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愛嬌について。



女は愛嬌が大切なんだと何度も聞いてきた。実際愛嬌に救ってもらったこともたくさんあって、わたしにとって愛嬌は最強の“ツール”。

はじめての営業スマイル

バイトを始めたとき、接客というものの楽さを知った。お金という分かりやすい目的を得れれば、自分はいくらでも笑顔で話せるし、変なお客さんがいても、笑顔の仮面の中の感情をドロドロさせる必要もなかった。

初めて使った愛嬌は、わたしの鎧になった。

もちろんお金のためである。お金のために、要らぬ感情の変化を無くすために、私はいくらでも「営業スマイル」を出来たし、下手に出て人間関係も良好に進められた。

自分でもびっくりした。今までのわたしには生み出せない力だったからびっくりしました。

お金のためというわかりやすい目的があれば、報酬があればそのための相応の努力をできるんだな、というのは一つ大きな経験になった。


学校でバカ真面目に傷ついてる自分

そういうスキルを手に入れた時にふと思った。

人とうまく付き合うにはありのままで不器用な自分の態度が目の前に出てるから、相手に対応を委ねてしまって、期待通りのコミュニケーションにならないときに腹が立つ自分が今いるのだけれど、

もしかしてこれ、鎧を身に纏えば美味しいところだけいただけるんじゃないか…?

そうすればきっとウザ絡みしてくる奴らは「変なお客さん」だし、この営業スマイルは、「本音と建前」の分かる人を分別する指標になる。

そうじゃん営業スマイルを応用すればもっと楽に生きられる?!

お金以外の目的

営業スマイルを自発的に出すには、お金に匹敵する目的が必要だった。無償で愛嬌を提供できるほどのボランティア精神は無かったから、課題は「自分の愛嬌のモチベーション探し」であった。

楽に生きるために努力する、というのは昔からの労働の考えらしい。8時間働いて、家で最高の時間を過ごす。時間の“濃さ”を自分の考える通りに操ること。お金が成せる技である。こういう考え方がバイトのおかげで身についていた。

だから時間はかかったけれどモチベーションは見つかった。お金の代わり。それは「楽な関係」であった。勿論貰える保証のないものだけれど。自分の感受性に由来しがちだけれど。

鎧をつけて接して(好印象を持たせて)、そうすれば私の信頼は上がって自分の楽な時間を過ごせる(願いを聞いてもらったり好きな時に人を頼ったりする)。

苦労の対価をきちんと得る。好意の返報性の原理のおかげでこれはなんと成立した。

いや自分でもびっくりである。え?思ったより上手く行きすぎてないかい?

結果。

「自分は鎧をつけることで人に先に好意をプレゼントしている」という感覚はわたしに勇気をくれた。少しくらい甘えても許されるよね、頼ってもいいよねと、他人を頼る勇気になった。

実際好意を寄せてくれて特別扱いしてもらえることも増えた。メキメキと実力を上げていた。

本当に愛嬌って最強なんだな…

そう思えるくらいには新しい武器はわたしを変えたし、上手く扱えたことが嬉しかった。

…下手な他人の好意はリスクもはらんでいるけれどね。

新しい言葉

そんなとき、とあるひとから「愛想笑いうまいよね、無理しないでいいよ」なんて言ってもらえた。

無理してるというより、得たい利益のためにやってるから自覚してる苦しみではあるのだけれど、この言葉はすごく印象的であった。

イケメンから言われたから、ああ上手い言葉を知っているもんだなあ、などとぼおっと考えたのだけれど、すごく良い言葉をもらったなと感じた。

愛嬌って、愛想って、ただ「騙される人のためにやる」んじゃなくて、「気付く人と気付かない人とを分ける指標にもなるんだな」と。

いやなんか残酷で酷い言い方ではあるんだけれども、営業スマイルをしている人の、明るい人の、裏の苦悩を測ろうとする人も現れるもんなんだなと思って、それはこう、酷いことを言いたいんじゃなくてある事実だなと思った。

そうやって気づいてくれた人には、「自分が好きでやってるから大丈夫。でも気付いてくれてありがとう。あなたは優しい目を持ってるんだね」と、心から思った言葉を伝えて大切にしたいと思う。


愛嬌だなんて言ったけれど。

鎧を着ることについて、私は何も悪いことだと思わない。優しい嘘は人を守ると思っている。バカ真面目に非情な人に傷つけられていた頃より今の方が、私は自分は「難しい努力をしてかけがえのないものを手に入れている」という感覚で満たされている。

今後の私が愛嬌を使って生きていくかなんて分からないけれど、今感じている可能性は非常に大きい経験になりわたしの一部になった。

愛嬌を使って楽に立ち回り、
私にスポットライトを当ててくれた人を感謝し大切にして、
自分が憧れられる自分でいること。

私はたまたま、愛嬌がこの循環のサポートをしてくれたのだと、経験に感謝している。

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