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世代間格差がすごかった…!3世代でデジタルと医療について語り合ってみた。(前編)

司会「本日は、異なる世代の3名をお招きし、デジタルと医療というテーマでお話いただきます。まずは自己紹介をお願いします。」

若手救急医A(以下、若手)「私は救急と集中治療の専門医です。医学生のときにiPadが発表され、真っ先に飛びついたデジタル好きの30代です。」

麻酔科指導医B(以下、指導医)「麻酔科の指導医で手術麻酔をしています。オンコールにポケベルで呼び出されていた昭和人間ですが、デジタルガジェットが大好きです。」

医学生C(以下、医学生)「医学科4年生のCです。幼い頃からインターネットが身近で、小学6年生のときにはCSSに触れていました。現在、学業はiPadを用いた勉強が中心です。」

■若い世代ほどアプリを利用している

司会「みなさんは医療系アプリをどのように使っていますか?」

指導医「情報収集をウェブサイトから行うことが多く、m3などの情報サイトのアプリしか使ったことがありませんでした。最近は、Antaa Slideのように利用の敷居が低くて楽しいスライド共有サービスに出会うことができてよかったと感じています。」

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若手「私はPaperpileという論文管理アプリを頻繁に利用しています。定番のソフトよりも安価で動作が軽いです。Antaaのように気軽に学べるようなサービスの盛り上がりが顕著ですが、学術的な領域でも新しいサービスがどんどん出てきて欲しいです。」

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医学生「私は解剖学アトラス、医学辞典、Microsoft Office、クエスチョンバンクをよく使います。スマホとタブレットを同期させて、場面によってデバイスを使い分けています。特に最近はNotionというアプリにハマっています。」

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若手「Notionは気になっていました。自由度の高いメモアプリですよね。」

医学生「タスク管理やダイアリーなどを自由に作れるスタイリッシュなアプリです。カスタム方法を海外のユーチューバーから学んでいます。」

若手「学生はアプリをフル活用していますよね。この前、Antaa Slideを病院実習に役立てているのを見ました。」

司会「若い世代ほどアプリを使いこなしていますね。ベテラン世代はウェブサイトを好んでおり、アプリはこれから浸透していきそうだということですね。」

■医学生はポリクリに役立つアプリが欲しい。宣伝するならSNSでバズ狙い。

司会「今後、医療系アプリに何を求めますか?」

医学生「私はポリクリで使うことができるアプリがあったら便利だと思います。実臨床に即していて、医師目線から学生に求める最低限の知識がまとまっているものです。例えば、略語集がコンテンツにあればカンファレンスの内容が把握しやすくなります。」

若手「ポリクリに役立つアプリがあれば、学生のニーズを知れるので指導する側も助かります。」

指導医「医療系アプリを紙媒体やウェブサイトで宣伝すれば、指導医世代の人たちも認知しやすいと思います。私の年代はウェブサイトで検索することにかなり慣れています。例えばレストランを探すときに私はまずgoogle検索をするのですが、娘はInstagramを開きます。情報収集のやり方には年代差が大きいと感じます。」

医学生「InstagramやTikTokでは”バズる”ということが起きて、あっという間に情報が広がります。TikTokはジャンルを超えやすく、Instagramは共通の興味を持った人の間で広がりやすいという特徴があります。医療系アプリのコンテンツや宣伝において、SNSの特性を生かした運用をするといいのかもしれません。」

若手「ポリクリ用アプリのような医学生に役立つアプリができたら、SNSでのバズを狙って展開するとよさそうです。」

司会「医療系アプリに関連したInstagramやTikTokの運用はまだ一般的でなく、可能性を秘めていますね。」

■遠隔手術を受けて遠隔集中治療室に入る未来

司会「アプリに限らず、今後のデジタルと医療はどうなっていくでしょうか?」

指導医「デジタル化の加速は避けられないと思います。通信速度の向上が著しく、仮想現実(VR)が日常的に活用され遠隔で手術をするようになると推測します。スマートグラスでカルテ情報にアクセスでき、患者の顔を認識してデータをすぐに表示するというSF映画のような光景を間近で見られるのが楽しみです。」

司会「遠隔手術はゲームの世界を思わせますね。幼少期からゲーマーだった人は内視鏡手術も上手なんだろうなと思います。」

若手「実は私の専門分野である集中治療領域では、すでに遠隔の集中治療室(tele ICU)のサービスが広がっているのです。集中治療医は本邦に2000人あまりしかおらず、専門医が在籍しないままICUの看板を掲げている病院もあります。そこに専門医が遠隔で介入していくのです。既に予後改善のデータも出始めています。」

指導医「興味深いです。遠隔手術をして遠隔ICUに入るという世界が来るかもしれませんね。地域間の医療格差の是正や、働き方改革というトレンドにも合っています。」

司会「今回のまとめとしては、
・情報収集のために若い世代ほどアプリを活用し、ベテラン世代はウェブサイトを利用することが多い。
ポリクリで役立つアプリのニーズが医学生にあるかもしれない。
・医療系サービスのSNS運用がまだまだ可能性を秘めている。
・通信技術の発展で、遠隔医療の加速度的な普及が予想される。
・ガジェット好きが集まった中でもデジタル技術の利用方法に世代間格差が感じられた。
というところでしょうか。次回は、病院実習や国家試験、理想の医師像について3世代で語り合っていきたいと思います。お楽しみに。」

後編はこちら

執筆:ゆっくり救急医