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シリーズ「新型コロナ」その1:二週間という潜伏期間が意味するもの

新型コロナウィルスの潜伏期間について、厚生労働省の発表を見ると、次のようになっている。

「WHOの知見によれば、現時点で潜伏期間は1-14日(一般的には約5日)とされており、また、これまでのコロナウイルスの情報などから、未感染者については14日間にわたり健康状態を観察することが推奨されています。」


同じWHOの発表でも、1-12.5日(多くは5-6日)とする場合もあるようだ。いずれにしろ、かなりの個人差がある、ということらしい。
しかも、この新型コロナの大きな特徴として、無症状感染者も少なくない、ということが挙げられる。潜伏期間と無症状というファクターが掛け合わされると、どのような影響が出るか、ここでシミュレーションしてみたいと思う。
ポイントとなるのは、あるフェーズから次のフェーズにいくまでの日数に不確定要素があるため、そこが「変数」になる(条件によって日数が変動する)ということ。

フェーズ1:ある日、Aさんが感染する。しかしAさんは無症状感染者だった。
フェーズ2:同じ日(変数1)、AさんからBさんに感染する。
フェーズ3:12日後(変数2)、Bさんに微熱を伴う症状が出る。
フェーズ4:風邪かもしれないので、Bさんは4日間(変数3)自宅で様子を見る。しかし熱が下がらないので、翌日(変数4)近くの病院を受診する。
フェーズ5:担当医はコロナを疑い、さっそくPCR検査を申請する。PCR検査は、申請から結果報告まで、現状では3~4日(変数5)ですめば早い方だという。検査の結果、Bさんの陽性が判明。
フェーズ6:そこから、二週間前後遡ってのBさんの追跡調査が始まる。
フェーズ7:運よく、すぐに(変数6)Aさんが調査線上に浮上したため、本人に連絡をとって、すぐに検査を受けるよう伝える。
フェーズ8:即日(変数7)AさんがPCR検査を受け、翌日(変数8)陽性が判明。

無症状感染者であるAさんの感染から陽性発覚までの期間を、日数がかかる可能性がある段階でフェーズを分けると、ざっと8つぐらいのフェーズがあることがわかる。
変数を最短に設定したとすると・・・
変数1=AさんからBさんへの感染=ゼロ日
変数2=Bさんの潜伏期間=12日
変数3=Bさんの自宅待機=4日
変数4=Bさんが感染を疑い、医者にかかるまでの日数=1日
変数5=医者が検査申請を出して、結果が出るまでの日数=3日
変数6=Bさんの追跡調査でAさんにたどりつくまでの日数=ゼロ
変数7=Aさんの検査待ち日数=ゼロ(希望的観測)
変数8=Aさんの検査結果が出るまでの日数=1日(希望的観測)

これを合計すると、21日間になる。

〇変数1はゼロに設定したが、これには上限がない。
〇変数2にも大きな個人差がある。
〇変数6にも上限がない。この時点でAさんにたどりつける保証はない。
〇変数3、4、5、8は、あくまで現状を踏まえた設定で、今後工夫次第で短縮できる余地がある。
〇変数7、8も、希望的観測(最優先にしてくれるだろう)をもとに最低値に設定したが、実際には不確定要素が多い。

この間、Aさんは知らず知らずのうちにウィルスをまき散らし続けることになる。その期間は、現状では最低でも20日前後から、最悪無限大にまで及ぶわけだ。
AさんもBさんも無症状だったら、感染拡大のリスクは倍増する。
無症状感染者を特定できず、その感染経路を追えないということの恐ろしさは計り知れない。ちなみに、最近の統計では、一日の感染者数のうち、半数以上が感染経路を特定できない感染者であるらしい。これは、無症状感染者がまだまだたくさん潜伏している可能性を示唆している。
もうひとつ、検査の遅れがいかに感染拡大に直結してしまうか、ということも、このシミュレーションでよくわかるだろう。

これはあくまでひとつのシミュレーションで、フェーズや変数の設定の仕方はいろいろあるだろう。
ここで私が言いたいのは、この新型コロナウィルスの潜伏期間が二週間前後だったとしても、無症状感染者が心ならずも感染源となってしまう日数は、この潜伏期間内に収まるはずもないということだ。

したがって結論は、心ならずも感染源になることを避け、感染拡大を防ぐには、不特定多数の人との接触を極力避ける以外にはない、ということだろう。

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