午後のティー劇場 デビル紅茶VSエクソシスト
人気のない高台、筋肉質な男と豊満な胸の女が抱き合い、唇を奪い合う。
「そろそろいいだろ」
「そうね……ねぇ、紅茶まみれでやってみない?」
「すきにすればいいさ」
ペットボトルのふたを開け、頭から紅茶を被る。全身に紅茶がしたたり、濡れた服が透け、官能的なボディラインが露になる。そしてペットボトルを口につけた。
AAAAARGH!
彼女の唇にペットボトルがくっつき離れない。それどころから、残り少なかった紅茶が次々と溢れだし、大量の紅茶が胃に流れ込む。男は必死になり、引きはがそうとするが、ピクリとも動かず、紅茶は流れ続ける。
やがて彼女の目から血のように紅い紅茶が大量にあふれ絶命。ペットボトルが地面に落ちる。男は状況が理解できず、ただ茫然とした。だが倒れていたペットボトルは、独りでに起き上がり、男の口を目掛け、飛んで行った。
AAAAARGH!
──
恐怖に目を見開いた男女の目を閉じ、男は十字を切り祈った。「アーメン」彼はエクソシスト、マルコ鈴木。ヴァチカンから報せを受け、半信半疑で『悪魔の紅茶』について調べていたが、紅茶まみれの死体を見て、確信へと至った。
濡れた服を見る限り、そこまで時間は経っていない。マルコは慎重に悪魔へとつながる手がかりを探す。
「絶対に何かあるはずだ……」
独り言をいいながら、神経を尖らす。そして、空になった1リットルのペットボトルを見つける。何かの手掛かりになる、長年の勘からペットボトルに近づい……
AAAAARGH!
ペットボトルが口に目掛けて、飛翔!だがエクソシスト筋力により、両手で掴み取る。手の中でも力が入り続け、ジリジリと口元に近づく。このままでは紅茶溺死体になるのは時間の問題か。
決死の覚悟で片手を離す。ポケットにある聖水を取り出す。
「地獄へ帰れ!」
聖水を口に含み吹き掛ける。ホーリーブレス!数々の悪魔を打ち破ったマルコの得意技だ!だが大量の紅茶を吹き出し、聖水を跳ね返す!さらに口にもはまる!
もはや万事休すか。だがこちらに向かう人影あり!
「紅茶には紅茶だ!」
紅茶のように紅い瞳の男が何かを投げた。マルコが掴んだものは午後の紅茶レモンティー!無我夢中でレモンティーを悪魔に振りかけた!
AAAAARGH!
悪魔は口から離れ、地面に落ち暴れ出す。レモンの抗菌作用だ!
のたうち回る悪魔にトドメを刺すべく歩む。
「紅茶と和解せよ!」
踏みつぶす!ペットボトルが破裂!血のように紅い紅茶が辺りに散らばった。
マルコは激戦の疲れからか、その場にへたり込み、意識を失った。
──
鳥の鳴き声、遠くから差す光、マルコが意識を取り戻すと、戦慄の夜が明けようとしていた。紅い瞳の男を探したがいない。彼は幻覚だったのだろうか?だが手には午後の紅茶レモンティーが握られ、彼の存在を語る。
「アーメン」生き残れたことに感謝の祈りを捧げる。そして口にレモンティーを含む。口の中身広がる酸味とフルーティな香り、疲れた体によくしみわたる。活力を取り戻し、今回の出来事を報告すべく、マルコは教会へ向かった。
さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます