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04.職員室ってブラック企業だったんですか? 〜とある転職活動の例・後編〜

(写真は実家の保護猫「ふわ(♀1歳)」で記事とは関係ありません)

02.の記事(とある転職活動の例・前編)のラストは話がスポンと飛んだので、後半の続きあたりから、具体的に綴ろうと思う。

その前に予め断っておくと、ここまでの話・そして今後の話にも、ちょいちょいフェイクは混ぜる。嘘にならない程度に、多少削ったり、曖昧にしたり。
ともすると個人攻撃や特定の組織への攻撃につながかねない内容を含むかもしれないが、別にそういう意図はないからである。

なぜこんな記事を書いて(打って)いるのか、目的を聞かれたら、「そうせずにいられないから」としか答えようがないのだが、一応「現場はこんな感じだってことを知ってほしい」というのは、ある。
(知ってもらって、できればなんらかの形で、現場で戦っている元同僚たちを救ってやってほしい——という気持ちもまあ無きにしもあらずだが、まあ実際無理だろうし何人かは「そのまま沈んどけ」「てめーはもっと、もっっっと苦しめや」と思う人もいる)。
ま、知ってもらうことで、ノミやミジンコ規模で何かがうごいたりうごかなかったりするといいな、くらいの気持ちでやっていきたい。

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さて、冗談から始まった「転職したいな」が、漫画をきっかけに現実的な目標になった、ということを前半で書いた。ので、以下は具体的な流れ。

JUST2年前、2018年3月ごろには「ひとまず学校から抜け出せる仕事なら何でも…」と考えていた。なぜ抜け出したかったのか、詳しくは今後の記事で語る予定だが、大まかには
 ★何はともあれ長時間労働(平日:15時間、土日:8時間勤務が割と日常、当時の認識は「平日は忙しく仕事する日、休日はゆっくり仕事ができる日」)
 ★リポD+冷凍パスタやカップ麺+お菓子、の食生活(まあこれは単に個人の問題かもしれないが、作る時間も元気も残らず食に対する意欲は確実に減退していた)
 ★土日の夜に数人の保護者からかかってくるクレーム/相談電話(これは離島で担任になってから)
等々から逃れたかった、というのがまず挙げられる。

はじめのうちは、「アクセサリーパーツのお店の社員になれたら……日々キラキラしたものに囲まれていれば幸せだろうなぁ✨」とかも考えた。
しかし「本が好きで本屋に就職して、本の扱いの酷さに泣いた」という大学時代の友人の話(その後、彼女は図書館の非常勤職員になって救われたと言っていた)や、「花が好きで花屋に転職したけど、花を愛でる余裕なんかなくてしんどい」とかいう感じの話(現代文の授業で扱ったことのある小説・山本文緒「花のような人」など)とかもあることだし、まあ厳しいわな、と判断した。

2018年3月中頃から末にかけて、一応、各所に相談もした。

①親
「えー転職? できるの? ……でももしそうなったら、ばーちゃん(母方の祖母)には言えんわ。うちみたいな田舎じゃ、『身内から先生が出た』っていうのは一族の誇りだから」

②高校時代の恩師(ニート同然の頃に仕事のきっかけをくれた人)
「お前、正気か」

③神戸・三宮の占い師さん
「あまりにもリスクが大きい。今の環境で輝く方法を考えよう」

④福岡・天神の占い師さん
「やめときなさい。せっかく安定してるんだから」

⑤ラ・ポール整運鑑定所さん
「あなたの『天命』に沿うことであれば、職業が何であれ、うまくいくでしょう」

結局、⑤の言葉に背中を押されて今の会社にTELできたので、ここにはとても感謝している。
ちなみに占いは「当たるor当たらない」というより、「色々な人の、公には言えないような悩み相談に乗っている人の意見を聞きに行く」という感覚で、だいたい年に一、二度の旅行中にハシゴすることが多かった(転職後は行っていない)。
「親しくない第三者の意見」を聞きたいとき、後腐れなく悩みをフランクに聞いてほしいときにはけっこう頼りになるんじゃないかと思う。もちろん「合う・合わない」はかなりあるし、タダではないからサービス購入前の見定めは必要。

