アンスケ

小説家を目指しているわけではありませんが、書く事で自分をリセットしています。人生は、ド…

アンスケ

小説家を目指しているわけではありませんが、書く事で自分をリセットしています。人生は、ドラマの連続。

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父からの手紙

 今年に入って、はじめての雪がちらつく寒い朝、静かに高潔に旅立った父。 ここ数日、二月にしては暖かい日が続いていたのに、その日の朝は、冷たい雪が降り始めていた。雪は、桜の花びらのように、私の凍えた頬に、その冷たさを感じさせることなく、ひらひらと舞い落ちる。ぼんやり立ち尽くす私の背中を、娘の温かい手が、そっと促すように車の運転席まで導いてくれる。私は、車のエンジンをかける前に、大きく深呼吸をしてから、父を乗せた互助センターのワゴン車の後に続いた。  前日までかすかに意識

    • 「猫の頭に叩頭三拝」     とある老女の一日

      昭和六十三年八月某日。 真夏といえど、早朝五時の、おもてはうす暗うて、道ゆくひとは新聞の配達屋さんと、牛乳の配達の人ぐらいしかいらっしゃいません。 私は毎日、このぐらいの時間に目を覚まし、着物を着て、お化粧をして身なりを整えます。それから、二十年前に亡くなった主人のご仏前にろうそくとお線香をたいて、孫や子供たち、そして皆さんが恙無く、今日も一日過ごせますようにと手を合わせることから一日が始まります。 四人いる子供たちが独立して、主人が亡くなり、それ以来ずっと一人で暮らして

      • 短編小説を載せていきます。

        はじめまして。 ここには、オリジナルの短編小説や、エッセイを載せていこうと思います。 ジャンルは、様々ですが、私の経験を元に創作したものです。 拙い文章ですが、思いが伝われば嬉しいです。

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