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【特許から見る】加齢臭・体臭対策テクノロジー

「知財情報を組織の力に🄬」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。

加齢臭が気になる年齢になってきました(現在43歳、来月44歳)。そんなところ、先週こんなニュースがありました。

「在宅勤務時の方が出社勤務時に比較して加齢臭と油臭が強くなる」とのことですが、私は基本的にオフィス出社なので大丈夫!とも言い切れないため、加齢臭(主に中年以降の男女にみられる特有の体臭の俗称)関連の国内特許を調べてみました。

何か良い製品・サービスが見つかるでしょうか?

1. 加齢臭・体臭関連の日本特許・実用新案

加齢臭・体臭関連の日本特許・実用新案は332件ありました(検索式は末尾の分析条件を参照)。

件数推移を見てみると、

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毎年10~20件前後でコンスタントに出願されていますが、2012年と2015年にピークが立っています。

後述するように2012年は大正製薬とアンテリオスが6件ずつ、2015年は石塚硝子が13件のまとまった出願を行っていることに起因します。

Googleトレンドで見ても、特に加齢臭・体臭への注目が急激に上昇しているわけではないため、私のような世の中のおじさんにとっては昔からの課題ということでしょう。

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2. 加齢臭・体臭関連出願の企業ランキング

さて、それではどんな企業が加齢臭・体臭関連特許・実用新案を出願しているのでしょうか?

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1位は、うーんマンダムのマンダム。2位が花王で、3位に石塚硝子となります。冒頭で加齢臭関連の調査結果を発表したロート製薬の名前も確認できます。

マンダムや石塚硝子は出願した特許・実用新案のほとんどを権利化していることが分かります。知財経費も限られているので、防衛出願というよりは自社製品を守るために出願したら権利化するというポリシーだと思います。

これら上位企業の件数推移も見ておきましょう。

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トップのマンダムは一時期出願していませんでしたが、上位企業の中では唯一コンスタントに出願しています。マンダムの加齢臭対策製品はルシードのニオイケア・デオグラントです。

2位の花王はリセッシュ除菌EXです。

ちなみに、リセッシュのウェブサイトを見てエイジング臭というキーワードも入れておけば良かったと気づきました。特許調査・分析母集団を作成する前に、まず関連製品・サービス情報を調べてキーワード・同義語を把握しておくことが必要ですね。

3位は石塚硝子ですが、なんでガラスメーカーが?と思いましたが、機能性マテリアル部門で消臭剤を手掛けていました。

以下のような出願を行っています。

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またロート製薬や2012年以降に断続的ですが特許出願を行っています。ロート製薬はデ・オウという製品でバッチリと加齢臭対策を謳っています。

出願規模が小さな会社で最近加齢臭・体臭関連出願を行っている企業を探すため、以下の出願ポジショニングマップを作成しました。

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横軸が累積件数、縦軸が2017年以降、つまり直近の出願比率(全出願のうち2017年以降に何%出願しているか?)です。

これを見ると、左上に資生堂やコニカミノルタといった大手企業の名前が確認できます。

資生堂は2021年3月に「ノネナールが肌ダメージを引き起こすことを発見 ― ノネナールに対するマスキング香料でダメージを抑制することに成功 ―」というプレスリリースを発表しています。

資生堂の加齢臭関連の情報を集めている中で、実は

加齢臭と命名したのは資生堂だったことが判明しました。命名はしたが、特にこれまで加齢臭・体臭関連特許を積極的に出願していなかったが、最近になって特許出願を始めた、ということでしょうか。

