見出し画像

踊る救急医先生のスライドを学んで、患者の急変に備えよう!

何科の医師でも入院している患者を診ている限りは、患者の急変リスクがついて回ります。原病に関連した急速な状態悪化だけでなく、思いもよらない形で急変を経験した先生もいるはずです。

急変時対応を勉強したいという方は、心停止、ショック、敗血症を押さえることをおすすめします。Antaa Slideでは、SNSなどで医学教育系のインフルエンサー踊る救急医として活躍している三谷雄己先生が、この3病態についてわかりやすくまとめており、注目です。

今回は、三谷先生のスライドから急変時対応のエッセンスを勉強していきます。

心停止の診療は「胸骨圧迫」「心電図波形」の知識が役立つ

突然の心停止は主治医にとって最も動揺する急変のひとつです。心停止に直面すると、頭が真っ白になってしまうこともあるでしょう。心停止の診療には、

というスライドがおすすめです。

心停止の診療においてまず大切なのは心停止を認知し、直ちにに介入を行うこと。つまりすぐにBasic life supportを開始します。特に効果的な胸骨圧迫を学ぶことが重要です。

  • 胸骨の下半分を押す

  • 約5 cm押し、6 cmは超えない

  • 100〜120 /分の速さで押す

  • 圧迫解除を確実におこなう

  • 中断時間は10秒以内にとどめる

以上をおさえれば、質の高い胸骨圧迫をおこなえます。

また、胸骨圧迫と同じくらい大切なのは、心電図波形に応じて治療内容が変わることです。心室細動や無脈性心室頻拍の場合は電気的除細動の適応となりますので、心停止患者を見たらすぐに心電図波形をチェックするクセをつけましょう。

突然の心停止を目の前に尻込みしてしまっても、まずは効果的な胸骨圧迫と心電図波形について思い出せればよいということです。

ショックでは見て、聞いて、感じて、そしてエコーを手に取る

ショックは代表的な重症病態のひとつで、多くの医師が1度は診療したことがあると思います。ひと口にショックと言っても、ショックには複数の種類があり、鑑別が必要です。ショックの見分け方は、

というスライドがおすすめです。

まずは見て、聞いて、感じて、ショックを早期に認知するところからはじめます。

見る:モニター、表情、冷汗、蒼白、網状皮斑、チアノーゼ、
   出血、呼吸様式、不安・不穏
聞く:異常心音(III音、IV音、弁膜症)、患者・家族の訴え
感じる:脈拍数、脈の強さ、脈のリズム、末梢皮膚温、Capillary refill time

以上の点に注目し、上手にショックを認知しましょう。

そしてショックには以下の4種類があります。

  • 循環血液量減少性ショック

  • 心原性ショック

  • 閉塞性・拘束性ショック

  • 血液分布異常性ショック

これらの鑑別のためには、病歴や身体所見のほか、ベッドサイドでの超音波検査が有用です。ショックの鑑別のためにおこなう超音波検査は、RUSH(Rapid Ultrasound in Shock)が知られています。RUSHで検査する項目の例は、以下のとおりです。

  • 心嚢液

  • 左心室の収縮

  • 心室のサイズ

  • 胸腹水

  • 下大静脈、大動脈

  • 肺(気胸、肺水腫)

これらを手早くチェックすることで、ベッドサイドにいながらショックの分類に迫れます。

敗血症の診断・治療の方法は移り変わりが早い

敗血症は、全身に影響が出る重篤な感染症のひとつです。世界では3秒に1人が敗血症により命を落としています。

敗血症診療の特徴は、とにかくアップデートが早いことです。

に目を通して、最新の敗血症事情をキャッチアップしていきましょう。

これまで敗血症の診断には、SIRS(Systemic Inflammatory Response Syndrome)、quick SOFA(sepsis-related organ failure assessment)スコアが利用されてきました。しかし、これらのスコアの有用性に疑問が持たれ、現在では「SOFAスコアの2点以上の増加」のみが敗血症の診断基準です。

また、初期治療は以下を押さえましょう。

  • 早期の抗生剤投与

  • 低血圧、乳酸高値の場合に30mL/kgの晶質液投与

  • 昇圧薬は第一選択薬がノルアドレナリン、第二選択薬がバソプレシン

その他の治療もアップデートされており、以下に一例を紹介します。

  • 免疫グロブリンやビタミンCは投与しないのが、現在の国際的な方向性

  • ステロイドは高容量の昇圧薬が必要な場合に投与(ヒドロコルチゾン200 mg/日)

  • 血糖目標は144〜180 mg/dL

スライドは敗血症の治療に関して網羅的かつ簡潔にまとめられており、確認にも便利です。

どの病態でも早期認知が重要!気づかないと治せない

心停止、ショック、敗血症、いずれの病態においても共通して言えることは「認知が大切」ということです。重症患者の治療は、まずは早急に認識するところから始まります。

患者の急変はまれだからこそ、Antaa slideを使って気軽に知識をアップデートし、備えることが効果的です。少しでも重症患者の診療が心配だな…と感じた方は、踊る救急医先生の3つのスライドに目を通してみてくださいね。

ゆっくり救急医・筆