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読書記録:シダの扉ーめくるめく葉めくりの世界

著者・盛口満
発行・2012.02.25
ISBN978-4-89694-990-2

今まで関心を持てていなかったシダ植物。近くにシダ植物が好きな人はいたから,存在だけはまあまあ認識していた。では,どうして今になってシダの本を読もうと思ったのか。必要に迫られて,シダ植物について学ぶ機会を得たのである。情けないことに積極的な理由とは言えない。にも関わらず、シダ植物が楽しくなってきているのである。ところで,国立科学博物館では現在,特別展「植物」を開催している。大きなテーマに反せず,植物を様々な視点で見ることができた。私たちを含む動物が陸上に進出する前に,植物が果敢にも陸上に進出した。現在みられる植物の多くは,花を形成する被子植物である。ちょっと想像して欲しい。恐竜がいる時代,恐竜の周りにはどのような植物が描かれているだろうか。そこには花を咲かせる植物ではなく,もっと原始的な植物をイメージするのではないだろうか。植物はどのように陸上に進出し,進化してきたのだろうか。シダ植物の扉を開けてみたいと思う。

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2021.09.01.水
P.0-p.34
シダは見分けるのが難しく,同定することが容易ではない。名前がわからないと,そこで止まってしまう。沖縄の人の話から,ヤギを通して植物との関係を見ていると,同じ植物でも地域によって名前が異なるのだそう。異なっていることも興味深いが,とにもかくにも,名前があるのだ。学問の意味する分類ではなく,ヤギが食べるか食べないか,私たちが食べられるか食べられない,あるいは食べられなくはないか,という分類だっていい。線を引いたり,名前をつけることで,世界の解像度は上がる。
p.35-p.66
神々とシダ。シダってそんなに見つけやすいのかな。見つけにくいから、神々とつながるのかな。

2021.09.02.木
p.67-p.110
知識があると世界が楽しい。知識があると,なんでもない光景の中に,おもしろさを見出すことができる。前に「電柱鳥類学」という本を読んだ後には,上を向いて歩いていた。電柱の配置が気になったり,腕金の蓋が気になったり。電線に止まる鳥を探してみたり。副題に「めくるめく葉めくり」とあるように,シダを知ってしまったら,葉めくりをせずにはいられない。どこに行っても,シダが気になる。ということは,どこに行ってもおもしろさを見出せる。以前ホームセンターで購入したアジアンタムがシダだという認識がなかったことに恥ずかしくなりながらも,本を通してシダの扉に近づいていく。

2021.09.04.土
p.111-p.212
ハワイにはもともとアリがいないのか!確かに考えてみたら海洋島である。川上和人さんの本で小笠原諸島でどのように生物が根付いていくのかに興味を持って読んでいるにもかかわらず,他事に適用できていなかった。反省。と同時に,シダの繁殖の面白さを知る。現代の植物の大部分は被子植物である。植物=種子と思っていると,胞子の存在を見落としてしまう。種子よりもよっぽど軽い胞子は,どの大陸からも遠く離れたハワイに到達することができるのだ。

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途中から,やや失速してしまった。たくさんのシダの名前が出てきて,段々と何がなんだっけ…と思うように。やっぱり名前をつけることで,そのものを認識するようになる。換言すれば,名前がないものはろくに認識できない。ハンドブック片手に,少しずつ認識できるようにしよう。
どうやら私は,時間や空間の軸に乗せて物事を捉えるのことが好きなのかもしれない。植物の陸上進出や昆虫との共生,胞子によるハワイへの進出,プレートに沿った植生の違いと植生の成立など。植物の名前を覚えるよりも,どのような経緯があってその知識が成立しているのか,の方が興味が持てる。しかし,歴史はあまり得意ではない。なぜだ。


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