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あんせむ
2024年4月22日 03:47
「ああクソ…こんなの終わらねえよ…」 山積みのファイルの隙間からスマホを探し出す。照明がほとんど落とされたオフィスに、ぼうっと明るい画面が浮かぶ。22時40分。今日も帰れないだろう。 大学を卒業し、就職して3年目。任される仕事も増えた。ここ最近は繁忙期で、彼女との時間はおろか、ろくな食事すらとれていない。それでも、大切な彼女のためと思ってなんとか毎日生きている。 「あ…」 俺は溜まっ
2024年5月3日 19:43
あれから一晩をオフィスで過ごし、次の日には家に帰ることができた。さらに翌日はちょうど休みだった。今週は保乃と出かけてみようかな。いや、絶対出かけよう。昨日感じた嫌な空気を払拭しておきたい。 「ただいま…」 「あー!おかえり〜!」 保乃はソファから立ち上がって、俺を出迎えに来てくれた。靴を脱ぐ俺に、「ん」と両手を広げて待っている。俺は靴を脱いで、保乃の胸に飛び込んだ。 「はぁ〜…」 保
2024年5月22日 16:52
「ちょっと〜!起きて〜!」 「ん……」 身体を揺すられめ目を覚ました。ほぼ同時にアラームが鳴り響き、俺はまだ開ききらない目で必死にそれを止めた。好きだったはずの曲なのに、変に血圧が上がる。 「あう……」 時計を見ると、出発予定の30分前。 「やべ…」 「もう、用意遅いんやからはよして!朝ごはんのパン置いてるから!」 「お、おう…」 俺は眠い目をこじ開けるように、上がった血圧の勢い
2024年8月20日 19:36
もうすぐ日付が変わる頃。俺は疲れた手首で鍵を回した。 今日は保乃には悪いことをした。今日は流石に寝てしまっているかもしれない。 「ただいまー…」 保乃から返事はない。…やっぱり寝てるか。俺はとりあえず手を洗って、部屋に入る。 「……保乃?」 保乃が薄暗いダイニングのテーブルに突っ伏していた。 「保乃」 もう一度呼びかけると、保乃は少し間を置いて顔を上げた。保乃の目は真っ赤だっ
2024年8月21日 19:41
「…じゃあ」 「うん」 玄関の鍵を閉め、俺たちは向かい合った。 「元気で…幸せになれよ」 「うん…お互いにやで?」 今の今までそばにいたのに、その笑顔が懐かしく感じる。 「…これ買い替えな、お揃いやん!も〜…」 保乃が俺のスーツケースを指差して言った。俺のは黒で、彼女のはピンク。ずっと前、2人で旅行に行く時に一緒に買ったんだっけ。 「ふっ、そうだな…はぁ〜、また出費だ