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エロイカより愛をこめて

同人誌も、マンガ本もほとんど断捨離してしまってほとんど手元に残っていないのですが、捨てられないマンガの一つに青池保子先生の「エロイカより愛をこめて」があります。これは、高校生のころかなりはまってしまっていて、下敷きからバインダー、ペンケースなど少ないおこずかいを工面して、ありとあらゆるグッズを買いあさっていました。レコードアルバムなんかも出ていて、勿論それも買ったのですが、プレイヤーがないので、捨ててしまったのが悔やまれます。

当時は、まだ冷戦中で、ドイツは東西に分断されていました。西側対東側、アメリカ対ソビエトといった図式が永遠に続くように感じられていました。まさか自分が生きている間に、ベルリンの壁がなくなるとか、ソビエトが崩壊するとか、考えられませんでした。娘の地理で使っている世界地図が、私が学校で教わったのと違う・・・。世の中がこうして変化するものだという概念が薄かったように思います。あの頃の私は、世界を固定的にとらえていたのかなあ?とすら感じます。

そんな世界情勢を背景に、北大西洋条約機構=NATOの情報将校エーベルバッハ少佐と、イギリス貴族で美術品泥棒のドリアン・レッド・グローリア伯爵がくりひろげるスパイ活劇+怪盗もの・・・といった表現が適当かどうかわかりませんが、簡単に言うとそのようなマンガではあります。。絵柄にクセがあるので、とっつきにくかったりしたのですが(事実最初苦手でした)、そのストーリーやキャラクターの面白さ、知ってる人には分かるという細かいギャグや、うんちく、リアルな時代背景など、はまってしまうと中毒に陥り、少佐が絶世の美男子に見えてくるのです!

この、堅物のドイツ人丸出しのエーベルバッハ少佐が大好きでした。「ばかもの!」と少佐のマネをしてしゃべっていたら、そんなような口調になってしまっていました。大須のアメ横でドイツ軍の軍服を買い、少佐が歌っていた「Panzerlied」を歌えるように練習し、軍歌のレコードも買ってしまいました。読んでもわからないのに、「戦車マガジン」とか買って、本当にあほでありました。少佐はNATOであって、ドイツ軍じゃないのに、です。第2外国語はドイツ語を選択。なんにも身につきませんでしたが、エロイカの下敷きの裏は、マンガの1ページをドイツ語に訳していたものだったので、他のページもドイツ語でなんていうのかな、などと考えながら授業を受けていました。そして、マンガを読みながら、舞台となるヨーロッパの国々を、まるでそこに旅行に行ったかのように味わっていたのであります。ローマ教皇のおひざ元のバチカン、ケルン、オーストリア、リヒテンシュタイン公国、オスロ、トルコ、アレキサンドリア・・・。「落ち着いたら、みんなで、ドイツに行きたいね。エーベルバッハ市とか」。親が亡くなった後、妹、弟と一緒に話していたのですが、コロナが出てきたので、お預けとなってしまっています。エロイカの舞台をめぐる旅などしたら楽しいのではないかと妄想。娘も、エロイカは読んでくれた(というか、音読してあげたというか、「ママ、「エロイカ読んで」!という小学生でした)ので、世代を超えて、同じように楽しめることがなんとも嬉しく感じられます。

世代を超えてということで、私的なエピソード。2012年、娘を「公文」に入れようとして、大学生の時丸付けのバイトに行っていた、近くの教室に入れたんです。先生は当時と変わらずお元気で、よくしゃべる方で、(認知症とは無縁だろうなあ)と安心しました。すると、「エロイカ」の新刊読みました?川原泉の「メイプル戦記」って読みました?」と、私に向かっておっしゃるのです。

高校~大学にかけて「エロイカ」にはまっていた私は、もう、ありとあるゆる人に「エロイカ」をおすすめしておりました。公文のK先生(女性)は、古典的な推理小説などお好きな方で、アガザ・クリスティーをはじめとする推理小説を貸して下さっていました。「007シリーズ」などもお好きで、映画のお話などなさっていたので、もう、これは読ませるしかない!と半ば強引に「エロイカ」を押し付けたのです。他にも川原泉先生のマンガなどお貸しして、一緒にはまってもらいました。(数学が大っ嫌いだった私にとって、川原泉先生の「たじろぎの因数分解」は魂の救済でありました)。この布石がこの25年後のあの時にまだ生きていようとは!

ベルリンの壁が崩壊して以来、世界地図も変わり、休載期間も重なり、「エロイカ」の世界とはずっと縁遠くしておりました。やはり、新しいものは昔のような情熱をもって受け入れることも難しく、日々の仕事や、子育てのあれこれの中でしっくりと馴染むものとはならなかったようです。しかし、K先生の中では、ちろちろと燃え続ける種火のように、「エロイカ」や「川原泉先生」に対する思いが続いていたのですね。そして、ありがたく、「エロイカ」の新刊と「メイプル戦記」をお借りしていったのです。あ、書いていたら、急に魚河岸揚げが食べたくなりました。今日の夕食は魚河岸揚げで決まり!理由は紀文食品のページをご覧ください。

そういえば、その時K先生は当時「韓国ドラマ」にはまっていて、これは映画ですけど、『霜花店』などのDVDを貸してくれました。いやあ、先生、当時70歳越してたと思うんですけど、素敵です!韓国ドラマについては、また別の機会に言及できればと思います。

青池保子先生は、まだ現役で執筆活動中ということですが、本当に頭が下がる思いです。先生、どうかいつまでもお元気でいらしてください。


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