もう1社、コニカミノルタですが、最初「ノイズでもヒットしてしまったか。。。」と思っていたのですが、該当特許を見てみると、

WO2019/102660
【発明の名称】ニオイ検出装置及びプログラム
【要約】ニオイの種類を判別する。ニオイ検出装置は、ニオイに反応する特性が互いに異なる複数のニオイセンサーの出力値に基づいて、測定対象気体に含まれるニオイ成分(ノネナール、ジアセチル、イソ吉草酸等)とその濃度を特定し(ステップS7)、特定されたニオイ成分とその濃度に基づいて、ニオイの種類(加齢臭、ミドル脂臭、汗臭等)を判別し(ステップS8)、判別されたニオイの種類を出力する(ステップS11)。具体的には、複数のニオイセンサーの出力値から既に特定されているニオイ成分とその濃度に相当する値を減算し(ステップS10)、当該減算した結果に基づいて、測定対象気体に含まれるニオイ成分とその濃度を特定することを繰り返すことで、測定対象気体に含まれる複数のニオイ成分とその濃度を、順位を付けて特定する。
【請求項10】前記判別手段は、前記ニオイの種類として、加齢臭、ミドル脂臭、汗臭のうち少なくとも一つを判別する請求項1から9のいずれか一項に記載のニオイ検出装置。

ということで、バッチリ加齢臭・体臭関連出願でした。加齢臭・体臭対策ではなく、加齢臭・体臭といった匂い検知の出願ですが。

実は5感センサの中で、においセンサーや味センサーにも興味があるので、そのうちこのnoteでも取り上げたいと思います。

3. 加齢臭・体臭関連出願の技術分野

次に、加齢臭・体臭関連出願の技術分野について、特許分類である筆頭IPCサブクラスから見ていきましょう。

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件数が突出しているのが医薬・化粧品で、マンダムなどの出願がこれに該当します。食品・飲料や殺菌・消毒関連の他に、繊維やシャツ・下着などの衣服関連の対策技術も確認できます。

ちょっと変わり種が菓子ですが、クラシエフーズが

特開2018-138043
体内摂取用体臭改善剤、それを用いた飲食品及び体臭改善方法
【課題】体臭改善物質を含有し、該物質を体表面から放出させることにより体臭を改善する体内摂取用体臭改善剤、それを用いた飲食品及び体臭改善方法の提供。
【解決手段】ゲラニオール、テルピネン−4−オール、バニリン、リナロール、シトロネロール及びデカラクトンの芳香物質のうちの少なくとも一つを有効成分として含有するチューインガムであって、該芳香物質の体内総摂取量が0.1〜1000mg/回となるように該芳香物質を含有する芳香物質放出用チューインガム。ゲラニオール、テルピネン−4−オール、バニリン、リナロール、シトロネロール及びデカラクトンの芳香物質のうちの少なくとも一つを有効成分として含有するソフトキャンディであって、該芳香物質の体内総摂取量が0.1〜1000mg/回となるように該芳香物質を含有する芳香物質放出用ソフトキャンディ。

という特許を出願しています。カネボウフーズ時代に「オトコ香るガム」を販売して、2017年に再発売していますが、

この出願は 吐息、カラダ香る。「ふわりんか」 関連でしょうか。

最後に、上位企業の技術分野別出願状況を見ておきましょう。

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上位企業のほとんどは加齢臭・体臭対策としてA61Kの医薬・化粧品分野の出願を行っていますが、上述した石塚硝子や旭化成、大正製薬、シムライズなどは医薬・化粧品以外の食品や殺菌・消毒、繊維などで加齢臭・体臭対策を行おうとしています。

加齢臭・体臭対策として、デオドラントや殺菌・消毒剤を使うのもありますが、

のように旭化成の加齢臭対応の消臭枕カバーなども組み合わせて総合的に対処するのが良さそうですね。

分析条件

データベース:J-PlatPat
検索日:2021年10月1日
論理式:[加齢臭/TI+加齢臭/AB+加齢臭/CL]+[体臭,3N,(抑制+発生+組成物+成分+減少+改善+処置+予防+除去+防止+ケア+消臭+判定+検出+加齢+原因)/TI+体臭,3N,(抑制+発生+組成物+成分+減少+改善+処置+予防+除去+防止+ケア+消臭+判定+検出+加齢+原因)/AB+体臭,3N,(抑制+発生+組成物+成分+減少+改善+処置+予防+除去+防止+ケア+消臭+判定+検出+加齢+原因)/CL]
日付限定:2001年1月1日以降


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