既にこの兄弟達は住んでいて。
お互い小学生同士なので、仲良くなっても良さそうなもんなんだけど…
大人の視点で言うと、親の愛情に飢えてる子ども特有の言動が多いので
同じマンションの子達からは距離を置かれて孤立してる子達でした。
それに加え、親御さんも少し変わってる人達で顔を合わせても挨拶どころか
会釈もしない様な…そんなタイプだから一家揃って孤立よね…
だからと言って、兄弟をいじめたり無視したりとかは、誰もしない。
ただ、一緒には遊びたくないから距離を置くしかなかった。
そして、兄弟も「一緒に遊ぼう」と言う事も無ければ、暴力行為や物を
盗ったり壊したり…そんな事も無いっちゃ無い。
親の愛情に飢えてる典型的なパターンだな…と思いつつも、別に虐待を
受けているわけでも無くて、日本全国どこの親御さんも仕事や家事で日々
忙しくしている。その中で、それぞれの家庭や親子がそれぞれのやり方で
子どもに接し、向き合って子育てをしているわけなので…さら子はこれは
それぞれの家庭の「教育方針の違い」だと、線引きをしていました。
親御さん自身が会釈や「今日も暑いですね」程度の関わりすら、持とうと
しない以上、さら子も他の階の親御さんも成す術が無いというか…
なので「あのおにーちゃん達うっとうしいわー(｡･ˇ_ˇ･｡)」とお子の怒りが
頂点に達したある日、さら子しれっと兄弟に言っちゃったのよ。
「何か文句あんの？」って。いやいや、だってさ？「あのね？おばちゃんのお話聞いてくれる？」とかって、あーだこーだ言っても理解出来ないかも
しれないじゃない！？だったら、回答も「はい」か「いいえ」で済む簡潔
な問い掛けの方がお互いにとっていいじゃない！？
まぁ、うつむくだけで回答返って来なかったけどな…
それ以降、兄弟が小学生の間は一応は平和だったんだけど。
彼達が中学生になると、日が暮れても家に入らずにマンションの入り口付近
に友達も一緒にたむろする様になって…
青い矢印が敷地内通行経路
赤い★がたむろする少年達
青少年特有の「人数増えるとイキりがち」な、そういうのあるでしょ？
今度はそれが出て来ちゃったのねぇ…
お子は夕方から自転車乗って習い事や塾に行くわけだけど、その行き帰りに
遭遇すると、再びあーだこーだ言って来る様になったらしくって。
けど、お子も小学校の高学年になって、色んな事もある程度は理解出来る
年齢だから「ほんま、あいつらウザいわー(｡･ˇ_ˇ･｡)」と言いつつも、上手く距離を置く事は出来てたんだけど…
逆に今度は、さら子が「あのガキどもウゼー(｡･ˇ_ˇ･｡)」になっちゃって。
だって(｡･ˇ_ˇ･｡)邪魔なんよ(｡･ˇ_ˇ･｡)マンションの入り口にゃ溜まってるし
友達が乗って来た自転車も住人でも無いのにﾜｼｬﾜｼｬｰって駐輪場に置いてて
物理的に邪魔なんよ(｡･ˇ_ˇ･｡)管理会社に伝えても何の効果も無かったし。
なので、ある日ついつい言っちゃったよねぇ…
ﾁｬﾘﾁｬﾘと仕事から帰宅して、マンションの入り口付近で一言「邪魔」と。
そして、駐輪場の方を見てアゴをｸｲｯとして「あっちも邪魔」と。
だって邪魔なもんは邪魔やねん…
「あっ…あっ…………」って、あんたらはオットセイかカオナシか(｡･ˇ_ˇ･｡)
ただ、それ以降も相変わらず日が暮れても、入り口付近でたむろはしてて。
だけど、しれっとお子に「最近、下の子達何か言って来る？」と聞くと
「なんか知らんけど、最近大人しい(*ﾟ▽ﾟ*)こっち見てｺｿｺｿは言ってるけど
直接は何も言うてけーへん(*ﾟ▽ﾟ*)」との事なので良しとしましょう。
息子よ…世の中には知らない方がいい事もあるんだよ。
そして、さら子が帰宅した時も、兄弟以外の友達はﾍｺｯと頭を下げる様に
なったし、自転車も駐輪場には止めずに、兄弟の部屋の脇に止める様に
なったので良しとしましょう。やれば出来るがな。
①名前の漢字を正しく読めない
⇒学年が違うので持ち物や体操服のゼッケンに書かれた漢字でしか名前を
知らない、兄弟に名前を聞かれた時お子は下の名前しか教えてない
②住所が正確
⇒同じマンションだから当然住所と部屋番号は知っている
③犯行の動機
⇒そりゃもう自分達の言動を棚に上げて、さら子の発言やお子の態度が
気に入らなかったんでしょうよ
④重要ポイント
⇒デリヘルの車が止まるのも、おねーさんが降りて敷地内に入るのも窓から
丸見えな位置に彼らの部屋がある
兄弟達も中学を卒業してるので、行動範囲も広がって夜は最寄り駅付近で
遊ぶ様になったり、バイトしたりしてたかもですしね。
最寄り駅付近の電柱やらそこかしこには宅配おねーさんのビラいっぱい
貼られてますし。年頃的にビラを手にしてｷｬｯｷｬする世代ですし。
