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研究開発型スタートアップの投資家:Bob Nelsenは新卒VC

ANRI

ANRI 宮崎です。
ARCHについて書いた前回の記事「米国を代表するVC ARCHに学ぶ研究開発型スタートアップへの投資哲学とイノベーション戦略とは?」に続き、ARCHの中のBob Nelsenに焦点を当ててご紹介したいと思います。彼がどう言った経緯でVCになってたのでしょうかキャリアとしてVCを考えている方の一助になればと思います。

Bob Nelsenは30社以上を1B$エグジットまで導いたARCHの敏腕投資家

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(出典:ARCH's Team)

ARCHの創業時からのメンバーであり、IlluminaJuno TherapeuticsVir BiotechnologyBeam TherapeuticsSana BiotechnologyGrailDenali TherapeuticsBluebird Bioなど挙げていくとキリがないくらいの投資実績を持っています。投資先も累計30件以上が1B$の会社となっており、Nelsen氏は多くの会社をIPO/M&Aに導いてきました。
直近でも、Sana BiotechnologyやNational Resilience等の超大型ファイナンスをリードしたことでも世間を賑やかしています。Sana Biotechnologyは2018年創業で、最初の資金調達で$700Mという巨額のファイナンスを実施しました。ARCH Venture PartnersFlagship Pioneeringが一緒にリード投資し、年金基金含めた機関投資家群によるシンジケーションが作られました。(Canada Pension Plan Investment BoardBaillie GiffordF-Prime CapitalAlaska Permanent Fund、the Public Sector Pension Investment BoardBezos ExpeditionsGVOmega FundsAltitude Life Science Ventures、etc.) 
そして、驚くべきことにその最初のファイナンスの公開から1年も経たずして、2021年上旬にNASDAQにIPO、時価総額$6.38Bにて$600M近くを集めました。

また、RESILIENCE社はCovid19で社会が揺れている最中創業されました。製薬企業の生産プロセス・サプライチェーンが遺伝子治療や細胞医薬等の昨今のモダリティの多様化に対応できていないという社会課題へのNelsen氏の強い危機感から生まれた会社です。2020年に創業し、すでに$800Mを調達を発表しています。RESILIENCEは今後数年以内には上場を果たすことが予想され、上場時に様々な情報が開示されるのを個人的には今から楽しみにしています。(つい先日も、他の細胞医薬のスタートアップへの投資を発表していました。)

サイエンスへの想い、強い好奇心、楽観的な性格が成功の秘訣

Nelsen氏はHPにも記載があるように、Disruptive(破壊的)な技術やサイエンスを好み、それを使って実社会の課題を解決したいという強い想いを持っています。彼が出演する幾つものpodcast等に収録されている彼のインタビューでも、何度もしきりにサイエンスの重要性を述べ、VCとしてリスクを取って課題解決を成し遂げたいと主張しています。Twitter等の発信の場でもストレートな物言い彼自身のキャラクターも表しているでしょう。

彼は大学や研究所等のアカデミアの研究者等とも頻繁に会話することからも、講演やイベントでもスーツをあえて着ずに登壇しています(スーツを着ていると、金の亡者的に思われるから?)。規制も多い堅めな業界であるライフサイエンス業界でも、他の面々と異なるオーラを感じさせます。また、技術に投資する者として、自分自身をn=1の実験サンプルとして扱うことも頻繁にあり、2017年時のForbesの記事によると、Liptor・Metformin・B Vitamin・Fishi oil・Vitamin Dに加え、彼個人の投資先であるElysium Healthの"Basis"というプロダクトも日常的に摂っていたそうです。

これまで何十年も科学者等の優秀な人達とサイエンスの事業化という彼にとっての天職とも言える仕事に取り組んできたNelsen氏は、サイエンスを使ってプロダクト作ったり・人を助けるということを引き続き行っていくと思います。サイエンスやバイオテックの進捗は一層目覚しく、健康維持や病気治癒だけに留まらず、人間の状態(老化・精神・パフォーマンス等)にも関連する分野も加速度的に面白くなっていくことをNelsen氏は非常に期待し楽しんでいます。

