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発達論で読み解く想像力の二面性

■この記事の要約

想像力はいわば「諸刃の剣」で、人を進化させもするし、気を狂わせもする。
「精神分裂症」のように病理的な退行現象を起こしている人と、超越的な段階に達した神秘思想の実践者が似通って見える場合があるが、もちろん両者はまったく異なる。
この両者の違いを発達論にてらして見ると、想像力の二面性が浮き彫りになる。
精神分裂症の患者が、自分の超越的直接体験について、とめどなくしゃべったり文章に書いたりする場合があるが、その内容を吟味すると、部分と全体、項目(メンバー)と類(クラス)を混同していたりする。
病理的退行現象と超越的状態が似通って見えるのは、何らかの障害により意識が下位レベルに退行し始めると、同時に上位領域(とくに微細領域)の諸側面の流入にさらされるからである。
発達の各段階のうち、「身体自我段階」と「心的-自我的段階」の出現時点は、とくに精神分裂症を引き起こしやすい。
身体自我段階で障害が発生すると、意識が身体に完全に根づくことができず、弱い身体イメージがその後の人格形成の基盤になってしまう。その状態で心的-自我的段階を迎えると、「偽りの自己」が生み出され、身体を「他者」と感じ、「心」を「自己」として体験する傾向が生じる。
それと同時に、思春期以降、微細レベルの自然な浮上が起きうるため、そこで精神分裂症を発症すると、「偽りの自己」によってのみ微細レベルを受け止めることになり、これが二重の悲劇を生む。
人は一般に、精神的外傷などの障害が発生し、人格形成が妨げられた時点の深層構造に退行することで、人格を再構築し「生き直す」ことになるが、この生き直しによって、何か「悟り」や「解脱」に似たようなことが起こるわけではない。
真に超越的な(微細領域の)段階に至った人の想像力的直接体験は、純粋に視覚的で、まったく言葉を使わないものであり、ユングの言う「元型」に近い。そのレベルから生じてくる限り、それらは現実のものであって、幻覚ではない。

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