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フランスアンティーク、ヴィクトリアンの黒ガラスボタン


この記事は2018年のブログ掲載ポストのリライトです。

喪服から流行した「黒」

19世紀のヨーロッパでジュエリーなどを中心に流行したカラー「黒」。
もともとは喪服からきているのはご存知でしょうか?
最愛の夫を亡くしたイギリスのヴィクトリア女王は何十年もの間喪服で過ごしていました。
その時にジェットのモーニングジュエリーを身に着けていたことから「黒」の流行が広がったと言われています。
※ジェット(JET:英)…日本では黒玉と呼ばれる樹木の化石を加工したもの。ジェ(JAIS:仏)

当時のイギリスでは身内に不幸があった際には喪服で過ごすことが義務付けられていました。
服喪期間は故人との関係によって細かに決まりがあり、夫を亡くした妻の喪服期間は1年ほどでした。
にもかかわらず長い年月を喪服で過ごしたと言われるヴィクトリア女王が新しい流行を生み出したわけなのです。
またその純愛ぶりは映画にもなっています。


オニキス、黒檀、そしてジェット

この流行により「黒い」ジュエリーがヨーロッパ中で作られるようになりました。
流行のきっかけとなったジェットは樹木の化石を材料として作られるものです。
このためなかなか数多く作ることが出来ず、黒い石であるオニキスや加工しやすい黒檀を材料にしたものも作られたそうです。

この時代のジェット製のものは今でも「ヴィクトリアンジェット」と呼ばれています。
シックな黒い輝きはアンティークジュエリーの中でも人気のカテゴリーです。


ジェットとフレンチジェット

ヴィクトリアンの流行の影響で、フランスでは黒ガラスを加工して多くのジュエリーが作られました。
ガラスと言えど、繊細な細工の輝きは宝石にも引けを取らない美しさ。
手に入れやすいのもあり、あっという間に人気が広まりました。
この細工された黒ガラスを「フレンチジェット」と呼んだりすることもあります。

ジェットと名がついているものの「フレンチジェット」はガラスです。
このややこしい名づけがしばしば混乱を引き起こす原因となったりするのですが…
黒いガラス製品がフランスでたくさん作られていたために、諸外国(特にイギリス)ではこのように呼ぶそうです。

ちなみにフランスでは普通はこのような呼び方はされていません。
ジェットは「ジェ(jais)」、黒ガラスは「黒ガラス(Verre noir)」と呼ばれています。
そのまんまです。


黒ガラスボタンがざくざく♡

さてさて、フランスで大流行した細工入りの黒ガラス。
とは言っても、宝石並みに美しい輝きを放つものには現代ではなかなか巡り合えないのですが…
時々ザクザクと手に入る場合もあるのが蚤の市の面白さ。

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ジュエリーではありませんが黒ガラスのボタンたちです。
ボタンは当時ジュエリーのような装飾の役割を果たしていたというのもうなずけるデザイン性。
小さなものにもびっしりと模様が入っています。
メタリックに輝いているのはラスターという銀などをガラスの表面に施した技法です。

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写真は実物大よりも拡大されていますが、もっともっと拡大してみたくなります。
仕入れ時に黒ガラスに紛れて、時折ジェットのボタンを手にすることもありますが、甲乙つけがたい美しさなので、個人的にはお手頃価格で手に入る黒ガラスが好きです♪


ヴィクトリアンとは…

ヴィクトリアンとはイギリスのヴィクトリア女王の在位期である1837-1901年です。
女王が喪服で過ごしたのは最愛の夫アルバートが亡くなった1861年以降、当時42歳でした。
ヴィクトリアン、と言っても前述の「黒」ばかりが流行していたわけではありません。
大きく膨らませたスカート、羽や花の飾りで盛られた帽子など、喪服とは対照的な華やかなファッションもまたヴィクトリアンの特徴です。

【おまけ ヴィクトリア女王の肖像画】

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by wikipedia

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