妖精憑き

「お疲れ様です。レジ入ります」

「レジはいいから、『妖精憑き』見てきてくれない?」

妖精憑き。独り言をいいながらBL本を買う男。BL本を買う男性は珍しくない、独り言を言ってる人も結構いる。だけど妖精憑きは、誰かと話してるような独り言だ。妖精と話してるんじゃない、という冗談からあだ名が決まった。
先輩は妖精憑きになにかと興味がある。断るほどでもないし、気付かれない位置から様子を伺う。

「この本買うの?」

「だって表紙がドエロだし」

会話のようだが、周りに誰もいない。ハンズフリーにも見えない。

「やっぱり恥ずかしいし」

「はずかし……

?……声が聞こえた?

「いやほら」

「そんなこというと風の力貸してあげない!」

「風の力?」

思わず声が出る。女の子の声が聞こえたが周りには……

「お前も聞こえるようになったみたいだな」

!……小人がいる……

「お前も今日から『妖精憑き』だぜ」

【続く】

さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます