Spinout Playbook 日本語版(前編)

ANRI宮崎です。スタートアップの資金力やエコシステムの強さにおいて、現時点で米国が先行していると思っています。同じ英語圏のイギリスでも下記のようなものが最近ニュースにもなっており、言語による壁ではないと思っております。

大学から研究者がスピンアウトしてスタートアップを作る時に、各種の契約や株主構成を決める必要があり、後戻りできないものが沢山あります。弊社のnoteでも知財等での話を書いてはいますが、アメリカのFiftyYearsというアーリーステージVCがまとめた記事があったので、是非日本語でも読めるようにしたいと思って許可を頂き、翻訳しました。翻訳ver1として、ご容赦ください。(そして、翻訳しといてなんですが、是非原文でもお読みください)

A Guide to Spinning Out of Academia

原文:(https://fiftyyears.com/spinout)

イントロ
1. Spin Outすべきかどうか
2. 創業チームについて
3. 知的財産について
4. Tech Transferについて
5. Spin Outの準備について
6. 登記
7. ライセンスについて
8. ライセンス交渉について
最後に


イントロ

現在、アカデミアの研究室では気候危機・疾患・飢餓・接続性などの大きな社会課題の解決方法を日々研究者たちが考案しています。これらの科学技術を事業化・商業化することは、世界の大きな問題を解決する最速の手段の一つです。しかし残念ながら、大学からスタートアップに技術をSpin Outするプロセスは不透明であり、インパクトの大きい企業の数は限定的です。Fifty Yearsは、これまで何十の大学からのSpin Outを支援し、数百の創業科学者にアドバイスを提供してきました。Spin Outの重要な要素である「知的財産権の大学からの移転」の状況は良くなってきていますが、まだまだ完全に解決されているわけではありません。私たちは、TTO(Tech Transfer Office。日本でいうTLO)との交渉がすごく長引くために創業者達が疲れ果て、チームが勢いを失ったり、投資家も離れていくのを見てきました。TTOがスタートアップの資金調達を難しくする契約書の条項を入れることも見てきました。私たちは多くの異なった契約書の条項の組み合わせを見てきましたが、創業者はどのように理解すればいいのでしょうか?そこで、このSpin Out Playbookを作成し、Spin Outを考える創業科学者らがこのプロセスを理解するのを助けたいと思っています。

起業することは難しいことです。初期のスタートアップは、創業者らのエネルギーや実行スピードによって生死が分かれてしまいます。このPlaybookが創業者らのエネルギーを節約し、より迅速に進め、そして起こるミスを避けることができることを願っています。

このPlaybookは更新していくものとして考えています。TTO、VC、主要法律事務所によるご尽力もあり、大学からのライセンスのプロセスをより透明かつ合理的にしながら、関係者全員にとって交渉プロセスを良くするためです。しかしながら、将来の創業者らのために、経験に応じたアドバイスが提供される一つにまとまった優れた参考資料はまだありません。このPlaybookがその参照できる資料になることを願っています。コメントや改善案は是非spinout@50y.comにいつでもご連絡ください。

ここでは米国のSpin Outに対するものです。アドバイスの一部は海外の企業にも直接適用できない場合がもちろんあります。もし、既にSpin Outしている場合は、匿名のアンケートに記入して頂いて、創業者とTTOの交渉を平等なものににするためにお手伝いを頂きたいです。

1. Spin Outすべきかどうか

例えば、あなたはアカデミアにいて、科学の先端で働いてるとしましょう。何百万人もの人たちに良い影響を与えうるような驚くべき発見をしました。あなたはSpin Outすべきでしょうか?発明が非常に興味深い場合でも、それがプロダクトになるとは限りません。革命的な製品を思いついても、それに対する市場がない可能性もあります。また、プロダクトや市場はあるが、それが次の10年間をあなたがエネルギーを費やして興奮して駆け抜けたい会社ではない可能性もあります。

決める前に

1.自分自身に問いかけてください:この技術はアカデミアでより早く進化しますか?技術の進歩にとって必要な特別な設備やリソースがアカデミアの研究室には既にある(または、ここのみにある!)場合はそうでしょう。または、優れたグラントの支援があって効率的な進捗ができる場合もあるでしょう。

2.プロダクトを定義し、対象となる市場について説明してください : 顧客のニーズ(課題)、顧客のペルソナ、製品の販売や届ける方法、そして大まかでもいいので顧客が製品に支払う理由についても考えて欲しいと思っています。これらは時間の経過とともに変化しますが、これは有効的な思考の練習だと思います。私たちはSpin Outの起業家がプロダクトの代わりに"発明"を販売しようとしているのをよく見かけます。または、プロダクトがあっても、実際の市場がないものを売ろうとしているのもよく見ます。あなたの技術がどのような潜在的顧客に対してどのような問題を解決するかを考えてみてください。「明らかに市場がある」、と安易に前提としないでください。価格、配送、価値の認識、使いやすさ・管理のしやすさ、製造可能性、サービス性、競争、規制環境の全てが関わってくるのです。

3.あなたの発明によって現在の方法よりも少なくとも10倍の改善ができますか? B2BまたはB2Cのどちらの場合にしろ、あなたの新しいプロダクトではなく、今使われている既存のソリューションが幾つかあるものです。これらからのスイッチングコストを低く見積もらないでください。例えば、実際スイッチングコスト、新商品(スタートアップとの仕事も)使用に対する認識リスク、現在のやり方への習慣または感情による親和性等があります。これらのスイッチングコストのため、多少の改善だけでは十分ではありません。あなたが売る準備をしている時間に、それらの小さなメリットを他の方法で提供される可能性があります。重要なのは、既存の方法するものより明らかに優れていることです。例えば、少なくとも10倍安い、速い、簡単、優れている、または理想的にはこれら全てが持っている等です。

4.潜在顧客とコミュニケーションをとりましょう。あなたは、顧客が望むもの、その理由、そして顧客がなぜ支払いたいかに関して仮説を持っています。あなたの仮説は間違っている可能性が高いです!実際の潜在顧客と話して仮説検証をしましょう。「がんの治療」のような明らかで必要な製品でも製薬会社に対する・医師に対する・消費者に直接的なマーケティングが必要です。顧客との会話をしているとき、あなたより前に彼ら自身が課題を先に話しましたか?彼らがすべきなのです!あなたの製品に関しては、次のようなことを理解することが重要です。解決しようとしている問題はどの程度ペインがありますか?顧客はあなたの解決策をどうやって知りますか?なぜあなたの商品を選んで代替品を選ばないのですか?どれだけ払うつもりですか?顧客と話している時に、あなたの提供価値や会社の説明を繰り返して特定の顧客に対してどのようなのが「刺さる」のかを是非確かめて見てください。

5.取り組む領域における企業や創業者について調べてください。なぜ成功したのか、どのように成功したのか?なぜ失敗したのか、どのように失敗したのか?彼らは顧客から何を学んだのですか?最も驚きだったことは何ですか?できるなら、あなたの領域における成功または失敗した創業者や実務者と直接話してみましょう。多くの学びは公に共有されず、メディアで正確に表されていません。あなたのアプローチが以前に試みられ、実現不可能だと証明されていることが分かるかもしれません。同じミスを繰り返さないことで多くの年数を短縮することができます。最後に、後にSpin Outする時に相談できるメンターがいることが非常に有り難くなると思います。

6.市場は大きいですか?大きな問題を解決することで大きな財政的な機会を作り出すことができますが、それはしなくてはいけないわけではありません。多くの医療機器企業が行うように、小さな市場に限定されることがあります。市場規模を知るために市場レポートは良いですが、ボトムアップで試算する方が優れています。例えば、「世界中にこれに対する~500のポテンシャルの企業顧客がいます。1年間に$500K使っていたら、年間収益$250Mを生み出すことができます。」これは非常に簡単な計算です。この規模の市場であなたのモチベーションは湧きますか? Spin Out するのにVC資金を獲得する必要がありますか?スタートアップを資金調達する方法はたくさんあります。早期のパートナーシップ収益、グラント、エンジェル投資家、ファミリーオフィスなど。 一般的に、VCからの資金は年間売上が$100M以上に至る道筋が見えているときのみに意味があるものになります。

7.あなたの副操縦士は誰ですか?スタートアップは人からなりますが、Spin Outは人と幾分かのIPによって出来ています。チームが最も重要な要素であるのは変わりません。研究を行った人達と起業したいですか?共同創業したいと考えられる友人がいますか?共同創業者をまだ募集する必要がありますか?これらはあなたがする最も重要な意思決定です。これに関する助言は後で紹介させてもらいます!

8.全ての共同創業者はアカデミアを離れる準備ができていますか?あなたは同時に多くのことをすることができると思うかもしれません。99%のケースでは、あなたはスタートアップの邪魔をしていることになります。最初はアカデミアの研究室から仕事することができます。無料のスペースやその他のリソースを活用することができますが、あなたのスタートアップを前進させる最速の方法である場合にのみアカデミアを活用しましょう。大多数のケースでは、アカデミアとしっかりと関係を切って、100%の時間と努力をスタートアップに費やすことが成功に欠かせません。

9.企業がもたらすインパクトは何ですか?全てがうまくいけば、世界はどのように変わるでしょうか?最も成功した創業者や彼らのチームは、自分たちが解決したい問題やより良い世界を共に創造するビジョンによって、毎日エネルギーに溢れています。これらで駆り立ててやっていきましょう!

これについて10年間働き続けることに興奮しますか?長い旅路ですので、興奮した気持ちを持てているべきです!

Spin Outの代替案
別の企業がTTOからの技術の買い取りやライセンスを受けることであなたの発明を商業化する可能性があります。あなたが発明者の一人である場合、TTOはライセンスの売上の一部をくれるでしょう。これは事業化の方法として現実的なように感じるかもしれませんが、ほとんどの技術はライセンスされません。TTOにはIPを宣伝するためのリソースが限られているためなのと、ほとんどのIPは仕事の早いチームでマーケティング可能なものにしないと価値がありません。さらに、大手企業は技術をライセンスして、ライセンスを保持するだけ保持して活用しないという防衛的な手法をとることがよくあります(薬のIPはここでの特別な例外です)。あなたの発明がもたらす広範なインパクトに関心がある場合は、自分自身で事業化することが望ましいです。

2. 創業チームについて

発明ではなく、チームがあなたの会社の最も重要な基盤です。初期リサーチにあなたが素晴らしくそして仕事が早いと思った人達と働けたのなら、彼らが共同創業者の有力な候補になります、1人で仕事を開始したならば、創業者一人で始めることになるかもしれません。

共同創業者が必要か?

いいえ、必要ではないですが助けになるのは間違いありません。あなたに活力を与えてくれる人、良いコミュニケーションがとれる人、ビジョンや価値観がアラインしている人、そして、会社経営に際する感情的な部分をシェアできる人は何にも代えがたいものです。そして、彼らが自分とは異なって補完しあえるスキル、知見、またはネットワークを持っているとすると大変素晴らしいことです。私たちがSpin Outのデータベース(皆さんも是非教えてください)では、最も一般的な構成は2人または3人の共同創業者チームです。

共同創業者を探す

共同創業者の仲違いはスタートアップが失敗するよくある理由であるため、技術的なスキルや仕事の速さの過去の実績や証拠と同様に、コミュニケーション能力やあなたとの相性の良さ(化学反応)でスクリーニングする必要があります。理想的には、長い間知っていて、時には他の会社や研究プロジェクト、Burningmanやそれに類似するもので一緒に働いたことがある人と共同創業者になるべきです。2番目に良いのは、スマートで働き者の友達から推薦された、友人らと実際に働いたことある人です。

Step 1:「理想」を定義する

スタートアップが成功するために重要なものを特定し、現在の共同創業者陣が持っているものと比較します。そして、理想的な候補者のペルソナを書きだします。

重視すべき領域:

補完的なスキルや経験。 あなたが必要とするスキルで誰が世界クラスですか? 理想の経験はどのようなものですか?彼/彼女らは以前にどの研究を行ってきましたか?彼/彼女らは以前に何を作ってきましたか? 彼/彼女らはどの会社で働いていましたか?これらは主に理想的な経験を特定することが主な目的ですが、理想の人がいたであろう会社、学校、研究所の名前を書き出してください。この作業により、自分らのネットワークにアプローチしやすくなり、実際に彼らを見つけることができるようになります!

不公平なメリット。誰が研究施設に無料のアクセス権を持っていて、あなたのスタートアップのリスクを軽減できますか? 誰が顧客との深い結びつきがあり、意味のある事業のトラクションを創出できますか? 採用したい人材に支持されているのは誰ですか?

個人の資質。あなたは共同創業者にどのような資質を求めますか?これらは、スキルや経験と同じくらい重要です。書き出してみてください。

ミッションの整合性。 あなたが解決したいことを解決することに執着しているのは誰ですか?あなたと同じ問題を気にしているのは誰ですか?

Step2:売り込みの準備

優秀な人材は、ほとんどの場合、幸せに働いていて、仕事を探しているわけではありません。会社の使命、エキサイティングな技術、そしてなぜあなたがこの仕事に最適なのか、売り込む準備をしましょう。

自分のストーリーを作成し、練習する。自分が何者なのか、自分の価値観とは何か、何が自分を突き動かしているのか、なぜこの会社が今一番やるべきことなのかを、3〜4分で説明できるようになりましょう。友人、同僚、昔の上司、家族などから、あなたのストーリーがいかに本物のように感じられるか、感想を聞いてみましょう。新しい候補者に会うたびに、自分自身のストーリーを先ずは共有し、その後初めてスタートアップについて話しましょう。

スタートアップのビジョンとミッション。あなたがやりたいこと、スタートアップのミッション、そして、あなたが成功した世界のビジョンを簡潔に説明できるようになりましょう。あなたの小さな小さな会社の壮大なビジョンを共有するのは奇妙に感じるかもしれませんが、共同創業者の候補であればそれに共鳴してくれるはずです。

Step3:自分のネットワークから共同創業者候補を探す

step1で作成した候補のペルソナを参考にします。

GmailやLinkedInの連絡先をすべて調べ、候補になる人を特定します。

"memory palace"という形で、人生のあらゆる局面を経験しながら、話をする相手を探します。"memory palace"の質問を実行する具体的な状況は例えば、カンファレンス、セミナー、大学内のサークル、オンラインコミュニティ等があります。

あなたが知っている中で最も印象的な人々に連絡して、あなたのアイデアとそれがどのようにあなたの自分のストーリー(Step2を参照)に関連しているかを共有し、話すべき人々を推薦して紹介してくれるよう依頼してください。"私にとって最高の共同創業者は誰ですか?"というのは難しい質問です。なので、代わりに、分野Xや属性(例えば、最もGritがある)で最も良い人、或いは話している知り合いが「是非一緒に働きたい」と思う人を紹介してもらいましょう。

転送しやすい電子メールを自分のネットワークに送ってお願いしましょう。何をお願いしているのか、短く、明確に依頼しましょう。依頼された側がそのままただ転送できるように簡単にしましょう。そうすれば、より多くの人の紹介に繋がるでしょう

Step 4:会って、そして一緒に仕事をする

実際に会ってみましょう。彼らのバックグラウンドと、彼らが自分のスタートアップに適しているかどうかを知りましょう。最高の会話は、スタートアップについて、そしてお互いについて、非常にエネルギー溢れる感情にさせます。そのような場合は、このリストにあるような「創業者の質問」に答えてもらうとよいでしょう。そして次のステップには、一緒に仕事をすることがどのようなものかを確認することです。プロトタイプを一緒に作ったり、グラント申請書を一緒に書いたり、他でも良いので役に立つ仕事を一緒にしてみると良いでしょう。ここで見たいのは、物事を迅速に進めるための、彼・彼女らの創造性と極めて高いオーナーシップです。彼らのことをよく知った上で、次のことを考えてみてください。

能力: 候補者らの専門性のバックグラウンドから、会社が成功するために必要なスキルに長けていることが伺えますか?その人の考え方が好きですか?新しい情報を素早く取り入れることができますか?成長マインドを持っていますか?

価値観: 彼らの価値観を理解していますか?あなたと同じ価値観を持っていますか?

脆弱性: 個人的な関係性をつくれていますか?あなたに過去の失敗談を気軽に話せますか?疑問を率直に打ち明けていますか?

コミュニケーション: コミュニケーションのミスがなく、あなたの考えをすぐに理解してくれますか?彼らは良い質問をしますか?協調性はありますか?他のメンバーらは候補者らの言っていることを理解していますか?批判的なフィードバックはしっかりと受けいれていますか?

エネルギー: あなたにエネルギーを与えてくれますか?素早く動いてくれますか?進捗を加速させてくれますか?一緒に仕事をすることが楽しいと想像できますか?

集中力とコミットメント: 会社を人生の中で最も重要なものの一つにできるような段階にあるでしょうか?会社はどうしても家族、趣味やその他の人生の目標との時間を奪い合うことになってしまいます。高リスクな株式と引き換えに、大幅な減収を余儀なくされているかもしれません。スタートアップの生活にコミットできるしょうか?

良さそうな方であれば、リファレンスに進みましょう。構造化されたフレームワーク(私たちは「Who」メソッドとしている)を使用してインタビューを実施し、個人的および仕事関係のレファレンス(私たちは7つ以上をお勧めします)を実施してみましょう。

Step 5: 関係性をストレステストする

このステップは賛否両論あるかもしれませんが、より「自然」にお互いを知ることができる年月を早めることができます。目的は、良くない環境下でも仲良くやっていけるかどうかを判断することです。もし二人がこの方法にしっかりと同意したのなら、1)二人とも非常に頑張る必要がある、2)身体的要求が高い、または身体にストレスがかかる、3)それが24時間以上続く、という状況や課題を見つけるとよいでしょう。こんなことをする時間が本当にあるのか」と思うかもしれませんが、創業者間の関係の破綻ほど、将来において時間を失うものはありませんから、やる価値はあると思っています。

例えばのアイデアとして:
- 極めて短時間でグラントを申請する。共同創業者候補の2人(2人以上いる場合は全員)が3~4日間の長時間労働(1日16時間以上)する必要があるようにする。
- 一緒に極限のバックパック旅行をしたり、数週間一緒に暮らすなどの強烈な体験を計画する。

50Yのポートフォリオからの例では実際にこのようなのがありました。2人の共同創業者候補がアートカーを作り、一緒にBurning Manに行きました。これは、様々な面で効果がありました。二人ともまだフルタイムの仕事をしていたので、全ての作業は仕事外の時間に行われました。作業自体も、激しい肉体労働と時間的なプレッシャーが伴うものです。そのため、将来の共同創業者が疲れているときや不快なときにどのように行動し、どのように意思決定と実行に臨むかを見ることができたのです。

Step 6: 出資比率の決定

一般的に、株式はフルタイムの共同創業者間で均等に分割されるべきです。もし、共同創業者に均等に分配する気がないのであれば、それは共同創業者の選び方を間違えている可能性があります。Y Combinatorは、共同創業者間の株式分配に関する素晴らしいアドバイスをしています。Y Combinatorは、不平等な株式分割の理由としてよく挙げられ、一般的に間違っているものをいくつか取り上げています。

  • "会社のアイデアは自分が考えた"

  • "自分が共同創業者より先にプロジェクトに着手した"

  • "数千ドルの資金を調達した後に共同創業者を呼び寄せた"

  • "会社の核となる技術を発明したのは自分だ"

スタートアップは、アイデアではなく、"実行"することが重要です。スタートアップにおけるほぼすべての価値は何年にも渡る実行によって生み出されます。技術的なリスク回避、組織作り、プロダクト作り、事業トラクションを生み出すなどの"実行"によるものです。1年目の貢献度が小さくても、価値の大部分が創造される2~10年目以降に、創業者の株式分割が大きく異なることを正当化することはできません。最後に、チームは長期的に不平等な資本配分を後悔する可能性があります。1年目に正当化されると感じた不均等な株式分割は、5年目には正当化されないでしょう。たとえ、今、あなたと共同創業者の関係がとても強いと感じても、不平等な持分比率は、特に、あなたが何かを成し遂げるために何度も徹夜をしている時に"怒り"につながる可能性があります。二人とも同じように長時間働いているのに、どちらかが時間ごとに多くの株式を所有しているとしたら、それがいかに不愉快なことであるかは容易に想像がつくでしょう。将来的に株式のバランスを調整するのは税務上でも非常に難しいことであり、最初にやっておく方が良いでしょう。

不平等な株式分割の合理的な説明とは?

まれに、不均等な株式分割が良い時もあります。これは、IPに大きく貢献した共同創業者がフルタイムで参加せず、アカデミアに留まる場合によく見られます(例えば、Principal Investigator)。彼/彼女らは通常、"Scientific co-founder"または"Academic co-founder"と呼ばれたりしています。Academic co-founderが得る株式はかなり少なく、全てのAcademic co-founderの株式シェアの合計は15%以下であるべきです。一般的に、academic co-founderは5%程度であり、パートタイムで非常に深く関与し続ける場合は10%まで許容される場合があります。重要なのは、この持分も4年以上のべスティングのスケジュールがあり、時間的コミットメント(週10時間など)やべスティングの為の事前に合意されたマイルストーンと紐づけることです。他の共同創業者はフルタイムで参加すべきであり、参加した場合のみ株式が持てるようにすべきです。

株式を不均等に分割するもう一つの稀な理由は、創業者の一人が資金面で会社を支援した場合です。例えば、創業者がスタートアップに10万ドルの自己資金を提供し(一般的には、自分たちの給与を支払うためだけではありません)、その投資を外部の投資家が会社を支援したであろう評価額でいくらかの追加普通株式に「転換」しているような場合です。この場合、投資に対してどれだけの追加株式を得るべきか、単純に計算すればよいのです。例えば、4Mドルの評価額で資金調達する数ヶ月前に、初期設備を購入するために50Kドルの資金を会社に入れたとします。この場合、$50k / $4m = 1.25%の追加となります。

それとは別に、投資家はフルタイムの共同創業者だけに意味のある株式を持たせたいと考えています。スタートアップの他でフルタイムの役割を担っているacademic or scientific co-founderは、「フルタイム」と同等の株式を得るべきではないと考えています。その株式は、起業の成否に日々貢献する他の誰かに与えられるべきものです。非フルタイムの創業者が5%から10%の株式を持つのは一般的であり、さらに下限側(5%)が会社にとって最も健全な状態です。10%を超えると問題になることも多いです。Academic co-founderやアドバイザーを含む全員は、雇用やその他の特定の日/週/月単位の貢献と連動した4年以上のベスティングのスケジュールを採用すべきです。

経験豊富なCEOを雇うべきでしょうか?

もし、あなたが会社を経営したいのであれば、絶対にやめたほうがいいです。あなたと同じように会社のことを考える素晴らしい人物を雇うことはできないでしょう。この段階で最適なCEOは、最初の研究を行った科学者の一人で、それを事業化することに情熱を燃やしている人です。一方で、特にすでに技術に貢献している場合は、共同創業者として迎え入れることもあります。経験よりも、ハングリー精神、学習能力、成長マインド、実行スピード、そしてしっかりとしたコミュニケーション能力を重視すべきです。CEOになるのは怖いかもしれませんが、良いニュースは、実際にやってみることで多くのことを学ぶチャンスがあることです。例えば、CEOは投資家(資金調達)、顧客(販売)、従業員(採用)に対して常にピッチを行うため、CEOのコミュニケーションスキルはかなり早く優れたものになる必要があります。

多くの科学者の創業者は、"しかし、私はCEOになる方法を知らない!"と思っています。心配しないでください。初めて創業する人が、創業時に優れたCEOになるために必要なスキル、経験、知識、ネットワークを持っていたことはありません。ジェフ・ベゾス、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグなど、史上最も成功した人たちを含めて、全員が初めて創業したCEOです。彼らは創業当時、偉大なCEOになる方法を知りませんでした。彼らはその過程で学び、あなたも学ぶことができるのです。

多くの創業者は、"経験豊富なCEOを雇うべきか?"と "経験豊富な経営陣を雇うべきか?"という質問を混同しています。会社が必要とするすべての業界経験、ノウハウ、直感は、幹部レベルでもたらすことができる。業界のベテランを説得してチームに参加させる能力(通常はシリーズA以降)が重要になり、創業者は情熱と技術的専門知識を、会社が必要とする経験で補うことができるのです。CEOを雇う必要はない。

MBAはどうでしょうか?

アクセラレーターの中には、「ビジネススキル」の不足を補うために、会ったばかりのMBAとすぐにチームを組むようにPh.D.取得者に迫るところもあります。長い付き合いや一緒に仕事をしたことのある人と一緒に会社を始める方がずっといいのです。少なくとも一人の創業者が、非科学的な部分の運営にワクワクし、その役割で成長することができれば、全員PhDの創業チームは完全にうまくいくと思っています。それに、ほとんどのMBAプログラムは、ずっと後のステージの企業に対するベスト・マネジメント・プラクティスを教えています。それも素晴らしく必要なことですが、アーリーステージのスタートアップにそのまま活用できるものではないです。

しかしながら、事業開発(BD)チームを構築するタイミングが訪れたら、BDアドバイザーや関連する業界経験者(例えば、あなたが販売する顧客に同様の製品を販売している業界で5年以上BDに従事していた等)を早期に採用することは良いアイデアかもしれません。業界のベテランがチームにいることは、潜在的なパートナーや投資家にとっても良いシグナルとなり、会社にとっても良いことです。

全体として、MBAを持っているからといって、その人と一緒に会社を始めないようにしましょう。また、その人を真の共同創業者と見なし、会社の浮き沈みを問わず何年も一緒に働けることを喜べないのであれば、その人をCEOにしないことです。

アカデミアを去るのに適したタイミングとは?

