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gionへ行こう

阿佐ヶ谷。おじさんの家の近くに、とある喫茶店がある。

 

ネオンで「gion」と書いてある。

 

今や全席禁煙のカフェが多い中、ここは昨年までおおっぴらに喫煙可で、店の規模が小さいというのもあり、店内は煙の匂いで充満していた。夜は昼間よりひどかった。

去年(一昨年?)の夏くらいに、潔く、全席禁煙になった。それからは、かなり行くようになった。

 

ここはウェイトレスの制服がとてもかわいい。フリフリの前掛けとヘッドドレス、とまではいかないけど、黒のフロントボタンの白いブラウスに、黒のひざ下かもう少し長いスカートという組み合わせで、ブラウスの襟元には同じく黒い、やわらかいリボンがついている。袖口や襟には丸みがあって、女の子らしくてどこよりも一番かわいい。

 

もしこの制服が、ご主人の趣味だとしたらちょっと、洗練されすぎている。

 

それで、当の女の子たちはというと、ポニーテールをさげた子、茶髪のマッシュボブ、透け前髪のセミロング、など多種多様であり、やはりマスターの趣味なのだろうか、細く華奢な子が多い気がする。そして地下アイドルのような、にゃーんとした(?)やりとりが聞こえる。にゃんにゃん。ただ、接客はというと、そのときどきだが、少し、あやうい。

 

やや殺伐とした給仕である。

が、若い年ごろの女の子にブラウスで給仕されること自体が滅多にありつけない幸運であるので、この程度の塩対応で文句をつけるのはナンセンスなのである。

(しかしこれは正直、時間差・状況差・個人差が大きい。もちろん、やさしいことばをかけてくれたり、笑顔で注文を聞いてくれたりもする。)

 

おすすめのメニューは、生クリーム入りティー、バナナジュース。チーズケーキ。ナポリタンである。

生クリーム入りティーは、コーヒーが飲めない私にとって、カフェラテやウィンナーコーヒーといった、生クリームをのせることができる飲み物が頼めないというジレンマを解消してくれる飲み物だ。熱さですぐに溶けてしまうが…他では味わうことのないすっきりとした生クリームだ。

また、ここのナポリタンは、例えるなら、ケチャップ味のかた焼きそばである。ピーマンと玉ねぎ、マッシュルームはちゃんと入っている。付け合わせは、あらびき胡椒の効いたたまごサラダ。塩分少なめでいい。それからきざみキャベツとレタスのサラダ。ドレッシングはおいしい。でも量が多い。いつもサラダ少なめと注文するが、全然減ってない。むしろたまごサラダが少なめになっている気がしてならない。量が全体的にすごく多い。お腹いっぱい。タバスコの空瓶が置かれて、いつの間にかそっと満タンのタバスコにすり替えられている。なんだか、文句ばっかりのようだけど(笑)、ひと月に一回は食べている気がするくらい、好きである。たまに、少し欠けた皿に載って出てくる。この皿が好きである。北極(?)の模様で縁取られているのだ。白くま。

たくさんの、目をひくインテリアで飾られた店内。ブランコ席なんていうのも一つある。でもカウンター席。人がせわしく動き回る音や、食器の当たる音。人の声。音楽。それらを一番近くに感じる席。活動で満たされた空間の中で、子どものように、ゆっくりと食べるのが好き。

 

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