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錯覚のキューと見るべきキュー

 構造的に人間には目が二つあるため、焦点を合わせない場合実際は物が二重に見えている。ずっと二重に見えていては不便なため、普段は脳が自動的に右目で見た像か左目で見た像どちらかの像に映像を修正している(片方を消している)が、意識することでどちらも見えるようになる。実は、この脳の「自動修正作用」がビリヤードをする際に悪さをすることが多いのではないかと思う。

 キューを見てスタンディングポジションからか前に入り、焦点を先玉や手球に合わせて構えに行く時、特に意識しないといつも通り自然に一つにみえるキューの像に対してシュートラインを合わせに行くだろう。

 その際、脳の自動調整によって利き目ではない方の像が競合してしまうため、間違ったアライメントにしてしまうという事象だ。

 例えば、自分は右目が利き目であるが、テーブルの全景を見てスタンディングポジションに入るまでは右目の映像でとらえているが、構えに入ってどんどん視野を低くして合わせに行くしていく段階で、左目(非利き目)の視野が邪魔をするため、体のポジションがズレてしまっているという事だ。長年やっていると経験や感覚で合わせて入れる、みたいなことが出来るようになってくるが、それだと緊張する場面で合わせ方がいつもと違ったりと不安定になるし、最終的にどこかで上達やパフォーマンスのアッパーを迎えてしまうだろう。そもそも体の使い方が不自然なのだから。

 これをどう修正するか、現段階で自分なりに考えた方法を記しておく。

 まず最初に、言うまでもなく効き目を知ることは当然重要だ。

 次にそれぞれの目でみた像を個別に認識できるようにする(要は脳の自動修正機能を解除する)。具体的には構えて手球や的球に焦点を合わせてそのまま視点を固定した際に、焦点外である右下と左下両方から焦点に向かって、ぼんやりした2本のキューが伸びていく像が見えるかどうか。

 まずここの部分が、すんなり出来る人と中々できない人で個人差でかなり別れる所だと思う。ちなみに自分は最初全くできなかった。普段の目の使い方の癖なのか目の筋肉の柔軟性がないのか、どちらにせよ使い方が上手くないのだろう。

 だが解決方法はあるので心配はない(自分はこれで解決した)。まず構えた状態で片方の目を閉じたり開いたりしながら、直接的に片方の像を消してもう片方の像を脳にインプットする。ある程度目をパチパチしたらまた両目を開いた状態にし、像が二つ見えるかチェックする。見えなければまた繰り返す。

 その際(知っている人は何を当たり前な事をと思うだろうが)、自分にとっては大きな発見だったのが、両目で見たときに二重に見える像のうち、左の像は右目で見た像、右の像は左目で見た像、と目と像がクロスしていると気づいた事だ。

 さらに、試して効果があった方法として、眼帯を使う方法がある。構える前から強制的に片方の視野を遮断してしまうのだ。そのまま構えに入りプレイまですることで、片方ずつの視野でとらえた風景を更に強烈に脳にインプットし、目の働きと意識を取り戻していく方法だ。これを試したところ、より両眼の風景を区別できるようになる速さが上がったと思う。

 まとめると、自分の場合は右目利きなので、左側のキューにアライメントを合わせていく事が重要となる。これが右側のキュー(左目の像)であったり、十分に右側のキューに合わせることが出来ていない時、体がズレがちという事が分かった。

 構える前の段階からショットの直前までの動作を何回も繰り返して、最後に効き目だけを開けて狙いや風景に違和感がなければ、一応は目の使い方はできている、と考える。

 またわかりやすいように利き目が右の自分の場合、

  •  左側のキュー=見るべきキュー

  •  右側のキュー=錯覚のキュー

と勝手に名づけることにした。

 よく言われる正しい目の使い方とは、自分にとって見るべきキューにいかに体のアライメントを合わせるかという一応の自分なりの結論を得た。逆に言うと、恐らく体が動いたりする原因のほとんどは、この視野が合っていない事に起因するのではという仮説もあるので検証していきたい。

 あとは目のメンテナンスは重要だ。目の筋肉が凝っているとうまく視野が合わせづらいので、寄り目を維持したり限界まで眼球を右に寄せたり左に寄せたりする運動は必要に思う。

 最後に、自分も含め、ほとんどはスタンディングやグリップ、ストローク、肩肘など見える部分飲みに意識が行きがちだと思うが(それも大事だが)、そもそも視野に対するコントロールが重要だ。しかもそれは普段無意識下で処理されているので、仕組みを知り、意識して気をつけることでしか見つけることができないという文字通り盲点となっている。加えて、おそらくだがトッププロといった場合は両目で見たときの風景と、プレイ時に利き目で見た風景とはおそらく寸分の狂いもないのではと想像する。訓練したか先天的かどうかは置いておいて。そうでないとあの精度の説明がつかないように思う。

 改めてメタ的に捉えれば、インプットが違えば、体というファンクションも当然間違ったアウトプットをするし、パフォーマンスもずれてしまうのではないかというごく当然の事であった。

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