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妖精と酔銃

「ぶっ殺せ!アニキの仇だ!」
「こんなんきいてねぇぞ!」

 ツバキは廃車を盾にし銃弾を防いでいた。
 借金代わりにウィッチが押し付けた仕事は、スクラップ置き場の浮浪者の追い出し。だが実際いたのは恨みを持つヤクザ。ハメられたか?と思ったがこんなことにアイツの益はない。それより瓦礫の上のハゲと手下5人に集中だ。
 ツバキは間合いをぬって撃ち返したがこのままではジリ貧であった。彼は懐から酒瓶を取り出した。少しためらったが一気に飲み干した。
 視界が歪み、銃声が遠ざかる。そして虚空に向かって叫んだ。

「シルフ!おるか!おるな!」
「妖精が助けるのは子供よ。大人が頼って恥ずかしくないの?」

 銃より小さな羽の生えた小人が飛んでいた。

「酔ってる間見えるから!俺子供!見える子供助ける!アンタの義務!」
「大声ださないでよ!いつも通り風でいいわね?」
「お願い!します!」

 ツバキは覚束ない足取りで身を乗り出した。一斉に銃弾が飛んだ。無数の銃声が響きわたる。だが不規則な千鳥足が狙いを外れさせた。しかしいくつかの弾丸は向かってきた。すると風が吹き紙一重で反れていった。

「ちゃんと歩きなさいよ!風が操りにくいじゃない!」
「うるせー!撃つ!サポート!」

 ツバキはよろめきながら銃を撃った。5人のヤクザに向かって5発。どれも狙いは完全に外れていた。だが弾は風に乗り曲線を描いた。5人のヤクザの眉間に穴があいた。

「俺スゴイ!」
「私のおかげよ!」

「ヘボどもめ!俺がぶっ殺してやる!」

 瓦礫の山にいるスキンへッドヤクザがカバーを外すとガトリング砲が現れた。

「なによ、アレ」
「弾が嵐みたいにでるやつ!初めて見た!ヤバイ!隠れる!」

 ツバキは近くの瓦礫に隠れようとした。

「私の風が嵐に負けると思ってるの?そんなわけないでしょ!つっこんで戦いなさいよ!」

 背中が風で押され、フラフラと前に出た。そこは回転音を唸らせるガトリング砲の射線だった。

【続く】

さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます