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【座談会】総合診療医のキャリアについてきいてみました

司会「本日は総合診療医のDIO先生、dan先生、総合診療科に興味のある医学生のヒラメ筋先生の3名をお招きし、総合診療医のキャリアというテーマでお話いただきます。それでは、まず自己紹介をお願いします。」

DIO先生「大学病院から診療所まで、さまざまな規模の病院で総合診療科として勤務してきました。」

dan先生「大学病院消化器内科で後期研修をした後、市中病院総合診療科で5年ほど働いていました。現在は在宅診療クリニックに勤務しています。」

ヒラメ筋先生「総合診療科に興味のある医学部5年生です。」

司会「テーマに入る前に、Antaa SlideではDIO先生が『総合内科と総合診療科の違い』を投稿されています。ぜひご興味ある方はチェックしてみてください。」

総合診療科に向いてる人は、幅広い興味を持って学ぶことができる人

司会「まず、みなさまが総合診療科を選んだ理由について教えてください。」

DIO先生「私は多くの患者さんの役に立てる科は、という視点から、高齢化社会で一番地域の役に立てると思った整形外科を志していました。しかし、実際にポリクリで実習した際、僕がやりたかったのは手術ではなく、整形外科の外来やリハビリ指導であることに気づいたのですよね。そこで元々興味もあり、一番多くの患者さんの役に立てると思った総合診療科の道に進むことにしました。」

dan先生「私は大学病院での働き方に限界を感じ、ご縁もあって市中病院の総合診療科にうつりました。元々、臨床推論や臓器にとらわれず幅広く診る考え方は、好きでもありましたね。正直、はじめから総合診療科を目指していた訳ではありません。」

ヒラメ筋先生「私は元々、子どもが好きで小児科医に憧れて医学部へ進学しました。しかし、医学を学ぶ中で、子どもだけではなく大人も診られようになりたいと思い、どちらも診ることができる総合診療科に興味を持つようになりました。」

司会「みなさま、はじめから総合診療科を目指していたわけではないのですね。次に、どのような人が総合診療科に向いてるか教えてください。」

DIO先生「興味の幅が広い人でしょうか。総合診療科は医学をかなり広義で捉えます。たとえば、看護学・人文学・心理学・行動科学・経済学・哲学といった他の分野にも興味を持って、狭義の医学とあわせて考えることがあります。」

dan先生「なんにでも興味をもって学べる人だと思います。他科にコンサルトしたときにカルテ上のやりとりだけではなく、自ら出向いて直に教えをこうと、大半の先生はとても親切に教えて下さりました。」

司会「みなさま共通して、幅広く興味を持てる人が総合診療科に向いているということですね。」

総合診療科は、患者を断らずに済むだけでなく、学びが自分の人生に役立つ

司会「では、総合診療科の魅力について教えてください。」

DIO先生「勉強した内容が自分の人生にダイレクトに役立つこと、そしてほとんどの患者さんを断らずに済むことだと思います。家庭医療学の中でも重要分野である行動科学には、アンガーマネジメントやチームビルディング、行動変容等が含まれますので、自分が生きていく中でもとても役に立ちました。」

dan先生「臓器を問わず幅広く診る姿勢や、臨床推論のノウハウがとても勉強になりました。総合診療科時代に学んだことが、在宅診療クリニックでの勤務にも活きていると思います。」

司会「勉強した内容が自分の人生に役立つことと、臨床推論のノウハウが身に付くことが、総合診療科の魅力なのですね。次に、総合診療医の働き方について教えてください。」

DIO先生「働き方はどこで働くかによって大きく変わってくると思います。大学病院は臨床に加えて教育などを請け負うことも多いですし、訪問診療・診療所は都会と田舎でもだいぶ変わります。」

dan先生「市中病院では、大学勤務時代と比較してオンオフのメリハリがつけられました。もちろん、勤務条件は病院によりけりだと思いますが。」

ヒラメ筋先生「働き方は地域の特性の影響も受けそうですね。私が以前、見学した病院では総合診療科が救急も請け負っていて忙しそうな印象を受けました。」

dan先生「私が勤めた病院では、日中の救急外来は総合診療科が担当していました。急性期病床における内科入院患者の8〜9割程度は総合診療科が担当しており、肺炎、心不全、髄膜炎、肝硬変、副腎不全、癌終末期など臓器問わず診ていました。」

司会「病院ごと、地域ごとに働き方は変わるようです。また病院によっては救急外来も総合診療科が請け負うケースがあるようですね。」

総合診療科のキャリアはホスピタリストと家庭医のグラデーション

司会「次に、総合診療科のキャリアについて教えてください。まず、専門医資格はとった方がよろしいのでしょうか?」

DIO先生「資格は現在の専門医のシステムだと、総合診療専門医を取得する流れになるでしょうか。その後、新家庭医療専門医を目指す場合や、内科のダブルボードみたいなのも最近はありますね。ただ、資格があるからといって大きく変わることはありません。」

dan先生「私が勤めた病院は資格の有無で扱いは変わりませんでした。」

司会「専門医資格は必ずしも必要ないということですね。総合診療科は総合内科との違いとして家庭医療学が含まれており、家庭医として活動されている方もいらっしゃいます。家庭医には向き不向きはあるのでしょうか?」

DIO先生「まず、総合診療の定義が曖昧なので以下の図を用いて説明します。」


Yokota Y, Watari T. Various perspectives of "General Medicine" in Japan-Respect for and cooperation with each other as the same "General Medicine Physicians". J Gen Fam Med. 2021 Nov 1;22(6):314-315. FIGURE1より引用

DIO先生「図を見ていただいたらわかるように、家庭医またはホスピタリストについてはグラデーションなので、どういう人に家庭医の方が向いているか、大きくは変わらないかと思います。実際に研修してみて、大病院の方が自分に合ってるなとか、クリニックのほうが合ってるな、などはあるかもしれませんね。」

ヒラメ筋先生「私は幅広く興味があって総合診療科を志望しており、目指す像はホスピタリストに近いとは思っていました。ただ、DIO先生のお話をうかがって、実際に働いてみたら家庭医の方に惹かれるかもしれないので、両方を経験してみようと思います。」

DIO先生「まさに、医学生のうちは基本的に病院しか経験しないので、どうしても図でいう右側寄りになりますよね。どちらもそれぞれの魅力があると思います。」

dan先生「学生の時にみている景色、研修医の時にみている景色、医師の年数を重ねていくうちにみえる景色、これらはずいぶんと変わっていきます。私自身、学生の時に描いたものとはだいぶ違うキャリアになりましたし、気がつけば在宅診療の世界でどっぷり図の左側のことをしています。いろいろ経験しながら、自分の適性や相性を考えることが大切だと思います。」

司会「今回のまとめとしては

  • 幅広く興味を持てる人が総合診療科に向いている。

  • 総合診療科は患者を断らずに済み、学びを自分の人生に役立てることができる。

  • 総合診療科はホスピタリストと家庭医のグラデーションであり、どちらもそれぞれの魅力がある。

といったところでしょうか。どれも大変参考になるお話ばかりでした。座談会はここまでとなります。みなさまありがとうございました。」

執筆:ヒラメ筋@医学生

【参考文献】
[1]Yokota Y, Watari T. Various perspectives of "General Medicine" in Japan-Respect for and cooperation with each other as the same "General Medicine Physicians". J Gen Fam Med. 2021 Nov 1;22(6):314-315.