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『帰ってきた なんしょんな!俺』(2)なんしょんな!まん防 /川人憲治郎

※全て無料でも読めますが、今後の活動費に当てさせて頂きますので、よろしければご購入もいただけると嬉しいです。

 2020年2月のダイヤモンド・プリンセスプリンセス号の報道(※1)から(「プリンセスが一個多いわ!」)始まった感がある新型コロナウイルスの脅威!「バスト何センチですか」「それは胸囲や!」。

 あれから一年経っても終息の光が見えず、飲食店は書き入れ時の忘年会、新年会、送別会、新人歓迎会と「会」の付く宴会をまったくできなくなりました。そして2021年4月25日から三回目の緊急事態宣言発出。

 居酒屋、焼きとり屋、焼きトン屋、等々は酒類を提供できず、消費者は自宅飲みを強いられてしまいました。あっ、でもこれは一般人に限ってでして、特別待遇の政治家や官僚は緊急事態宣言発出下でも密かに宴会はやってるだろうし(※2)、深夜まで酒類を提供しているお店を探してちゃっかり飲んでいることでしょう。

 また、まん延防止等重点措置発出下は、お酒を飲みに行ってもラストオーダーが19時まで、一昨年までなら19時って始まる時間ですよ。それがラストオーダーの時間って…。
 お店に入ったとたんに「じゃまするで」「じゃまするんやったら帰って」「アイヨー」って吉本新喜劇のギャグになってしまいます。でもお店も利用する側も閉店時間を守っているのに、お触れを出す側が地下に潜って(笑)自ら掟を破ってどうするのでしょうか。「責任者出てこい」by人生幸朗。

 われわれの業界では番組の『打上げ』(花火ではありません)、『打ち入り』(赤穂浪士ではありません)など、これから番組が始まるからスタッフ、キャスト一丸となっていい作品を作っていきましょう!また、無事に全話終わったからスタッフ、キャストの皆さんの労をねぎらう!宴会もまったく開催できません。スタッフの中には打ち入り・打上げで声優さんに会えるのを楽しみにしている方もいますからね(笑)

 去年聞いた話だと、『リモート打上げ』というものがあるやらないやら。 
 それって皆さんの熱を感じないから絶対楽しくないよ(涙)
 個人的な『リモート飲み会』は何回かやりましたが、自宅で飲んでいるからお終りが分からなくなります。画像を消して寝落ちしている方もいましたからね(笑)
 リモート飲みのいいところは遠方の知り合いと飲めることですね。
 こんなご時世だから自宅にいてネットで映画を観たりするのですが、そんな中、ふと昔見た映画を思い出しました。

 それは、マルコ・フェレーリ監督作品『最後の晩餐』。

 本国イタリアの公開は1973年9月で、日本公開は翌1974年10月でした。
 映画の内容は、食道楽の中年男4人がパリの大邸宅に集って死ぬまで食べまくるという後半吐しゃ物と、排せつ物が家の中に散乱している中で、絵男4人が死んでいく快楽的?な映画。食べ、飲み飽きた男たちは娼婦を呼んでの乱痴気騒ぎも起こします。

 多感な中学生だった私は、友人二人と一緒に地元の映画館に公開とともに足を運びました。
 スクリーンに映し出される映像は豪華絢爛だったし、期待した裸も出てくるけど、食べて吐いて排泄して、セックスをする。それを無限列車のようにループしながら一人、また一人と死んでいく。

 そんな登場人物たちを観ていて、人生って一度きりだし、食べて飲んでセックスして欲望を満たして死ぬのもある意味人間の性だし、別角度から見れば、これって最高の贅沢なんじゃないかと映画を観終わった中学生三人は映画館近くの港に佇み、目の前に広がる地中海ならぬ瀬戸内海を前にして、ため息交じりに語り合うのであった。

 この時代は、洋画も邦画もロードショーは二本立てが基本(うどん県・香川ではそうでした)。
 『最後の晩餐』の同時上映は、たしかコスタ・ガブラス監督の『戒厳令』だったかと記憶しています。こちらはフランスとイタリアの合作で、1970年の南米ウルグアイの戒厳令下の恐怖を描いた政治な映画。
 観ていても何が何やら分からず、頭から蒸気を上げ過ぎて脳内が渇水した中学生三人は、冒頭10分を過ぎたあたりで映画館を出て行き、港に佇みながら目の前に広がる大西洋ならぬ瀬戸内海の海水で頭を冷やすのであった。

 あれから数多の映画を観てきたけれど、「食べる、飲む」にまつわる映画の中で『最後の晩餐』ほど私にとってトラウマになっている映画はありません(笑)

 一度きりの人生だから、欲望を満たして死ぬのも悪くはないとは思いつつ、『最後の晩餐』の登場人物たちの生きざまを精神的に超えられない私は、吉田拓郎と同じく「今はまだ人生を語れません」。

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 写真は、初の緊急事態宣言がなされた期間である、昨年2020年5月5日の渋谷警察署前の様子。
(※1) 米企業が運航する大型クルーズ船であり、横浜港から2020年1月20日に出航。香港やベトナム、台湾を巡る船旅の中、乗客乗員3711人の約2割に当たる712人がCOVID-19に感染し、13人が死亡するという、豪華客船でのアウトブレーク(突発的集団発生)としては前例のない感染症事例となった。
(※2)  緊急事態宣言下の1月18日深夜、東京・銀座のクラブに滞在していた自民党の松本純衆院議員は、それが発覚した当初、クラブには「1人で滞在していた」と繰り返し発言するも、6日後の2月1日には「実は後輩議員2名とともに訪問していたのが事実」と前言を翻し、同じく同席していたことを認めた自民党の同僚である田野瀬太道・大塚高司両衆院議員と合わせて3名が揃って自民党を離党する事態に発展。
 公明党でも、銀座のクラブに深夜に滞在していた遠山清彦幹事長代理が「政治への信頼を深く傷つけた」として衆院議員を辞職した。 
 さらに「国会議員は夜の会食全面自粛を」と求め、「範を示していただきたい」と繰り返し訴えた日本医師会の中川俊男会長ですら、「まん延防止等重点措置」期間中だった4月20日に、都内で開かれた自民党の自見英子参院議員(45)の政治資金パーティーに参加していたと「文春オンライン」に報じられたことを受けて、謝罪に追い込まれるなど、新型コロナ対策を打ち出す側ですら、事態の混迷に拍車を掛けている。
【 川人憲治郎(かわんど けんじろう) プロフィール 】
 1961年4月1日生まれ。香川県丸亀市出身。
 株式会社グループ・タック、株式会社サテライトなどでアニメーションプロデューサーを歴任。
 ふしぎの海のナディア(1990年 - 1991年)、ヤダモン(1992年 - 1993年)、グラップラー刃牙(2001年1月 - 12月)、FAIRY TAIL(2009年 - 2013年)など、プロデュース作品多数。
 現在は、株式会社ディオメディアにて制作部本部長を務める。無類の愛犬家。


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