⑤で一通り話をした結果、「今持っているものを生かすためにも、やはり『教育』関係の仕事を探すべき」ということになった。

そこで4月ごろから、予備校や塾の採用募集もネットであれこれ見た。しかし(教員になる前の就活で河合塾とかも受けて落とされていたからわかるが)、予備校の社員になると「クラス担任」制度なんかもあるようだし、講師なら人気を得なければ淘汰されてしまう。場所が変わるだけで今とさほど変わらないかもしれない。

それじゃあ思い切って——と、それまで頭の片隅にはあったが「あんまり現実味ないな」と思っていた、教育関連の出版社の採用募集も見るようになった。

なぜ「現実味がない」のかというと、前述の新卒の時の就活で、第一志望:出版社目指して全滅した経験があるからだった。
リーマンショック後の就活で、友人は75社目の面接でやっと受かったりしていた頃である。「講談社」「集英社」など、商業出版の有名どころには早い段階で「お祈り」され、教科書会社も名を知っていたところを3社受け、そのうち1社は最終面接まで進んだものの結局祈られた。

そんな経験から「出版社は無理」という強い思い込みがあったのだが——教員2年目のある時のこと、職員室横の「教材室」で、20年以上前に出版された古いものだったが、他社のものとは一線を画すようなユニークな問題集を見つけた。気に入ってよくコピーをしてはちょいちょい授業で使っていて、

(※ちなみに、田舎の学校では出版社が販促のために送る「見本」の問題集はコピーして使い放題、が当たり前だった。先輩が皆そうしているもんだから何の疑問も抱くこともなかった。出版社側に回って、それはかなり迷惑な行為だと知ったが)

それで記憶に残っていた会社のHPをふと覗いてみたところ、「採用情報」のところに「中途採用募集」の文字が並んでいた。「塾講師経験者など歓迎」という内容も。

「詳細については、お電話ください(担当者名と電話番号)」としか書かれていなかったので、まあ、迷った。躾のなっていない女子ばかり集まった新クラスの経営に手を焼きながら、頭の片隅で1ヶ月ほど迷っていたと思う。
もう少し色々条件が書かれてれば具体的な検討ができるのになー、もうちょっと色々調べてからにしようかなーとか。
で、この辺で転職エージェントに登録したけど2日間でおさらばし(02.前編の記事参照)、どうやら自分の考えているイメージと一般的な「転職」は違うようだ、とか思ったり。

5月も終わりに近づき、もだもだしていたある休日の、午後から出勤予定で遅く起きた午前中、やっぱ誰かに相談してみよう、と例の占い師さんを思い出した。
「確か電話鑑定もやってたよな」と検索してみたら、その日の夜には予約が取れ、こちらの話はぼんやりと覚えてくれていた感じでスムーズに進んだ。志望先の企業名などを告げると、
「あなたが入れる可能性は大いにある。それに、社長は人間的にかなりの大物で、会社もこれから成長していきそうだし、いいんじゃない」
ほんまにー? と言いたくなるような鑑定結果だったが、まあこれくらい言ってもらわなければきっと勇気は出なかっただろう。

6月頭の高校総体期間、部活の遠征引率を終えて、その代休日であった6月5日。「この日しか、もう平日に電話できるようなチャンスはない」ということで、意を決して電話した。

「初めまして。現在〜〜〜県で教諭をしている者なのですが、御社の採用募集を拝見してお電話しました。ご担当の〜〜〜様をお願いします」

電話に出た若い女性は、ちょっと虚をつかれたふうで、少々お待ちください、と言った。しばらく待って、電話に出たのは年配の女性であった。
「今は教員をしているがもともと出版に興味があり、御社の本が好きで、採用募集を見て連絡した」
といったことを話すと、彼女は「残念ながら、採用担当の社長は今日は休みなのですが…」と断った後に、