偶然、携帯拾ってこれなら絶対にバレっこない！と思ったんでしょうけど。
そして、さら子が怖がるか、お子が濡れ衣を着せられさら子に大目玉でも
食らうと思ったんでしょうけど…親子で楽しく捜査会議してました。
実際、怖がったのは陰キャの運転手とおねーさんでした。すみません。
それから、何日か経ったある日、帰宅した時にマンション入り口付近で
原付バイクをいじってる少年たちに遭遇しました。
駐輪場に自転車を止め…普段通り、彼らには目もくれず3階の自宅に向かうと
見せかけ、サッと身を隠すさら子。
そして聞こえて来るのは、彼らの小声でｸｯｸｯｸみたいな楽しそうな話し声。
さら子は踵を返し、ｶﾂﾝｶﾂﾝと彼らに歩み寄り一言「名前、間違ってたで？」
普通…突然、訳の分からん事を言われたら「はぁ？」ってなりますやん？
なんなら「なんやねん？おばはん」とかも、ありっちゃありじゃん？
或いは「何言うてんねん？」な空気を存分に出して、こっち見るとか？
だけど彼ら…ﾋﾟﾀｯと動きが止まって…「だるまさんが転んだ」状態。
そして、みんな俯いて顔を上げようともしない…
えっ？何っ？何っ？さら子と目が合ったら石化すると思われてる？
仕方ないから「絶対バレへんと思ったんやろうけど、バレてんねん」と
再びさら子の方から口を開いたのに、まだ「だるまさんが転んだ」よ！！
「あの後、警察来たん知ってる？見てた？」と言うと、やっとこさ小声で
「いや…それは…見てないっす…」と。
相変わらず、さら子はメドゥーサ扱いされてるみたいで俯いたままの少年。
「次…何かやったらどうなるか分かってるやんな？」「ﾊｲ…………」
俯いたまま小声でお返事されちゃったわ。
さら子、打っても響かない太鼓は嫌いなのよ(｡･ˇ_ˇ･｡)つまんないっ(｡･ˇ_ˇ･｡)
仕方ないから、水を打ったような静けさの中、さら子は彼らに背を向けて
階段に向かって二歩、三歩と歩を進めたわよ(｡･ˇ_ˇ･｡)
そして、ｸﾙｯと振り返って言いました(｡･ˇ_ˇ･｡)
「ほんまに、次やったら知らんからな？それだけ、よー覚えときや…」
おかげ様でこれ以降は平穏無事な日々が戻ってまいりました。
人間って誰もが他人をうらやむ感情は持ってると思います。
ただ、それが純粋に「わぁ♡すてき♡いいね♡」で終わる人もいれば
その感情が妬み僻みに移行する人がいるのも事実です。
この兄弟は後者でした。
小学生の頃から、まるで検問かの如く定位置の入り口付近で、他の子達に
「それどうしたん？」「誰に買ってもらったん？」「どこ行ってたん？」
そんな風に聞かれたら、子ども達は普通に答えるじゃないですか。
だけど、その度にバカにされたり貶されりゃ、そりゃ遊びたくも無いし
距離を置きたくなるってもんよ。温和な子ばかりだったから、良かったけど
ジャイアンみたいな子なら「なんだとー(｡･ˇ_ˇ･｡)」ってなってるわよ。
「わぁ♡いいなぁ♡見せて♡」と言えば、みんな見せるし一緒に遊ぼ♡って
言える子達ばっかりだってのに。
いつの間にか、暗黙の了解でマンション内の子達は新しい何かをゲット
しても、決して話したり持って出たりする事も無く…
うちのお子なんざトイザらス行った時なんて「おかーさん！これおかーさんのバッグに入れて！見えへんようにして！」って言ってたし。
上階のお母さんだって、夏休みにプールに行くのに膨らました浮き輪を
お子さんに「これあかん！家から膨らましたらあかん！バレる！」って子供に言われたって聞かされたわよ。
何で、普通の小学生がそこまで気使わんとあかんねん…
マンション内の子達が全員、花輪くんとスネ夫だったらどうすんのよ。
妬んだり僻んだりして、悪態吐けてただけ恵まれてんのよっっ(｡･ˇ_ˇ･｡)
だけど。
そんな感情を引きずっていても、人間は幸せにはなれないのです。
積年の恨みを晴らす？晴らしたい？それも、最良の方法では無いのです。
時と場合と相手によっちゃ…「人を呪わば穴二つ」で、思っても無い恐怖を
味わう事になるのです。
兄弟達は…自分達が寂しく悲しい思いをして育ったのなら、自分達が親になった時は、同じ様な思いを子にはさせない様にしよう…
その思いで日々生きていけばいいのです。
さら子は何を言ってるんでしょう…お坊さんか何かでしょうか…
後…もっと頭を使いなさい。そして、人を見定める目を養いなさい。
3階のおばちゃんはな(｡･ˇ_ˇ･｡)？普通のおばちゃんやないんやっっ(｡･ˇ_ˇ･｡)
てか、まだ30代半ばやったんや(｡･ˇ_ˇ･｡)ﾊﾞﾊﾞｰ呼ばわりしたらどつき回すぞ。
長くなりましたが「謎の出前」のお話でした。
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