文の読み方についての雑感

感想文を書くための課題図書の読み方、受験現代文の問いに答えるための読み方がある。効率的にササッと読み、書き、問題を解くための読み方である。「キーワード」を追い、「しかし・だから・たしかに・たとえば・つまり・よって」などのディスコースマーカーに注意しつつ、文章を斜め読みする。受験生にとってはもはや職業病になっている。

自分がこのような特殊な読み方をしていることについては、むしろ受験が終わった後に特に顕著に体感できた。「受験のせいで視力も落ちたし、ふつうに読書してる時も変な読み方になった」とA君とよく話した。私はノイローゼ気味になっていて、一字一句を凝視しながら「俺はこの文を、この単語を"理解"できているのか?」と我に問いながら発狂しそうになったりもした。

その奇妙な病にとりつかれ、未だにそれが治ったのかどうか分からずにいる。

しかし、現在思うのは、趣味の読書において文章を「完璧に理解」する必要はないということだ。そして、「すばやく内容を把握」する必要もない。むしろ「完璧に、速く」読もうとする態度によって、かえって良い読書体験を損なう危険性がある。気に入った1文を何回も読み返してもいいし、そこで本を閉じてもいい。積極的に理解しようとしてもいいし理解できなければそれもいい。


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