「ところで、弊社の本でお好きなのって、どの本ですか?」

と、にこやかな声で質問してきた。
(きたぜ、第一関門!)と直感的に思った。

「あの、だいぶ古い本ですかね、〜〜〜で、ユニークな、著者の人柄が感じられるような語り口の……」
「ああ、〜〜〜先生のですね。わたくしが担当した本です」

(よっしゃ)と思った。

「社長は明日から来はりますから、履歴書をお送りくださいます?」

はい、近日中にお送りします! と元気に言って電話を切った。

5月に、エージェントのお姉さんに指示されて作成した職務経歴書のデータがあったし(そう考えればエージェントへの登録も無駄ではなかった)、その週末に休日出勤した際、図書室にて1学期に購入予定の本の一覧なぞをぽちぽちエクセルで作る(図書担当だったので)傍ら、履歴書も清書して送った。

週明け、社長から連絡があった。

面接は6月末の日曜日に決まった。

この時の校長は本当に今時珍しいくらい善良な管理職であったが。
実はこの時、学校としても初の取り組みになる、市役所や振興局とタイアップした地域学習(「総合学習の時間」を使って約1年かけて取り組んでたやつ)の担当者になっていたのだ。授業の合間にあっちこっち挨拶回りして資料作って、くそしんどかった。

そうそう、2019年春についに全教室にクーラーがつきやがったんだよ。それまでなかったんだよ

こんな風に呟いたけど、実際は九州豪雨的なアレで飛行機が欠航し、「余裕で京都に前日入りし、準備万端で面接に備えるぜ」の予定が、その日の最終便まで空港でキャンセル待ちした末にダメで、翌朝の高速船に飛び乗る→新幹線→タクシーで約束の時間30分遅れで到着、となったのであった(もちろん新幹線の中から電話かけて平謝りした)。

実はこの7月1日は期末考査1日目であったが、年次休暇を取った(普段の授業日だと授業コマのやりくりが面倒なので——他の教員に代わってもらった分は当然どこかで返ってくる。うっかり数日休みを取ろうものならその前後は死ぬ羽目になる——多くはテスト期間中に年休をとるのである)。もちろん担当のテストはしっかり仕上げてから行った。

作問ミスのないよう点検の上に重ねて点検! に時間をかけすぎて、それで豪雨をもたらす雨雲に引っかかってしまったのだが。もう一便早い飛行機なら、難なく京都に前日入りできていたはずであった。なんという皮肉。

ちなみにこの生地、まだフツーに部屋のどこかに眠っている。

——で、肝心の面接は、ゆるーい普段着風スタイルの社長と、出された麦茶を飲みつつお話しして、学校と出版の四方山話みたいな感じ。ここに書いているほどではないがちょいちょいぶっちゃけ話もしていたら、

「へえー、やっぱりすごいブラックなんだね。うちもホワイトとはとても言えないが(笑)」

と言われ、(ブラック……そうか、職員室ってブラック企業だったのか……)と、ハッとしたのであった。あちこちで言われてはいたが、実際に一般企業と職員室を並べて考えることって、あんまりなかったもんだから。
遅めのランチを奢ってもらって、面接は終わった。

実はこの後に、例の「どの本ですか」と訊いてきた人がどうにも納得しないというのでもう一度呼ばれたのだが(1回目の日は用事で欠席だったそうな。2回目には交通費全額出してくれた)、まあ面接自体はさらりとした感じで、秋には内定通知をもらったのであった。かなり長かったけどな!

一般的な「転職」イメージからするとだいぶイレギュラーな感じもするが、まあ1つの例ってことで。

面接の中で、新卒時に最終で落とされた会社の話をしたら「あなたの今の経歴なら、その会社だって欲しがると思う」と言ってもらえたし、その当時社内では「思ったよりデカい魚が釣れちゃった!」と話題にしてくれたらしいので、やはり自分がそれまで蓄積してきたものを活かせる場を見つけることが一番なのだろうと思う。

とはいえ万が一の時になったらまた別の船に飛び乗れるよう、今やってる仕事の技術も磨いていくつもりである。何せ、こんな時代だからねー。

長い駄文にお付き合いいただきありがとうございます。
次回「05.テストで採点ミスするから生理を止めた話」(予定)


読んでくださり、ありがとうございます。 実家の保護猫用リスト https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/25SP0BSNG5UMP?ref_=wl_share