スタートアップを構築するために、できるだけ早く動くべきでしょう。もしそれが、大学の既存の研究室でリスクを減らす実験を行うことを意味するならば、そうしてください。しかし、ある時点で、あなたはアカデミアの外でより速く動くことになります。理由はいくつかあります。

集中すること: 大学のためのタスクに費やす時間とリソースは、あなたのスタートアップに費やされない時間とリソースです。

スペースと設備: ある時点では、技術のリスク回避のために、できるだけ速く移動するために必要な設備が整った自分のラボを設立する方が理にかなっています。大学の研究室は通常、そのようなスピードに対応できる設備がなく、また拡張するためのスペースもありません。

チーム: 大学の研究室ではチームを作ることはできません。

文化: ほとんどのアカデミックラボはアカデミアのペースで動いています。初期の頃は、できるだけ早く動きましょう。動きの遅い、意図的に焦点を絞らない環境の中で、そのような文化を築くことはほぼ不可能です。

顧客とパートナー: 商業化する価値のあるものがあれば、潜在的な顧客と話をしたいと思うものです。少人数のチームで仕事をする場合、多くのリスクがありますが、あなたがまだアカデミアの世界に片足を突っ込んでいることが明らかになれば、そのリスクはさらに高くなります。あなたがスタートアップにコミットする準備ができていないのに、なぜ誰かがあなたと一緒に仕事をするのでしょうか?

投資家: 顧客と同様の理由で、ほとんどの投資家は、あなたが彼らと話をするまでに大学を辞めていること、あるいは少なくともあなたがいつ辞めるのかについて明確な計画を持っていることを望んでいます。

私たちは、多くの創業者らはアカデミアを出たのが早すぎるよりも遅すぎたと言っているのを聞いています!

3. 知的財産について

発明は「自分のもの」のように思えるかもしれませんが、あなたは大学院生、ポスドク、またはスタッフの科学者として、大学で開発された知的財産に対するすべての権利を大学に譲渡する契約に署名した可能性が高いのです。発明を事業化したい場合は、大学と協力して、(1)特許を取得し、(2)ライセンスをする必要があるでしょう。

特許とは何ですか?

特許とは、特許の対象となるものを他者が製造、使用、販売、販売の申し出、または輸入することを阻止する権利です。米国政府は、特許を公開することと引き換えに、このような権利を特許者に提供します。これまでに公開された特許はすべて検索可能になっています。特許は、文章や図を使って発明を説明するセクションと、特許がカバーするものとしないものを正確に定義する「請求項」セクションの2つで構成されています。法的には、特許クレームのセクションの部分が最も重要な部分になります

特許には3つのタイプがあります。

  • Utility:プロセス、機械、製造、または物質組成を対象とします

  • Design - 製品のユニークなビジュアルの側面を対象とします

  • Plant -「発明または発見され、無性に繁殖した明確で新しい種類の植物」を対象とします

Utilityが初期のスピンアウト企業で最もよく使用される特許になるので、この特許に焦点を当てていきます。Utiltyは、20年間の権利保護がされ、20年間の期間はnon-provisional patentの最も早い出願日からカウントが始まります。

私の発明は特許になりますか?

あなたの発明は、以下の基準に適合する場合、特許性を有します。

  • 有用なもの:その発明が有用な目的をもっていること

  • 新規なもの:この発明を主張する既存の特許、公開文書、または発明の公での利用がないこと(あなたの発明に関連する既知の著作物は「先行技術」と呼ばれる)。

  • 非自明なもの:以前に使用または説明されたものとの十分な違いがあること。その発明の技術分野において通常の技能を有する者であれば、その変更を行うことが自明であるとは思わないこと。

情報開示は特許性に影響を与える

特許を申請する場合、発明の詳細を開示することに関するルールがあります。米国では、発明の公開(学会発表やbioRxivでの公開など)から1年以内に特許を申請することができます。「公開」とは、当業者であればその発明を再現できる程度の情報を共有することと定義されています。まれに、たった1度のツイートでもトラブルになることがあるのです。

誰かが発明を公開し、大学が最初の公開から1年以内に特許を申請していない場合は特許申請には遅すぎることになります。また、自分でも事前にリサーチしてください。大学によっては(スタンフォード大学の技術ライセンス室など)、12ヶ月が経過していなくても、公開された発明を特許化しない方針を持っているところもあるようです。

特許は有用か?

常に有用であるとは限りません。特許は2つのことをします。1)あなたの技術を使用したことで係争中の当事者から訴えられることを防ぎます、2)他の人があなたの技術を使用することを阻止します。戦略的に公開することで、その技術を(自分も含めて)誰でも自由に使えるようにすることを検討するシナリオもあります。なぜ、そんなことをすることも考えれるのでしょうか?(1):特許が出願されておらず、技術が公開されていれば、他人がその技術を使っていても訴えることはできません。(2):他人がその技術を使うことができない場合(例えば、その技術を使うためには、追加の知的財産や企業秘密が必要)、特許を持つことのビジネス上のメリットはないことになります。特許がない場合でも、大学があなたの研究に由来する営業秘密やその他の知的財産を所有している場合があり、したがって、あなたは大学から技術をライセンスする必要がある場合があります。

戦略的に特許の公開(基本的にIPをパブリックドメインに置くこと)が意味を持つ可能性のあるシナリオもあります。

  • ビジネスモデル自体が、技術が広範囲で使われていることに依存しており、その戦略的公開によって当該技術の自由に使うのが可能になる場合。

  • 競合他社が侵害特許を取得するのを迅速かつ速やかに防止できる場合。戦略的な公開では多くの場合、より多くの情報を共有できて、競合他社が侵害特許を開発する能力を排除することができます

特許侵害の検知の問題から、保護する権利が弱い特許もあります。例えば、幹細胞をT細胞に分化させるための新しい培地組成の特許を取得することを想像してみてください。その製法が最終的なT細胞製品に何の痕跡も残さないのであれば、他社の研究室に行って培地を化学的に分析しない限り、その特許を侵害しているかどうかを検知することは不可能です。特許を取得することで、あなたは組成を明らかにし(特許はすべて公開されます)、競合他社にあなたの技術についてより深い知識を与えることになります。その代わりに、この情報を企業秘密にしておくこともできます。ただし、大学側はこの情報を所有し、それに対する権利を主張する可能性はあります。

ビジネス上の利点がない場合、または特許に法的拘束力がない場合は、時間を節約して特許を取らないのも選択肢です。

技術がまだ完全に開発されていない場合はどうすればよいですか?

発明をまだ繰り返している段階であれば、Provisional Patentを申請して発明を保護することができます。その後、12ヶ月以内にProvisional Patentをnon-Provisional patentに変更することができます。技術が具体化すれば、その12ヶ月の間にprovisional patentに詳細項目を追加していくことができます。なぜprovisional patentを申請するのか?それは、provisional patentを申請した日が特許の優先日(つまり、誰が最初にこの特許を取得したのか)を決定するため、早ければ早いほどよいからです。

大学院やポスドクの研究以外で発明をした場合はどうなりますか?

これは州によって異なり、他の要因にも左右されます。例えば、CA、DE、IL、KS、MN、NC、WA州では、従業員(大学職員を含む)が自分の時間内に自分の資源だけを使って仕事をしている場合、IPを従業員に割り当てる法律があります(詳しくはこちら)。これらの州では、一般的、技術開発のために大学の資源(大学の無線LANのようなものを含む)を使ったことがなければ、大学はあなたのIPに対して何の権利も持ちません。

あなたが署名した発明譲渡契約書を直接参照することをお勧めします。Caltechの場合、「あなたがCaltechの設備や施設を使用せず、完全に自分の時間だけで発明をし、コンピュータ・ソフトウェアやその他の著作物を作成した場合、またCaltechの資金を使用しなかった場合、これらの発明、ソフトウェア、著作物の所有権はあなたにあります」と明記されています。大学があなたの知的財産に対して所有権を持っていないことが確かであれば、大学の技術移転事務所(TTO)に連絡して、大学が請求権を持たないという正式なレターを入手することができます。将来の投資家、買収者、その他の企業が、あなたがその技術を法的に自由に販売/ライセンスできることを知りたがっている場合に備えて、そのような証明があることは良いことです。

大学を卒業後、その技術に改良を加えた場合はどうなりますか?

あなたが退職して、大学の資源を全く使用していない場合、大学はその追加的な知的財産に対して権利を主張することはできません(改良した権利についての契約がないものと仮定して-下記参照)。あなたはそれらの改良を出願して完全に所有することも、企業秘密として保持することもできます。

すべての大学が学生、ポスドク、PIが作成したIPを所有するのですか?
いいえ。Waterlooのように、創業者に優しいことで有名な大学もあります。彼らの「創作者所有の」知的財産権の方針は、すべての知的財産の所有権を大学ではなく、発明者に認めています。つまり、誰でも自分が作った発明を自由に特許化することができるのです。しかしながら、Waterlooは事業化を担う部署の(WatCo)を通じて、技術移転に選択的に関与することもできます。発明者はIPを所有し続けるが、利益の25%と引き換えに、WatCoに代理で商品化する権利を譲渡することができる、という明確でシンプルな条件がウェブサイトに掲載されています。また、その他の条件等や費用等はなく、特許出願料や手続きにかかる費用はすべてWatCoが負担する。

4. Tech Transferについて

特許が有用であると自ら判断し、あなたの発明が大学による特許取得を必要とする場合、今度は大学の技術移転の部署、またはTTO(または、the Office of Technology Licensing等の他の名前で呼ばれることもあります)と一緒に仕事する必要があります。TTOは、大学のために特許を出願し、ライセンスし、起訴し、維持することを担っています。あなたは、1)あなたの発明を特許化し、2)それをあなたの新興企業にライセンスするために、TTOと協働することになります。このプロセスには、間違いなく入念な準備が必要です。

