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是枝裕和【真実】

6・28  是枝監督の【真実】を見た。

あらすじ

世界中にその名を知られる、国民的大女優ファビエンヌが、自伝本「真実」を出版。海外で脚本家として活躍している娘のリュミール、テレビ俳優として人気の娘婿、そのふたりの娘シャルロット、ファビエンヌの現在のパートナーと元夫、彼女の公私にわたるすべてを把握する長年の秘書─。“出版祝い”を口実に、ファビエンヌを取り巻く“家族”が集まるが、全員の気がかりはただ一つ。「いったい彼女は何を綴ったのか?」
そしてこの自伝に綴られた<嘘>と、綴られなかった<真実>が、次第に母と娘の間に隠された、愛憎うず巻く心の影を露わにしていき―。

真実 公式サイトより

怪物、海街diaryに続き、是枝監督の作品を見るのはこれが3作品め。

共通しているなあ、と思ったのは、

まず、映し出される映像のコントラストが柔らかく、自然の映し出し方が丁寧だなあ。と。そして音楽が優しく美しく、作品を彩っている。ピアノが素敵。

また、私は演技には詳しくないが、俳優方の佇まいやセリフが自然体で、きっと撮影現場がリラックスした雰囲気なのかなあ、と感じたこと。

そして『怪物』では感じなかったものの、『海街diary』と『真実』ではご飯が、本当に美味しそう、!!!
料理を作るシーンと食べるシーンのカットを大切にしているのかなあ。
是枝監督は「舞妓さんちのまかないさん」も監督していると聞いて、納得。
原作は読んだことがあるのだが、まだ作品は見られていない(netflixの会員でないため)のだが、きっと是枝監督によって映し出される丁寧で美味しそうなご飯によって、登場人物たちの心がほぐされていくのだろうなあ。みたいなあ。

あとは、「親子関係」にフォーカスしているのだろうか。
普通の親子、といったステレオタイプに対するアンチテーゼのような作品だと感じた。

さて、『真実』にフォーカスした感想というと、

ファビエンヌを演じたのカトリーヌの演技が凄まじい。
映画の中で演じた役で、歳を取らない母親の前で、年老いた娘が会話をする、というところで、母親と話し始めた途端、どこかその眼差しが、「子供」となるのを感じて、鳥肌がたった。

あとは、ダンスシーンが素敵!役者の皆さんは踊りが身体化されていて、暖かくて素敵なシーンだった。
踊る文化、日本にももっとあればいいのになあ。
と、かれこえ10数年ダンスの端くれに触れているものとしては、そう思ってしまった。


この話は、ずっと「嘘」を中心に進んでゆくことで、「真実」を際立たせていく

ファビエンヌの自伝に描かれた嘘
映画の中の映画、そしてその中で娘が母につく「優しい」嘘
拗ねたり怒ったりすることで、本心に対して嘘をつくこと
リュミールがその娘に「私が女優になるのを見届けて欲しいから、宇宙船に乗って(歳を取らないで)欲しい」というセリフを言わせたこと。

ファビエンヌは若くて才能のあるマノンと、
ファビエンヌと並んで同時代の大女優のサラに嫉妬している。いや、というより恐ろしさを感じている。自分が負けて見えるのが恐ろしいから、拗ねているようにも感じた。

その感情を、最後に娘リュミールとの和解、というより女優としの嘘をやめ、母親としての真実をこぼしたことによって、乗り越え、前に進んでいく。

いがみ合っていた、うまく話すことができなかった2人が、結局他の誰でもないその2人の対話によって成熟していく。
あのラストは、私は娘のリュミールは母親としてのファビエンヌのことを完全に許したのではないように思ったが、「優しい嘘」が彼女にとっての答えだったのではないのか。

ファビエンヌ「鈍感な正直がもっとも人を傷つけるのよ」

もしかしたら、ファビエンヌは、自分なりの不器用な優しさとして、娘に嘘をつき、ほったらかすことで、
女優という自分の天職と、娘を最も傷つけない方法の間でどうにか悩んだ結果なのかもしれないな、とも感じた。


うーーん、素晴らしい作品の前で、私の読解力と、語彙力の薄さを感じてしまう。
もう一度、どこかのタイミングで見たら、全く違う感想を抱くような気もする。

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