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51:火葬炉の「火」が入る音は聞きたい

斎場、火葬場の火葬炉に棺を入れると、すぐにその場から離れさせようとする所もありますが『ボッ、ゴーッ』という火の入った瞬間の音は聞きたいというよりも本来聞くべき『音』です。

火葬炉の前で『過呼吸になるのでは――、』と思うほど泣いたり、その場に立ってられないほどショックを受けたり、中には失神する家族もいますが、そんな人達がいたら多少待っても『火が入る音を聞かせます』

残酷な行為に見えるかもしれませんが、短時間で本人を立ち直らせる唯一の方法だからで、火葬炉の火が入る音を聞いた人は泣きわめいた人でも早ければ15分、遅くても30分で精神的に落ちつくからです。

これを教えてくれたのは2011年3月11日に発生した東日本大震災、家族を津波で亡くされた家族でした。多分11年経った2022年の今も海岸から海を眺めてる家族がおられるでしょう。結構い時間ボーッと海を眺めておられる方がいて『まさか、、自殺じゃねぇよな』との思いから声を掛けさせて貰いました。

「何をされてるのですか?」
「あの震災で家族が海に流されてしまったんですよ・・・」
「あー、そうだったのですか失礼しました」
「でもね、もしかしたら何処かの島に辿り着いてるかもしれないでしょ」
「そう思うと家でじっとしてられなくてね・・・」
「はぁ・・・・・」
「そんなこと無いって頭では分ってるけど心が受け入れてくれません」

つい先ほどまで元気だった家族が突然津波にさらわれて遺体もあがらず、生死も分らずなら無理もありません。頭では理解出来ても心が納得しないのも分るし、何処かの島に流されて生きてて欲しい・・・が生きてるかもしれないの表現になったのでしょう。初見の人ですが聞いてるだけで胸が痛みます。人は『死体を確認』しなければ受け入れるのは難しいようです。

病院、施設、自宅等で逝去した家族の死は確認出来てるのに過呼吸になるほど泣くのは受け入れが出来てないからです。そう考えると突然死の無い癌での逝去は受け入れる時間のある終幕、これに対しクモ膜下出血、脳溢血、心筋梗塞での突然死なら火葬炉の前で泣き叫ぶ信条も理解できます。

しかし死んだ人は還ってきませんし、残った家族はこれからも生きて行かねばなりませんから、どんなに愛してる人でも『死んだ現実を受け入れて貰う必要があります』それが火葬の「ボッ・ゴーッ」という音なのです。

人の死は悲しい時間が2回あります。
・1回目は心臓の鼓動が止まった瞬間です
・そして2回目は火葬炉の火が入った瞬間でこちらのほうが辛いようです。

辛そうな家族を見てると、その場から離れさせてあげたい気持ちは分りますが、それは親切ではなく現実を受け入れる事のできない迷路への一歩であり長い目で見ると残酷な行為でもあるのです。

商魂たくましく、故人の遺骨を固めてペンダントトップにしたり、指輪にする商売もあるようですが個人的にはすべきではないと思います。故人を忘れない事はとても大事で供養の基本です。がしかし故人に縛られてはいけません。亡くなった方はどうしても美化されがちで周囲の人達と故人と比較する傾向が強くなります。故人に執着し過ぎると家族や周囲だけでなく自分自身に対しても災いには成っても決して良いことはないからです。

好む好まざるに関わらず配偶者や家族の死は故人との卒業式です。故人との日常やエピソードなど様々な出来事を良き思い出とし、経験とし、教師や反面教師として、自身の糧として新たな人生へのスタートとすべきです。

最愛なる人と今生の別れがあって今の自分がいる――、今の自分があるのは貴方がいてくれてたからと、いつか故人に感謝の言葉を伝えられる人間になる一歩が、葬式であり、火葬の音を聞いた瞬間なのだと心得ておくのも人生に於いて転ばぬ先の杖になるかもしれません。

だからこそ大事なのは死後でなく存命中の過ごし方です。人生の終幕は相手とは限らず、自分が対象者になることもあります。毎日終幕を意識して生きる必要はありませんが、楽しい時は笑い合い、喧嘩しても引きずらず出来ればその日にうちに和解し、辛いこと、心残り、後悔を引きずらない日々を生きることです。

もし自分でも家族でも病気等で数年、数か月の余命と思うなら今できる事を無理の無い範囲で全てしておく事が『後悔』の文字をあなたの心から消してくれる唯一の方法だと知りましょう。

死んでから騒ぐ必要はありません。騒ぐなら生きてる時、これを読んだ瞬間から後悔を最小限にすべく日々を過ごされると良いでしょう。死後より生きてる時が大事――、これだけは間違いありません。

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参考資料(お時間のある時にでも読んでみてください)
あんしんサポート葬儀支援センター  
代表ブログ 葬儀支援ブログ「我想う」
家族の死後に後悔しない為の一冊

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