PIに相談することから始める

TTOにアプローチする前に、あなたの研究室を運営している教授(PI)に相談する必要があります。TTOは、特許を取るかどうか、誰にライセンスを与えるかといった判断について、PIに委ねることが多いのです。PIの賛同と支援は重要ですが、ここで一般的なアドバイスをすることは難しいです。多くの場合、特定のPI、PIらとあなたの関係、PIらの研究室の運営方法、PIらと大学やTTOとの関係などに依存します。スピンアウトを試みたあなたの研究室の他の創業者と話し、先輩の創業者らの最近の経験から学ぶべきでしょう。一般的なアドバイスとして、PIとの最初の会話では、事業化を望んでいること、会社のビジョン、そしてなぜ自分がそのようなことをするのに適した人物であるかを売り込むとよいでしょう。あなたの希望によっては、アドバイザーやScientific Co-founderになるよう依頼し、担ってもらうこと、株式、べスティングなどの面でそれがどのような意味を持つかを説明しましょう。PIがAbCelleraのCarl Hansenのようにアカデミックな仕事を離れるのでなければ、フルタイムの創業者よりかなり少ない株式持分であるべきです(これについては後で詳しく説明します)。

PIは、このニュースを聞いて盛り上がるかもしれませんし、技術の事業化について全く異なる計画(ベテランのCEOを迎える、大企業にライセンスするなど)を持っているかもしれません。発明者自身が起業するスタートアップに馴染みがない場合は、このモデルに詳しい別のPI、投資家、創業者に話を聞いてもらうとよいでしょう。Ginkgo Bioworks、Apeel Sciences、Dyno Therapeutics、Commonwealth Fusionなど、この方法で起業して大成功している会社の例を挙げましょう。

大学に特許を申請するよう通知する

TTOは、Invention Disclosure Forms(IDF)を通じて発明を通知してもらう。具体的な書式は、大学のTTOのホームページで確認することができます。TTOは、IDFをもとに、特許を取るかどうか、誰と特許を取るかを決定します。

IDFのために収集すべき重要なデータ

  • 発明の内容

  • 発明の新規性

  • その技術が解決する問題とその解決方法

  • 現在の技術に対する優位性

  • その発明が生まれた研究室のPI

  • 発明の着想日

  • 公開日(あれば)

  • 発明者の完全なリスト

最初のIDFを提出すると、TTOは最初のミーティングが設定されて、さらに詳しい情報を求めてきます。以下のような質問がよくありますので、説得力のある話ができるように準備しておきましょう。

  • その発明は何ですか?

  • その発明の新規性は?

  • その技術は、複数の潜在的な製品の開発に使用できますか?それはプラットフォーム技術か?

  • その発明が解決できる未解決のニーズや問題点は何か?

  • 商業的に展開されている競合技術/製品と比較した場合の発明の優位性は?

  • 発明の着想および/または開発に貢献したすべての人をリストアップしてください。

  • 各関係者の貢献の概要をお持ちですか?

  • その発明に関連するすべての草稿、原稿、プレゼンテーション、証拠を収集・提出しましたか?

  • TTOに発明開示を行う前に、公開してないですか?公開している場合は、公開した時の詳細(日付、プラットフォームなど)を教えてください。

  • このIPの計画があるか⇒この時にTTOにスピンアウトを検討していることを伝え、IPをライセンスしてもらえるようにしましょう。TTOはライセンス先を見つけるインセンティブがあり、大学関連のスタートアップへのライセンスを好むため、早期に共有することが有効です。

  • 次のステップは何ですか?POC取得や実験データの収集に必要なものは何ですか?どれくらいの時間がかかりますか?費用はどのくらいかかりますか?大学のリソースはさらに必要ですか?追加の特許は必要ですか?

  • この製品を市場に出すためのチームについて、現在どのようにお考えですか?

  • 潜在的な投資家や産業界の提携先候補から興味を持たれましたか?

大学側は、私の発明の特許出願を拒否することができますか?

はい、ありえます。こう考えるかもしれません。

  1. 特許にならない。ソフトウェアやビジネスの方法、アルゴリズムには、特許にならないものがあります。ここでできることはあまりありません。

  2. 特許を取る価値がない、あるいは広範な特許を取る価値がない。コスト意識の高いTTOは、この特定の特許から収益を上げることはまずないと判断するかもしれません。その場合、PIからTTOに特許を申請するように電話かけたり、商業可能性をより強く証明したり、IPの上に築きたいビジネスについてより詳細な説明をすれば、彼らの考えを変えることができるかもしれません。それでもTTOが特許出願を望まない稀な場合は、TTOに知的財産権を譲渡してもらい、あなたが個人的に特許出願をすることも可能です。TTOが同意するかどうかは、その発明に資金を提供したのが誰なのか(その人は自分で出願したいと思うかもしれません)によりますが、大学や研究資金提供者が興味を示さない場合、まれにTTOは発明者が個人的に特許を取得することに同意することがあります。

TTOが発明の特許出願を拒否した場合、発明者は知的財産を自分に譲渡し、自分で特許を取得できるようにすることを求めることができます。TTOは、知的財産を譲渡する前に、資金提供元から生じた知的財産に関するあらゆる義務を果たす必要があります。TTOが知的財産をあなたに譲渡したら、あなたはその成果物に対して特許を出願することができます。

(続きは後編で、、、)

ここまでで読んでいただきありがとうございます。ボリュームがあり大変だったかもしれませんが、学びも多いと思います。また時折読み返していただければ幸いです。

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