Nelsen氏は生まれつき強い好奇心の持ち主で常に楽観的です。この二つの特徴がシードVCには重要であると彼は言います。興味の赴くまま情報収集し、会社を立ち上げる彼ですが、本のようなGo-to Resourseは意外にも持たないそうです。パンデミック中に会社を立ち上るのにも、オンラインで情報収集をしていましたたが、一切の本を読んでいないというのは驚きです。シードステージは「リスクや問題が大きすぎて、悲観的すぎると朝起きることができなくなるだろう」と言い、楽観的でいることの大切さを強調します

Bob Nelsenは"新卒VC"

西海岸のワシントン州で生まれ育ったNelsen氏は、農場の手伝いで貯めたお金を元手に11歳から株式投資をしていました。母親から薦められたことがきっかけで始め、当初はWestinghouseのようなコンサバな銘柄から始めましたが投資を続けていくうちにリスクを取ることに慣れていきました。

VCキャリアへの直接的なきっかけはシカゴ大学のMBA時代(1986年)にWall Street Journalの記事を読んだことです。その記事でシカゴ大学が技術スタートアップを作っていること、そして年収40K$で人材を募集していることを知り連絡を取りました。その相手がDone Dealなどの本でも取り上げられているARCHの創業メンバーのSteve Lazarusでした。彼と話した結果、参画時はボランティア的で月給200$の格安な条件(交渉が下手だったのかもと本人も述べていますが)で仕事を開始しました。MBA後のキャリアとして、年収80K$以上のオファーを別の企業から貰っていましたが、自分がやりたいと思っていたことを今のキャリアでとして選択したと述べています。(当時、一人を除いて、全員に雇用条件が良いオファーを取れと言われたそうです)

しかし、本人としては正直なところ、投資銀行が何をしているのかよくわかっていなかったのと同じくらいVCのこともよくわかっていなかったそうですが、VCになりたいという強い気持ちを持っていました。現在のようにインターネットが普及しているような時代ではないのでVCについて知るために高価な本を読んで知識をつけていました。本を読み進めていくうちにKleiner PerkinsというVCがGenentechに投資をしたことを知り、"これはイケてる"と感じてすぐに行動をしたそうです。とりあえず、投資家のBrook Byersの電話番号に電話を35回以上掛け続けました。最終的には折返しをもらい、当時は明確なキャリアパスがなかったVCになる方法など様々な話をしてもらえたと語っています。
VCになってからの仕事としては、他のARCHのメンバーと同様にとにかくシカゴ大の教授陣と連絡をとり、技術の事業化等についてディスカッションすることでした。以前のARCHの記事で述べたように、2号ファンドでメンバーが各地に散らばった際に、Nelsen氏は生まれ育ったワシントン州のシアトルにオフィスを立ち上げました。シアトルには、ライフサイエンスやIT等の技術が存在していましたが、未だ未開であるという仮説に立脚した戦略だったそうです。実際に、VCファンドはかなり限られた数しか存在していなかったため、ワシントン大でシカゴ大で得た知見・経験・技術を応用する機会が多く存在していました。
彼にとっての最初のExitは、Everyday Learning (M&A)という算数・数学の教育系のスタートアップから始まっていますこの事業も大学の教授との対話から生まれたものです。80年代中盤だった当時に、シカゴ大学の教育学科と数学科との間でのコラボのプロジェクトが進行していました。教育学や数学から新しいシード技術が出てくるとは誰も思いもしていなかった中、米国の幼少期の算数教育を改善するような事業が産み出されました。夏のブートキャンプの算数教育のためのプロダクトでしたが、実際に米国の各地でこのプロダクトが欲しいというニーズが出てきていました。大学の内輪の組織内でやっていたものが手に負えなくなってきていた中で一人の教授が、ビジネススクールにいたNelsen氏に助けを乞うたのが始まりだったそうでです。このExitを皮切りにNelsen氏の投資快進撃が始まります

今回の記事では、Bob Nelsenが新卒VCとして投資を始めた当時のお話を紹介しました。次回は彼の投資の代名詞であるIlluminaについて深ぼっていきたいと思います。

【参考文献】




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