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Google Patentsの機能改善と収録国拡張

1:Google Patentsの機能改善(表示・レイアウト面)


先日、Google Patentsで検索していたら「あれ?公報表示画面のレイアウトが変わっている」ことに気づきました。

EP0724444を例に確認してみると、

https://patents.google.com/patent/EP0724444B1/

まず、画面右側の書誌事項の欄が変更されていました。

対応特許・パテントファミリーについては、

Worldwide applications
1994 TW CA RO CN EP AT SK PL US HU DK JP CZ BR NZ WO DE DE ES DZ HR IL 1996 US FI NO BG 1997 GR 1998 LV US CY 1999 MX

のように掲載されており、権利消滅している国については取り消し線が国コードに付されています。

また審査経過情報・権利状況についても、

Application EP19940930701 events
1993-10-15
Priority to US13852093A
1994-10-11
Application filed by Merck and Co Inc
1996-08-07
Publication of EP0724444A1
1997-08-06
Publication of EP0724444B1
1997-08-06
Application granted
2004-05-07
First worldwide family litigation filed
2014-10-11
Anticipated expiration
2019-02-08
Application status is Expired - Lifetime

のような形で何年何月何日にどのようなイベントが行ったのか、を視覚的に把握しやすくなりました。

ちなみに

2004-05-07
First worldwide family litigation filed

をクリックいただくと、知財訴訟データベースDarts-IPのページへ遷移し、どの国・地域で訴訟が提起されているのか?またどのようなタイプ(ADMINISTRATIVE、JUDICIAL、ARBITRATION)なのかが表示されます。

2:Google Patentsの収録国拡張のポイント


もう1つのポイントが収録国拡張です。

もともとGoogle Patentsには日米欧中韓+PCTをはじめとする主要国については収録されていましたが、今回一気に105カ国までの収録国が増えました。

で実際に増えた国はどのような国か・・・というと、アジア(マレーシア、インド、インドネシア、ベトナム、タイなど)や中東(GCC、サウジアラビアなど)、アフリカ(OAPI、ARIPO、南アフリカ、エジプトなど)、中南米(ブラジルなど)など新興国が主です。

で気になる各国の収録状況ですが、ざっと要点をまとめると

・フルテキスト収録はなし
・収録期間も一部限定的な国が多い

の2点に集約されます。収録国が拡大されたので、結構期待していた点もあるのですが、現時点ではEspacenetと同じようにタイトル・要約ベースで新興国における特許出願を調べることになろうかと思います。

収録国の詳細については、Google Patentsの

https://patents.google.com/

トップページ「Search and read the full text of patents from around the world.」のリンクからご確認ください。

3:Google Patentsの調査実務への活用方法


それでは、今回の機能改善・収録国拡大を踏まえて、Google Patentsをどのように調査実務に使えばよいのか?という点について私見を述べていきたいと思います。

結論から言うと、機能改善・収録国拡大はあまり関係なく、

1)調査設計・分析設計段階での活用
2)「本検索」を行った後のモレ防止
3)新興国調査におけるデータベースの1つとして併用

の3つのアプローチになるかと考えています。

3-1)調査設計・分析設計段階での活用


Google Patentsは、J-PlatPatの論理式検索や、有料データベースのような検索式を作成することはできません。またキーワード検索を行っても、入力したキーワードだけではなく、類似キーワードについても勝手に拡張して検索します。

再現性がないと言えばそれまでですが、母集団を検討する段階、つまり調査設計・分析設計段階でテーマに関するキーワードを適当に入力して、関連する特許出願がないか確認する際に活用できます。

またあらかじめテーマに関連する先行特許番号がわかっている場合であれば、特許番号で検索して[Similar]検索をすれば、その把握している特許の類似特許を自動的に抽出することができます。

[Similar]は以下のページの右側、公報番号の下にあるΣ
https://patents.google.com/patent/EP0724444B1/

   ↓

[Similar]検索結果
https://patents.google.com/?q=~patent%2fEP0724444B1

3-2)「本検索」を行った後のモレ防止


無効資料調査や侵害防止調査・FTO(Freedom To Operate)などのように再現性が重視される調査=モレが極力ないようにしなければならない調査については、

ある検索式の母集団でヒットした公報の読込調査を終えた後に、無効資料調査であれば無効化対象特許、および無効資料調査や侵害防止調査・FTOの過程で抽出した公報番号について

・Find Prior Art
・Similar

機能を活用して、

a)上位にヒットした先行文献の内容チェック
b)調査結果に含まれているか否か確認
c)関連性高い
d)調査結果に追加

のようなフローでモレ防止に活用いただくと良いと思います。

3-3)新興国調査におけるデータベースの1つとして併用


本メルマガVol.122では「東南アジア(アセアン)の特許検索」というテーマで、ASEAN調査を行う際のデータベース等について紹介しました。

https://archives.mag2.com/0000194221/20190206062000000.html

東南アジアはじめ、新興国を調べる際のデータベースとしては

・各国特許庁データベース
・WIPO Patentscope
・有料データベース
・Google Patents

があります。Google Patentsは今回の収録国拡大で追加しました。

どのデータベースも収録情報(フルテキストなど)や収録期間に制約があったり、また検索機能の制約がありますので、複数のデータベースを併用することが必須となります。

Google Patentsだけで新興国における特許調査を完結させることはできませんが、他のデータベースと組み合わせる際の1つのオプションとして今後活用できると思います。

4:まとめ


「Google Patentsで検索したので特許調査は大丈夫です」と言い切るわけにはいきません。

従来のキーワード・特許分類ベースに形成した母集団について読み込んでいく特許調査の方法も重要ですが、Google Patentsが提供している[Find Prior Art]、[Similar]なども活用すれば、より作業を効率化できるかと思います。

ちなみに最後に1点。

こういう記事を書くと「Google Patentsの精度はどうなんでしょうか?」的なご質問をいただくことがあります。

本当の精度について私は分かりませんが、うまく活用できる部分については利用すれば良いと考えて日々使っています。

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