徒然駄文9.模型屋情報

ロボットアニメの多くは、スポンサーが発売する商品(玩具やプラモデル)の販売促進のための舞台装置である。

トランスフォーマーやガンダムはその最たるもので、新商品の発売に合わせて登場して活躍し、あっという間に登場しなくなって忘れられたり、酷い場合は他のキャラクターを撃墜して退場させてしまったり、壮絶な相打ちの翌週にあっさり色替えしただけの強化バージョンとして新商品となって再登場することもあったりのルール無用の残虐ファイトっぷりは、ロボットアニメの一つの側面であり、運命のようなものである。

ともあれ、アニメを見終わって近所のおもちゃ屋に行き、玩具メーカーから刻印を打たれた生贄が蝕に迷い込むかのようにして、夜光灯に群がってバチンバチン撃墜される蛾のようにして、他のダメーズ達たちとあーだこーだ言いながら新商品のプラモデルを買って帰り、なんなら一緒にタバコ吸ったり飲んで帰ったりするのが、昭和のおたくの営みというものであるとお釈迦様も言っていたと昨日ストロングゼロを飲んでいたらふと思った。

で、こういう楽しみをぶち壊すのが転売屋である。
今、おもちゃ屋でガンプラが買いづらくなっている。僕が住んでいるのは東京のすみっこのあたりだが、そんな場所にある隠れ家のようなおもちゃ屋ですら、スマホにリストを作って物色に来た不心得者が散見されるそうだ。転売屋は、ネットで定価よりも(というか実際の買値よりも)高く売れるであろうプラモデルやおもちゃを調べて買って回り、転売して利益を得る。転売屋は見つけ次第バラバラババンバーンにしてやらねば司馬宙がヘッドマスターになってしまうとキリスト様もおっしゃっていたと思うのだが、最近では、事前に買い手を見つけておいたり、インターネットなどで買い手を見つけてくる係と店を回って品物を買いあさってくる係が分担作業で転売をしていることもあるんだそうだ。まことにファックオフである。

おもちゃ屋だって、そんなに潤沢に商品を卸しているわけでもなければ、以前から売れ残り在庫を抱えるリスクを嫌ってプレミアムバンダイの受注生産を増やし始めたり、コロナ禍と生産ラインの関係で一般販売商品の生産数を更に絞っているバンダイなどのメーカーは、海外への出荷分の確保もあいまって更に市井のおもちゃ屋への出荷数を減らしてきている。この前のHGガンダムデスサイズなんか3つしか入ってこなかったって言ってたよ、もう。

コロナ禍の巣ごもり需要で品薄になるほど人気商品?になっているガンプラにしたって、町場の隠れ家のようなおもちゃ屋、小売店にしてみれば、「売れる時期」に「たくさん仕入れて」「たくさん売る」ことで初めて利益になるのである。

だから、いくら商品が人気で品薄になったって「店で売れなければ」利益にもならず、「ああ、お店で買えないのならネットで探すしかないか」なんて一般客に思われたら、「客離れ」という最悪の事態が発生する。ブームが去った後もダラダラと店を使い続けるお客様こそが神様なのだ。

夕方にロボットアニメがやっている時期は、ダメーズが集まってあーだこーだ無意味非生産反社会的な与太話に花を咲かせるのだが、そこでつながりができれば、常連客になり、その店で色んな商品を買う。マニアックなキットやニッチな商品、塗料や工具などの消耗品だってその店で買う。電動ガンの調整や相談だってしてくれるお店なので、僕もずいぶんと付き合いが広がった。そういうお店はかけがえが無い。

転売屋は、こうした「お店とお客との結び付き」を破壊する。
転売屋は、売れ筋の品物しか買っていかないし、店が潰れないように定期的に買い物もしない。別に「あの転売屋がいるから、またあの店に行ってみよう」なんて思わないでしょ?「あいつがいるからアクシズを落としてやろう」とは思うかもしれないけどさ。
転売屋だろうが常連客だろうが、限りある商品を買っていく客であることも、売上も変わりはないだろう。そう思うかもしれないが、例えば、アメコミの歴史を見てもわかる通り、投機目的・転売目的で品物を買い漁る連中が出てくると「市場が荒れ」てしまい、特定の人気シリーズや人気作品が終了しても商品を買い続け、次のブームが来たら更に買う、ような常連客が離れてしまうし、最悪、ファンやモデラーを辞めてしまうこともある。だから、転売屋を見かけたらニッパーで小さく切り分けなければならないとコーランにも書いてあるらしいとからしくないとか。

