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思い通りにならない短編小説

 彼は布団の中で、スマホをいじりながら、眠れぬ夜を過ごしている。

 眠れぬ夜とか書くと、ちょっとカッコよく思うかもしれないが、実際はつらいものだ。
 薬も飲んだが、効かない時は効かない。体が薬に慣れてしまったものだから。

 彼の名前は、また今度にしよう。どうせ、これは短編小説なのだから、登場人物は彼しかいない。

 彼は仕事の傍ら、毎日、スマホに書き殴る。文字を書き殴るのが日課なのである。できれば、物書きで暮らせていければ幸せかもしれないと、いくばくかの夢も文字に載せている。

 今日はこれを書こう。
そう考えているのだが、なぜかいつも仕上がりは、思い通りにならない。見えざる手が、彼を支配しているかのようだった。

 なぜ、これを書こうと思っても、途中でズレてしまうのか。彼はとても不思議であった。
 そのため、彼はプロットを書いてみることにした。プロットに従っていれば、そんなに大きくは変わらないだろう、そう考えていた。

 しかし、そのプロットさえも、何の役にも立たなかった。彼が書く物は、全て彼の意思から外れ、そして、思いもしなかった結末に至るのだ。

 思い描いていた作品ではない。こんな物は駄作だ!
 そうして彼は、夜な夜な書き上げた作品を消しては書き、消しては書きを繰り返した。
 スマホで作品を消すのは一瞬だ。あれだけ時間をかけても、消すのはほんの数秒もかからない。それは、さながら、賽の河原の石積みのようであった。

 ある日、彼はいつも通り、スマホで作品を書き殴っていた。やはり、今夜も自分の思い描いていた内容とはかけ離れた結末になっていたから、いつもと同じように、削除したつもりだった。

 しかし、その記事は手を滑らせて、公開してしまっていた。彼はその事に気付かず、書いて消したことに疲れ果てて、いつもと同じように浅い眠りについていた。

 翌朝、彼は目覚めて驚いた。なんということだ、昨日の記事が◯○◯になっていた。彼は、そのことについて、少し苦い顔をした。


この◯◯◯に、言葉を入れて、彼の苦さを表現してください。何文字でもいいです。2万文字でもいいんです。

物語を作っていたのは彼ではなく、この記事を読んでいるあなた達だったのです。
だから、いつも彼の思い通りの結末にならなかった。

ぜひ、あなたの心の中で、この物語の結末の言葉を考えて、名作に仕立てあげてください。

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