しまいにゃ、転売の指南をするトレーナーが有料で弟子をとっているような話まで聞く。本当に、コスモクリーナーと転売屋だけを見分けて爆撃するファンネルミサイルの完成が待たれる今日この頃なのだが、この不景気に、稼ぎ時に稼ぎ切れない、常連客をつけるべきタイミングで思うように集客できない個人経営のおもちゃ屋の歯がゆさや苦悩たるや、イデオンで逆切れして泣いているドバ・アジバのごとしである。

転売屋しか出てこないVガンダムがあればいいのにね。

で、その上更に面白くない話を聞く。
凄くよくできている劇場版『閃光のハサウェイ』なのだが、あんなに出来が良いのに、おもちゃ屋に関連商品も残っていなければ、新商品も出やしないのだ。これは、バンダイがクソカス野郎だから、ではなく、コロナ禍による公開延期の影響である。予定通りに公開されていれば、メッサーにせよ少し前に出ていたグスタフカールにしせよ、Fitchから再デビューしたかと思うような体系であれもっともっと売れていたはずなのである。実際、結構出来が良かったし。

方々のおもちゃ屋で高額のHGクスィー・ペーネロペーのセットは一瞬で姿を消し、バカでかい単品版も売れたそうな。とはいえ、他の商品だって発売されていれば売れていたはずなのである。映画館で『閃光のハサウェイ』に感動し、そのノリでおもちゃ屋や近くのデパートのおもちゃ売り場、模型売り場になだれ込んで買うのが楽しいんじゃんかー!マジでー!で、小売店もそういう需要をあてにしてんだってばよ。

折角出来が良かった『閃光のハサウェイ』も、関連キットが品薄・品数が少ないことでおもちゃ屋に恩恵をもたらさない。腐れ転売屋が高額キットを買い、そもそもガンプラの新商品なんかチェックをしない正常な人々は「発売されていること自体に気づかない」ので、売り場やお店ごと忘れられていくのは本屋と同じだ。だって、どうしても欲しいときはAmazonで買えばいいんだもん。勢いに任せて書いちゃうけど、ネットで買ったプラモは絶対に積むって孔子さまも言ってたらしいって男塾で見た奴がいるんだってよどっかに。

かつてガンダムセンチネルやG‐UNITのような、ホビージャパンやDMもとい電ホあたりの誌上展開していた企画には、「アニメや映画の販売促進企画(アニメ作品)不在の空白期間に売れる商品をつくるための企画」としての側面があって、アニメとプラモ、アニメとおもちゃは切っても切れない関係にあるし、それ自体は子供騙しなのだが、おたくにとっては「それ自体が愉しい時間」なのだ。あそびをクリエイトしてるのよバンダイさんは。

そういう企画すら途切れがちな昨今では、例えば、ガンダム00が前半後半の間に半年挟んだことで、誌上展開の外伝も含め(キット自体の出来も良かったんだけど)てどんだけエクシア売らせたんだとか、量産機(これも良キットが多かった)まで好調に売れるような事態を発生させたような手口が印象に残っているが、繰り返すが、それもこれも「踊らされていること自体が愉しかった」。

当然、アニメの楽しみ方はこれだけが正解というわけではないし、こんな大人になってはダメだ。

ともあれ、こういう「楽しい脇道」もあった方が、世の中生きていて幾分か救いがあるというもの。昭和生まれはこれを「オアシス」と言ったりする。そんなオアシスのような町場の小さいおもちゃ屋さんを、あんまりいじめんでくださいよ、バンダイをはじめとするメーカー様。そして、もうネットフリックスでもなんでもいいから、毎週末におもちゃ屋で関連商品を買えるようなタイアップ作品、ロボットアニメをいっぱい作って欲しいのだ。その為にも、別にダメ人間だからというだけではなく、僕らは今日も今日とておもちゃ屋でプラモやおもちゃを買うのだし、その利益は、作者やメーカーやお店のおっちゃん達にきちんと還元されて、ずっとずっと活動を続けてもらいたいのである。

さぁ、多々買いだ!

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